フジクラ技報一覧

No.138 2025年7月
(online)ISSN 2436-8938
(printed)ISSN 0912-2761
発行者株式会社フジクラ
東京都江東区木場1−5−1
論文記事
降雨環境下におけるスパースアレイレーダの2Dイメージング
新事業創生・研究開発部門 | : | 川 口 拓 也 |
篠 塚 一 輝 |
近年,ミリ波レーダイメージングの需要が高まっていることを背景に,ミリ波レーダに対する高角度分解能化への期待が高くなっている.ミリ波レーダシステムの複雑化を抑制しつつ,高分解能化を実現する方法の一つとして,スパースアレイレーダがある.ここで,スパースアレイレーダの性能検証に降雨条件は一般に考慮されておらず,降雨がセンシング結果に与える影響については不明であった.そこで当社は,独自のスパースアレイレーダを構築し,自然の降雨が再現できる屋内試験場にて実施した測定結果を基に,降雨がスパースアレイレーダに与える影響について実験的検証を実施した.
宇宙光通信用耐放射線性Er/Yb共添加光ファイバ
光応用技術R&Dセンター | : | 西 村 亮 一 |
奥 出 聡 | ||
市 井 健 太 郎 |
宇宙衛星間通信は通信の大容量化が求められており,光による通信の実用化が進められている.特に低軌道衛星と静止軌道衛星間は距離が離れているため,10 W級の高い光出力が必要とされている.そのような10 W級の光増幅が可能な光ファイバとして,Er/Yb共添加光ファイバが知られている.市場においては,海外のいくつかのメーカーから宇宙用に耐放射線性を持ったEr/Yb共添加光ファイバが販売されているが,国内では今のところ上市されていない.そこで当社は耐放射線性を持つEr/Yb共添加光ファイバを開発し,10 W級の光出力が得られることを確認した.
産業用ファイバレーザ向け励起LDの性能向上
光応用技術R&Dセンター | : | 諸 橋 倫 大 郎 |
内 山 正 裕 | ||
山 形 友 二 | ||
寺 田 佳 弘 | ||
ファイバレーザ事業部 | : | 川 上 俊 之 |
産業用ファイバレーザシステムの励起光源である高出力LDには,高出力・高効率動作に加え,ファイバ結合に適したビーム放射角低減や長期信頼性の向上が求められる.本稿では,導波構造の見直しにより,垂直放射角を30%以上低減しつつ,駆動電流27 Aで光出力27.9 W,PCE 66.5%の高出力・高効率動作を達成した.さらに,長期エージング試験により,高負荷の連続動作においても優れた信頼性を実証した成果を報告する.これら高性能なLDの開発を通じて,次世代産業用ファイバレーザシステムの性能向上に貢献する.
28 GHz 256素子タイリングフェーズドアレイアンテナモジュールのOver-The-Air評価
電子応用技術R&Dセンター | : | 徐 磊 |
Fabrício Dourado | ||
東 海 林 孝 仁 | ||
藤 乘 優 治 郎 |
低遅延かつ高速でデータをリアルタイムに無線伝送できるミリ波は,第5世代移動通信システム(5G)への応用が期待されている.当社は,5G通信向け用途として28 GHzフェーズドアレイアンテナモジュール(Phased Array Antenna Module:PAAM)「FutureAccess™」を開発している.従来のPAAMに比べ出力を向上させたFutureAccess™ Type-C PAAMは,64素子,256素子ともにミリ波信号における高出力と高品質の両立を実現した.本稿では,OTA(Over-The-Air)試験を通じて,64素子PAAM単体,およびタイル状に並べて256素子に拡大した場合の性能を検証した結果について報告する.
ジェッティング敷設可能な超多心I/O WTC
光ケーブル事業部 | : | 引 間 大 輔 |
山 木 裕 介 | ||
辻 本 悠 介 | ||
浮 谷 典 孝 | ||
古 川 亨 |
データセンタ(DC)用の光ケーブルとして, 融着接続のコストを抑えることを目的に,難燃性を有する屋内用のインサイドプラント(ISP)ケーブルと,耐候性が必要な屋外用のアウトサイドプラント(OSP)ケーブルの両者の特性を有するインドアアウトドア(I/O)ケーブルの需要が増加している.しかしながら一般的にI/OケーブルはOSPケーブルに比べて機械強度が劣るため,ケーブルの敷設方式が限定されることが課題となっていた.今回機械強度が優れたRobust I/O(RIO)ケーブルを開発したことにより,作業性に優れたジェッティング敷設方式を採用することが可能となった.
静電気対策多心光コネクタ用クリーナ「One-Click®・Cleaner・MPO・ESD」
光コンポーネント事業部 | : | 中 根 純 一 |
渡 辺 順 也 | ||
坂 口 有 也 | ||
中 島 俊 彰 | ||
石 川 隆 朗 |
光ネットワーク構築に不可欠な光コネクタは,汚れや異物による通信品質低下を防ぐため,接続前の清掃が標準作業とされている.近年,データセンタの需要が増大し,その実現のために使用される光トランシーバなどで,静電気による損傷が課題となっており,特に光モジュールの性能低下や光リンク故障が問題視されている.これを受けて,当社は静電気保護区域で使用可能な,静電気対策多心光コネクタ用クリーナ「One-Click® Cleaner MPO ESD」を開発した.本稿では,この開発品の特長について報告する.
光学部品の実装におけるカチオン重合UV硬化型接着剤の硬化にともなう変形の解析
光応用技術R&Dセンター | : | 髙 橋 明 理 |
光学製品において,光学部品を高い位置精度で実装する精密接着技術は,重要な基盤技術である.精密接着の実現に欠かせない要素の一つとして,接着剤の硬化過程に関する理解があげられる.そこで当社では,カチオン重合UV硬化型接着剤を対象に,硬化過程の接着部の変形にともなう光学部品の変位を解析する手法の開発にとりくんだ.まず,接着剤の硬化反応モデルに基づき,硬化度を定式化し,さらに,硬化度に対する粘弾性,膨張・収縮率の変化を定式化した.これらを用いて有限要素解析を実施し,光学部品の変位を計算した.同一の接着構造,硬化条件における解析と実験の結果は同様の傾向を示し,本研究の解析手法の有効性を確認できた.
多心-4コアマルチコア光ファイバを用いたDC内接続向け400GBASE-FR4・2・km伝送試験
戦略センター | : | 小 池 恭 史 |
尾 﨑 耕 平 | ||
中 根 裕 樹 | ||
佐 場 野 多 賀 彦 | ||
西 村 顕 人 | ||
山 田 由 美 | ||
光R&Dセンター | : | 小 田 拓 弥 |
データセンター内光配線を想定し,2kmの4コアマルチコア光ファイバ,24心マルチコアファイバMPOコネクタ,24ペアのファンアウトデバイスを用いて伝送システムを構築し,400GBASE-FR4トランシーバを用いた伝送試験を行った.コア間クロストークのある環境下でエラーフリーの伝送を実証したため,その結果を報告する.