エネルギー伝送

高温超電導線材

高温超電導技術は、その幅広い応用可能性から、さまざまな分野でのカーボンニュートラル社会の実現に大きく貢献すると期待されています。特にエネルギー分野では、フュージョンエネルギーを利用した発電(核融合発電)が将来の発電方式の一つとして期待が高まりつつあります。
フュージョンエネルギーは、従来のエネルギーと比べて、その発電過程で二酸化炭素を排出せず、その資源は海水中に豊富にあります。また、熱暴走をしないため、安全性などの面で優れているとされており、エネルギー問題と環境問題を根本的に解決する技術として期待されています。
近年、欧米を中心に、レアアース系高温超電導線材を採用することでフュージョンエネルギーに必要な超電導マグネットを従来よりも小型化し、フュージョンエネルギーの実用化を加速させようという動きがあります。フジクラでは、世界トップレベルの研究開発を継続し、高性能で均一なレアアース系高温超電導線材を国内外に提供し、ユーザから高い評価を得ています。
フジクラは、フュージョンエネルギー開発への貢献を通じてカーボンニュートラル社会の実現を目指すと同時に、電動航空機や分析機器などさまざまな次世代超電導機器の発展にも貢献してまいります。

レアアース系高温超電導線材外観
レアアース系高温超電導マグネット外観

ファイバレーザ

フジクラの高出力連続発振マルチモードファイバレーザ(図1)は、金属の切断や溶接に、またビーム品質に優れた連続発振シングルモードファイバレーザは、異種材料の接合や炭素繊維強化プラスチック(CFRP)の切断などに用いられています。Qスイッチ方式のパルス発振ファイバレーザはマーキングや金属加工などに用いられ、MOPA方式のパルス発振ファイバレーザ(図2)は、さまざまな材料への微細加工などに用いられています。
このように、ファイバレーザは幅広い分野の加工に利用されており、その用途はバイオや医療、バッテリーや半導体製造などに拡大しています。これらの市場需要にこたえるため、フジクラは、ファイバレーザを構成する要素技術(高出力レーザダイオード、希土類添加および特殊光ファイバ、ファイバ型光部品など)の開発を継続することで、新たな加工を実現しています。
最近では、20 kW超高出力連続発振マルチファイバレーザによる厚板金属の高速切断(図3)やレーザビーム形状を制御して加工品質を向上させるビームプロファイル可変技術(図4)、加工材料の変質が起こりやすい光の波長に変換することで加工速度を向上させる波長変換技術などの開発と実用化を進めています。
また、ファイバレーザの将来的な用途として期待されているのが、レーザ光による無線エネルギー伝送です。これは、宇宙空間での太陽光エネルギーをレーザ光で地上に伝送し、地上でレーザ光を電力に変換する「宇宙太陽光発電システム(SSPS)」というもので、多くの機関で研究開発が進められています。
今後も、お客様のご要望にこたえられるよう、ファイバレーザ製品および技術の研究開発を続けていきます。高性能かつ高品質で多種多様な加工を実現するのはもちろん、高効率かつ省エネで環境負荷を低減し、社会に貢献してまいります。

図1:高出力連続発振マルチモードファイバレーザ(6 kW/12 kW出力 キャビネットタイプ)
図2:MOPA方式パルス発振ファイバレーザ
図3:20 kW超高出力連続発振マルチファイバレーザ / 厚板金属切断(ステンレス厚:35 mm)
図4:ビームプロファイル可変技術

導体・絶縁

エネルギー伝送および情報伝送に関わる製品開発の長い歴史の中で培われた導体・絶縁材料技術は、フジクラグループのものづくりを強力に後押ししてきました。近年、自動車の軽量化に貢献するワイヤハーネス用導体について、合金組成から加工までを一貫して開発することで金属組織を制御し、高強度、高導電率、高延性を両立したアルミニウム合金導体を開発しました。

電線やケーブル被覆材料に使用される樹脂を軽量化することで、自動車搭載時のエネルギー消費量を削減し、SDGsの達成に貢献しています。また、燃えやすい樹脂材料を人体や環境にやさしい難燃性材料に置き換えることで、お客様に安全と安心を提供してきました。今後も、コアとなる材料技術を通じて、フジクラグループの製品とものづくりを支えていきます。

アルミワイヤハーネス
環境にやさしく軽量な難燃材料(一般材は水中で沈むが、開発材は低比重のため浮上する)

熱輸送デバイス

パワー半導体冷却用モジュール

大発熱量のパワー半導体の放熱対策用に、大容量のヒートパイプおよびベーパーチャンバーの開発を行っています。平板型のヒートパイプであるべーパーチャンバーは、全面がヒートパイプの性能を持つため高い放熱性能を発揮します。また、内部構造を改善することで、最大熱輸送能力の向上と低熱抵抗化を実現する開発を進めています。

0.35 mmピッチの微細加工、1/1,000 mmのパーツ精度 (成形金型)

大型コンピュータ用コールドプレート

スーパーコンピュータやメインフレームなどの大型コンピュータの放熱対策用として、マイクロチャンネルフィン構造(フィン厚:0.15~0.4 mm)を採用したコールドプレートと呼ばれる液冷ユニットを開発しました。このコールドプレートは空冷方式と比べて省スペースでありながら、数倍以上の冷却性能を発揮します。

パワー半導体冷却ソリューションの例

ワイヤハーネス

「クルマの神経と血管」と例えられるワイヤハーネスは、車内の電子ユニットを正常に作動させるための電気経路となる配線の束で、電源や信号を車の隅々までつないでいます。
年々増加し続ける車載装備のエレクトロニクス化により、ワイヤハーネスも複雑化しています。
フジクラは、最新の技術と長年培った知恵と経験をいかし、配線材や車内配線システム、ヒューズボックス、コネクタ、端子にいたるまで、ワイヤハーネスの開発・製造をトータルに手がけています。

大電流接続

電気自動車(EV)の普及には、充電時間の短縮が課題の一つとなっています。充電時間を短縮するには充電電流を増やす必要がありますが、充電ケーブルコネクタ内の発熱量が大きくなるという問題があります。ケーブルの導体サイズを大きくすれば発熱量を抑えられますが、その分、ケーブルが重く大きくなり、充電時の操作性が悪くなります。そこで、ケーブルの導体サイズを大きくせずに充電電流を増やすため、ケーブルコネクタ内に液体冷媒を循環させて効率的に排熱する液冷技術を採用した、液冷ケーブルコネクタを開発しました。この技術により、操作性を損なわない重量とサイズで従来の3倍強の定格充電電流を実現しました。