基盤技術

製造装置設計

新製品開発において、製品開発と生産技術開発を同時に進めることが差別化を生み出すポイントとなります。フジクラでは、機械設計や電気・制御設計といった設備開発に関わる高い技術力を有し、世の中にない独自設備の開発に取り組んでいます。これまで培ってきたフジクラ独自の設備技術の深耕と先進的な外部設備技術の習得を継続的に取り組み、それらの技術を製品に合わせた当社独自の生産設備に盛り込むことにより、先進的な設備開発に挑戦しています。生産設備と生産技術の提供を通じて、各事業部門や研究開発部門の収益力強化と競争力のある新製品開発に注力してまいります。

また、昨今の労働人口の減少に対応するため、製造工程のさらなる自動化が求められています。これまで人がになっていた作業を、専用機やロボット、自動搬送機などに置き換えることにより、生産性の向上、品質の安定、省人化を同時に実現する生産技術を提供してまいります。

精密加工技術

高精度化が進む製品を製造する現場では、工程のばらつきを最小化し、かつ高い生産性と歩留まりを実現するために、精密加工された部品や治具、金型が使用されます。
高精度な切削、研削、放電加工、測定の各技術を駆使し、たとえばフジクラの光ファイバ製造に不可欠な高精度治具を内製化してブラックボックス化することで、製品の差別化を実現しています。また、成型、打ち抜き、順送などの各種金型をフジクラグループ内で製作することで、製品精度の向上を可能にしています。
この精密加工技術は、電子部品の製造にも活用されています。フジクラ独自設計の切削用刃物を社内で製作し、年間数千万個におよぶ電子部品を高い工程能力で製造しています。
研究開発分野では、1/1000 ㎜以下の高精度で加工が可能な高速加工機をはじめとする、各種の高精度加工機を駆使して耐熱合金やレアメタルといった難切削材、および新素材の精密加工法の開発に取り組んでいます。
精密加工技術の開発を通じて、高精度な治具、部品、加工法を提供し、差別化された製品と製造プロセスの実現を目指しています。

成型金型例
高速加工機による精密切削加工例

制御技術

フジクラでは、高度な制御技術を駆使して社内向け製造設備の開発を手掛けています。製造設備には、製品の高度化・高精度化、安定した品質、省人化、そして最も重要な作業安全が求められます。そこで、高速・高精度の速度制御や位置決め制御といった先進的な制御技術を積極的に取り入れるとともに、ロボットや無人搬送機の制御システムを構築することにより工場の省人化や無人化にも取り組んでいます。また、製造設備(FA層)でのデジタルデータ取得のため、ものづくり現場に密着し、最適なセンシングによる有用なデータ取得を行っています。さらに、取得したデータを価値化することで「ものづくりDX」を推進し、製造設備のインテリジェンス化に取り組んでいます。

検査技術

情報通信やエネルギー分野の製品では、安定した社会基盤を支えるために高い品質が安定的に求められます。また、エレクトロニクスや自動車分野においても、製品の高度化・高密度化にともない、微小な不良や品質の変化を確実に捉えて不良流出を防止する必要があります。いずれの製品においても、厳格かつ厳密な検査による品質管理と継続的な品質改善が求められており、製品の特徴に合わせた最適な検査方法の開発が重要となります。

フジクラでは、生産技術部門が中心となり、製品開発、製造現場、品質保証、検査技術など、関係する各部門と連携して、各製品の特徴や製造工程、検査基準に合わせた独自の検査手法を開発しています。また、社内の幅広い製造工程に対して、高感度かつ高精度な判定が可能な検査装置を導入しています。さらに、検査結果から品質の傾向変化を可視化し、品質改善に活用する生産システムの開発・導入も進めています。

画像検査機の例
品質管理用画面の例

材料分析技術

材料技術にMI(マテリアルズ・インフォマティクス)を活用することで、フジクラのものづくりを強化し、社会に貢献しています。MIとは、計算科学やデータ科学を積極的に活用するアプローチのことです。材料技術には、材料設計、プロセス設計、計測・分析といった要素があるため、それらに適切なデータ解析手法を用いる必要があります。そこでフジクラでは、MIを基盤材料技術の1つとして位置づけ、多種多様な製品への応用を進めています。たとえば、ケーブルのシース開発にベイズ最適化を活用することで、開発期間を従来の約1/4に短縮することに成功しました。

解析技術

製品の開発、製造技術・加工技術の開発、不具合発生原因の究明などに活用が進むコンピュータシミュレーション※による解析は、目に見えない現象や想像するしかない変化を「見える化」して「理解・検討」することを可能とします。製品設計の最適解を得る、あるいは製品開発期間を短縮するために、この手法はきわめて有用です。製造工程の設計・改善に用いられるコンピュータシミュレーションは、振動にともなう形状変化と応力分布の変化把握や、流体の挙動と原料の化学反応の同時連成解析など、複数の物理現象の組み合わせで構成されています。この複雑な現象に対していかに解析精度を確保するかが、技術的な課題となっています。実際の製造データをコンピュータシミュレーションにフィードバックすることにより、独自の解析技術とノウハウを蓄積し解析精度を向上させています。応力、変位、強度、振動、電流、伝熱、流体などのさまざまな解析技術を駆使して、差別化された製品と生産技術の開発を進めていきます。

コンピュータシミュレーション:人の手では計算困難な現象や事象を、コンピュータを使って擬似的に再現すること。

基板発熱状態の伝熱解析
流体解析

AI技術

近年、AI技術の急速な普及により、製造業の会社が生産工程にAIを導入するケースが増えています。そこでフジクラでは、自社開発したAI技術を社内の製造工程に導入し、品質と生産性を飛躍的に向上させるための活動を行っています。

フジクラはAI技術のコンピタンスの一つとして、最新のAIを獲得し実際の事業課題の解決にソリューションとして適用する能力を挙げています。具体的には、2018年に外観検査アプリケーションを製造工程に導入し、それ以降、社内の幅広い製品にAIベースの外観検査システムを複数開発・導入しました[1]。また、開発したAIソリューションが正常に運用できているかを監視し、AI検査を安定的に運用・保守するために、フジクラ独自の「AIプラットフォーム」を開発しました。

識別型AIは、フジクラにとってキーとなる技術の一つであり、その考え方を図1に示します。学習時には、画像とそれに対する正確な情報のペアを大量にネットワークに入力します。学習が進むにつれ、入力画像に対する結果を高い精度で出力できるようになります。この技術は、フジクラの製造工程における外観検査に活用されています。

図1:深層ニューラルネットを用いた画像認識

そのほかにも、強化学習およびSim2Real技術を用いたアプリケーションの開発に挑戦しています(図2)。これらの技術は、AIが判定した特徴量を製造装置の制御に用いることができるため、AIの適用範囲が広がる可能性があります。フジクラは、この技術をレンズ調心システムに導入する概念検証を実施しました[2][3]。

図2:強化学習およびSim2Realを用いたレンズ調心システムの概念図

今後も、日々進歩するAI技術をキャッチアップし、社内のものづくりや事業上で発生する課題にAIを活用することで、業務効率化と生産性向上を図ります。

参考文献

  • 黒澤ほか:「AI化推進方法と、実現に向けた技術開発」,フジクラ技報,2021
  • T. Akiyama, "Practical Use Case of Reinforcement Learning and Sim-to-Real Transfer for Manufacturing," NVIDIA GTC, 2023
  • 仁田脇ほか:「強化学習とSim2Realを用いたAI制御技術の製造装置への適用」,フジクラ技報,2024