FUJIKURA ODYSSEY vol.01 マリアナ海溝ロマン 1万m級無人探査機 “かいこう” 用ケーブル開発物語 Phase.1 世界記録樹立! 深海無人探査機“かいこう”に提供されたケーブルはフジクラの技術の集大成。世界最深度の着底に成功した。 1995年3月24日。グアム島沖のマリアナ海溝チャレンジャー海淵に、世界中の技術者たちの眼が注がれていた。フジクラが開発・提供したケーブルで繋がれた深海無人探査機“かいこう”が世界最深部への着底をめざし、潜航を決行していたからである。 前人未到領域にして、世界最高記録へのチャレンジ。やがて世界最深度である10,911.40mの海底に着底したとの一報が、グアムのホテルで待機していたプロジェクトメンバーのもとに届く。大きな歓声が上がる。誰かれともなく、皆で手を取り合い、抱きあい、喜びを分かち合う。感極まって泣いている者もいる。幾多の苦難が一気に報われた瞬間だった。 そもそも“かいこう”開発プロジェクトは、1989年に完成した有人潜水調査船「しんかい6500」に万一の事態が発生した時に、救助作業が可能な無人探査機の準備を目的としてスタート。「しんかい6500」の耐圧深度が法規上10,050m(6,500m 1.5+300m)以上であることから、“かいこう”も最大潜航深度が10,050m以上可能であることとして開発検討された。開発主体は、海洋科学技術センター(現:独立行政法人海洋研究開発機構=略称/JAMSTEC)。1987年12月にケーブルメーカ3社にケーブルの技術プロポーザル仕様書が発行され、翌1988年1月末までに各社は独自の技術で提案仕様書を提出し、評価を受ける。 フジクラは当時、既に無人探査機ドルフィン-3K(潜航能力3,300m)用テザーケーブルの提供実績があったため、主な試験装置を自社で保有し、社内で試験ができる環境を整えていた。また、数々の海底ケーブルプロジェクトにおいても常に主導的役割を果たしており、提案内容に加え、それらが総合的に勘案され、見事に受注。世界最高記録への挑戦が始まる。 1 2 3 4 5