株式会社フジクラ

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研究開発方針

研究開発方針

取締役CTO 坂野達也

研究開発ありきではなく経営戦略ありき

フジクラは1885年の創業以来、電線・ケーブルを祖業として日本のインフラ構築に貢献してきました。1980年代に電線に代わって主流となった光ファイバとその周辺製品の研究開発で、当社は常に世界をリードしてきました。そして現在、これらの技術を電子デバイス製品や自動車電装製品に水平展開し、超電導といった未来技術も含む7つの研究領域からなる“つなぐ”テクノロジー・プラットフォームを構築しています。研究開発のミッションは、世の中のニーズを見越して、新しい製品・技術を開発することですが、いたずらに手を広げるのではなく、“Why Fujikura?”にしっかり答えられる領域に絞ることが基本です。その目安として、テクノロジー・プラットフォームを明示しています。ただし、世の中のニーズを踏まえて経営戦略が策定され、それを実現するための技術戦略があり、それに対して、テクノロジー・プラットフォームを整えるあるいは変えていく、そういった流れで当社の新陳代謝と持続的成長がなされていくべきと考えています。研究開発ありきではなく経営戦略ありきです。こうした考えのもと、研究開発については、基礎研究から開発、事業化といったステージごとに、一定の要件がクリアできているかを評価するゲートを設定し、ステージごとにどのようにリソースの配分をしていくか、このゲートで進めるかどうかの判断をするかを考えるのがCTOの重要な役割の1つであると考えています。

高温超電導線材と医療用製品のステージアップに注力

現在、事業化ステージにあるもので、とりわけ力を入れているのが高温超電導線材と医療用の製品です。また、ミリ波無線にも大きな可能性を感じています。当社は1987年にレアアース系の高温超電導材料が発見されて以来、精力的に開発に取り組み、世界最高レベルの性能をもつ高温超電導線材を実現しました。レアアース系の超電導線材は液体ヘリウムを使用しない次世代の高温超電導機器を実現する製品として、医療や分析、産業機器、核融合発電などエネルギー分野などで更なる応用機器への展開が期待されています。近年では、世界的な脱炭素社会への取り組み、ヘリウム不足という環境変化の中で、この高温超電導線材への期待が高まっていることを実感しています。当社は、高温超電導線材の更なる長尺化・低コスト化を進め、本格的な市場投入に備えています。医療用製品に関しては、当社が持つ平面配線技術、光技術を利用して超小型、イメージングという価値を提供しています。ICチップを積層されたプリント配線基板内に多段に内蔵するWABE Package®を用いた超小型基板や極小サイズのCMOSイメージセンサを用いた内視鏡用極細線カメラモジュールを量産化し、医療機器メーカへ納入を行っています。中でも細くて可とう性が高いカメラモジュールは、病巣検出能力の向上だけでなく、ディスポーザブル化を実現し、感染防止にも寄与しています。今後もフジクラの持つ技術を医療の分野に広げていきたいと考えています。さらに、5Gの大容量高速無線通信に利用されるミリ波帯通信デバイスの実用化を目指しています。当社は以前からミリ波のアンテナ設計・基板製造技術を有していました。これに、米国IBM社よりライセンスを受けた高周波半導体(IC)技術を組み合わせることで、アンテナ、IC、フィルタを統合し、アンテナ一体型ミリ波無線モジュールを開発しました。このモジュールは、ミリ波帯の5G基地局への適用を目指しており、2022年度中にサンプル出荷を行う計画です。

組織と人財の両面で 「技術のフジクラ」を強化

当社は「技術のフジクラ」を標ぼうしています。このブランドを長期にわたり維持・向上させていくためには、技術者をどのように育てるか、同時に組織としての技術開発能力をどのように高めるか、この両面で施策を考える必要があります。技術者の育成については、個々人の自由な発想を尊重し、主体的に研究テーマに取り組める環境を提供することが非常に重要であると考えています。この点では2019年に、「20年先の社会を想像し10年先の技術を創る人財を育成する」ために先端基礎研究を担う研究所「アドバンスト・リサーチ・コア(ARC)」を設立しました。ここでは自由なワークスタイルで、「新しいものを作り、世の中を豊かにする」という研究者の本分に集中できる環境を提供し、海外の大学・研究機関で研究開発に従事する機会も用意しています。これにより、遠く広く社会を見る目を持ち、創造力豊かな技術人財の育成を目指しています。組織能力については、研究者一人ひとりの自由な発想を尊重しつつも、技術ロードマップに沿ってスピード感をもって開発を進めていくことや効率性、有効性を考えた開発を重視し、当社の研究開発の組織能力がシステマチックに向上していく仕組みを作っていきたいと考えています。それともう1つ、リソースの限られている当社にとって、国内外の先進的な企業や大学・研究機関とのオープンイノベーションも非常に重要であり、これを組織能力とするべく、積極的に推進していきます。

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