バックナンバー Fujikura Technical Review
空気圧送用インドアアウトドア光ケーブル
ネットワークトラフィックの増大にともない,データセンタ内の建屋間を光ケーブルで経済的かつ効率的に接続する需要が高まり,空気圧送布設が注目されている.今回,欧州および北米地域の2つの難燃グレードを有する288心Indoor-Outdoor Air Blown Wrapping Tube Cable(IO AB-WTC)を開発した.本ケーブルは,屋内及び屋外環境に適用可能であり,屋外ケーブル区間までこのケーブル1本でになうことができる.また本ケーブルは,ICEA S-122-744に準拠した機械特性およびICEA S-104-696に準拠した環境特性を満足しつつ,1000Ftを超える圧送特性を有することを確認した.
高密度低損失 16心/24心MMCコネクタ及び専用クリーナ
近年,多心光コネクタの需要が急速に拡大している.特にデータセンターではAIやML(機械学習)といった最先端技術をサーバ群に適応することで,データ伝送の高速化・大容量化を図る事業者が現れてきており,接続点数は指数関数的に増加するとみられている.ここで問題となるのが,増大する接続点数を収めるサーバラック面積の制約と,接続損失の抑制である.この課題への解決策として,当社とUS Conec社は,超小型で低損失という特徴を持つMMCコネクタを共同開発した.開発品は,現行MPOコネクタと遜色ない光学特性を有し,また,各種性能試験の評価を行い優れた特性を維持することを確認した.
24‒30GHzをカバーするミリ波帯5G基地局向け電力増幅器
本稿では,ミリ波帯第5世代移動通信システム(5G)基地局向けに開発した電力増幅器(PA)について紹介する.時分割複信をサポートするために送受信スイッチが組み込まれた出力整合回路を採用し,5G規格(5GNR)で規定される周波数帯n257,n258,n261をカバーする24-30GHzにおいて出力電力と電力付加効率(PAE)を最大化すると共に,振幅-振幅歪み(AM-AM歪み)を低減して線形性を向上する設計を行った.130-nm SiGe BiCMOSプロセスを使用して作製したPAは最大利得30.3dB,3dB帯域幅9.8GHz,かつ24-30GHzにおける飽和出力電力20dBm以上,PAE22%以上,AM-AM歪み0.1dB以下を達成した.これらのパラメータから計算されるPAの性能指数(ITRS FoM)は最大で93.3と高く,優位性のある値となった.また、変調信号測定において,エラーベクトル振幅−25dB(5.6%)のときのPAの出力電力,PAE,隣接チャネル電力比はそれぞれ12.3dBm,8.8%,−32.7dBcであり,良好な特性を確認した.
60GHz帯ミリ波無線通信モジュールの実伝搬環境における長距離伝送特性評価
60GHz帯は広帯域な周波数チャネルを持つことから高速大容量の通信に適しており,高精細・低遅延画像伝送などのアプリケーションへの適用が期待されている.本稿は,これらのアプリケーションを利用するユーザが60GHz帯無線通信の適用可能性を検討する一助として,当社が開発した技適証明取得済の60GHz帯ミリ無線通信モジュールを用いた,屋外実環境での伝送特性評価結果について述べる.
工業分野におけるICP-MS分析
誘導結合プラズマ質量分析計(ICP-MS)は,高感度かつ高選択性を有する元素分析装置であり,工業分野において活用されている分析機器の1つである.また,最近ではレーザアブレーションや高速液体クロマトグラフとICP-MSを接続した新しい分析法が注目されている.本報では,ICP-MS分析の概要,および工業分野における様々なICP-MS分析事例を紹介する.
強化学習とSim2Realを用いたAI制御技術の製造装置への適用
近年AI技術は目覚ましい進化を遂げ一般社会でも活用されはじめている.それに伴い製造業におけるAI技術の活用に対する期待も高まっている.当社では2015年からディープラーニングを用いたAI技術の適用に向けた活動を進めてきており,検査工程への導入などに成功してきた.本稿では装置制御の分野にAI技術を導入しAI技術の適用範囲を拡大した事例について説明する.
SRSを抑制した高効率10kWシングルモードファイバレーザ
ファイバレーザは加工分野において普及が進んでいる.近年では,加工対象の拡大やエネルギー伝送分野などの新規分野への適用の可能性から,高出力かつ高ビーム品質を両立したシングルモードファイバレーザへの期待が高まっている.これまでに,当社は出力8kWのシングルモードファイバレーザを報告してきた.本報告ではさらなる高出力化を目指し,誘導ラマン散乱(SRS)を抑制しつつも高効率であり,かつ高ビーム品質を有する10kWシングルモードファイバレーザを実現した.
分布計測用長尺FBGアレイの製造技術
紫外レーザ光を用いて光ファイバのコア中に直接グレーティングを形成したFiber Bragg Grating(FBG)は,光ファイバセンシングの分野で大きな注目を集めている.当社は被覆上からグレーティングの形成が可能な光ファイバと,長尺FBGアレイの製造技術を開発した.本稿では,分布計測において課題となる測定時の多重反射を抑制し,FBGの連結点において安定した連続性を有するFBGアレイの製造技術を確立したため紹介する.
可変OIPでの数値分類
高度情報化が進む現代社会において,データ処理の負荷も飛躍的に増大しつつある.より高速で消費電力の低いプロセッサを実現する新技術として,当社は光ニューラルネットワーク(ONN)の研究を進めている.液晶光変調器を用いた独自の構成により,入力および処理の切り替えが容易な光情報処理装置を実装し,MNIST分類タスクにおいて高い分類精度が達成できることを確認した.
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