FUJIKURA ODYSSEY vol.04 テクノロジー小宇宙 電子機器の進化の鍵を握る“FPC(フレキシブルプリント回路)”開発物語 Phase.1 ゼロからの挑戦 今や世界トップクラスのシェア。月に1億ピース超の量産を可能にするフジクラのFPC事業。しかしながらその発端は、苦難の連続であった。 デジタルカメラの製品組み込み例FPCは、柔軟性のあるポリイミドフィルム、ポリエステルフィルムをベースに銅箔による回路を形成したプリント配線板であり、その軽さ、薄さ、形状の自由度から携帯電話やカメラ・VTR等の小型電子機器、あるいはノートブックPCの内部配線基板として、また高度な屈曲性からHDDなどの高密度可とう配線基板として多用されており、現在市場に出回っているほとんど全ての小型電子機器の中には、必ずFPCを見つけることができる。現在、フジクラのFPC事業は売上ベースで約1000億円。二万人近い人々が関わり、専門工場として国内に東北フジクラ、海外にタイPCTT、さらに中国に藤倉電子上海を擁し、佐倉開発センタが新しい市場開拓と技術開発を担当。全世界マーケットを対象に、営業・開発・製造が三位一体で動く、機動力あふれるビジネスを展開している。 このFPC事業において、今でこそ世界トップクラスのシェアを誇るフジクラであるが、そのプロジェクトの発端は苦難の連続であった。FPC事業は、フジクラの電子産業への参入という、大きな流れを転換する活動の中から生まれた。着手に先だって、電子部品分野における新規事業への探索があった。1年半におよぶ探索の結果たどり着いたのがFPCである。新たなFPCは電子部品から、将来、高度複合部品事業に向かう入口にあり、総合電子機器配線として枢要な部品であった。1979年にFPCのプロジェクトが発足。わずか5名でのスタートだった。FPCはフジクラの保有技術とは縁の遠い分野だけに当初は戸惑いばかり。また、顧客対象も今まで一切直接関係のないところばかり、そこには「ゼロからの挑戦」という試練が常につきまとった。営業陣にとっては門前払いの連続、一方、研究開発陣にとっては試作品に対するクレームの連続という不毛の日々が続いた。プロジェクト発足から10年以上、FPC事業は赤字続きの中で、苦悩の日々を強いられることになるのである。 1 2 3 4