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フジクラグループは2024年度の連結決算で、売上高と純利益がいずれも過去最高を記録しました。売上高が過去最高を更新したのはこれで2期連続、純利益は4期連続の更新となりました。ほぼすべての事業部門が2023年度から始まった中期経営計画(25中期)の目標を1年前倒しで達成することができたのは、特筆すべきことです。
2019年度に385億円の純損失を計上し、経営危機とも言われた状況から立ち直るため、当社は100日間の再生プランをベースにした構造改革を実行し続けてきました。その結果、どん底からのV字回復を成し遂げ、今は5年前と比較にならないほどの強靭な企業体質をつくり上げています。
この好業績を背景に、情報インフラ、情報ストレージ、情報端末という核心的な事業領域には今後も引き続き注力していきます。高温超電導線材やファイバレーザといった「Beyond2025」として掲げている新規事業への挑戦も続けます。そのうえで次のステージに向けた新たなビジネス領域の探索もしていきますし、メリハリのあるリソースの投入でより一層の成長、企業価値の向上を図っていく方針です。
顧客基盤と経営管理も強みの源泉
そのためには、フジクラの強みにさらに磨きをかけていかなければなりません。ただ、私はこれまでフジクラの強みは「新製品開発力」と「製造技術力」の両方を兼ね備えているところにあるとお話ししてきましたが、今はそこに「顧客基盤」と「高度な経営管理」を加えた4つが当社の強みだと考えています。
インフラビジネスの場合、お客様は電力会社や通信会社など公益性の高い超優良企業が中心になります。自動車事業部門やエレクトロニクス事業部門でお付き合いさせていただいているのも、超優良企業のお客様ばかりです。データセンタ関連のビジネスでは、時価総額で世界のトップ10に入っている企業の大半に、フジクラグループのお客様になっていただいています。そのようなお客様に製品や技術を使っていただけているということは、間違いなくフジクラグループの強みになっていますし、そうした優良な顧客基盤は当社にとって貴重な財産です。
もうひとつの強みである高度な経営管理ですが、私は経営にも継続的改革が必要だと考えており、経営管理の手法を毎年ブラッシュアップしています。例えば経営計画について議論するときに使う資料のフォーマット等を統一し、経営や事業を見る視点も共通化しました。また、月次の計画と実績に乖離があった場合、売り上げが上がったのか、コストが下がったのか、マージンが上がったのかということを数字で議論できるように可視化するなどの改善もしてきました。その結果、どこにどういう問題があるのかがわかりやすくなり、議論は従来以上に活性化してきました。
さらなるものづくり力強化に向けて
もちろん「技術のフジクラ」という強みの根幹を支える「新製品開発力」と「製造技術力」も、さらにブラッシュアップしていきます。ただ、技術は往々にして人に付きます。私の経験から言っても「この技術だったら、この人」ということはあります。属人化しないようにシステマチックにできればいいのでしょうが、そう簡単ではありません。そうするとやはり優秀な技術者を育てるということが、これまで以上に重要になってきます。
当社のSWR®/WTC®の製造はほとんど日本国内で行っており、だからこそ付加価値の高い製品の製造ができたのだと思いますし、それに必要な人財を育てることも技術を継承することもできているのです。人財育成の意味も含めて多少コストが高くなってもキーとなる技術はフジクラ本体が持ち、国内製造を残すべきです。最低限、マザー工場のような生産拠点は国内に持つべきです。
開発だけではなく、それなりの量産製造もしないと、技術は残らないし、技術者の身に付かないと私は思っています。だから小規模でもいいからマザー工場的なものづくりをすることによって、優秀な技術人財を育てる。一方で、製品の特徴に合わせて、海外に技術を移植し、現地の文化に合わせたオペレーションを行い、現地でのスキルアップにつなげていく。意識的にその両方を行うことで、技術のフジクラの競争優位性を維持できると考えています。
カーボンニュートラルへの貢献
市場動向、経済状況などの先行きはますます見通しにくくなっています。地球環境問題にしても、各国の方針が大きく転換する可能性もあるかもしれません。しかし、地球環境問題というのはやはり人類にとって大きな社会課題です。同時に、そこには何らかのビジネスチャンスもあるはずです。「Beyond2025」ではそういうところを強く意識した取り組みを進めるとともに、事業そのものでカーボンニュートラルに貢献することも目指しています。特に期待しているのは、当社の高温超電導線材が使われるフュージョンエネルギーを利用した発電です。フュージョンエネルギーは、海水中にも豊富に含まれる重水素と三重水素をフュージョン(核融合)することにより得られるエネルギーを利用した発電技術で、CO2を排出せず、また高レベルの放射性廃棄物を発生させないという特長があります。資源の乏しい日本にとっては非常に有望な発電であり、これが実現すれば原子力発電よりはるかに安全でクリーンなエネルギー源になる可能性があります。かつて、光ファイバは、世界を大きく変えました。私は超電導にはそれに匹敵するポテンシャルがあると思っています。
ステークホルダーの皆様へ
当社は今年、創業140年を迎えました。次の10年で創業150年を迎えることになります。その10年を見据えて、私たちは当社の技術をもとにさらに社会に貢献していきたいと考えています。そうすることで私たちは、経営危機のときにもご支援くださったステークホルダーの皆様に恩返しをしなければなりません。その中にはフジクラグループの社員も入っています。今、急速に業績が伸びているのは、何といっても社員の頑張りがあったからです。私は次の世代に、より良い事業、より良い製品、そしてより良い会社を引き渡していくことこそが何よりの恩返しであると思い、それをモチベーションに今後もフジクラグループは全力をあげて挑戦し続けてまいります。