フジクラ技報一覧

No.103 2002年10月
1996年6月からCS放送, 2000年12月からBS放送のデジタル放送が開始され, 地上デジタルテレビジョン放送も2003年末までに関東, 近畿, 中京の広域圏で, その他の地域では2006年末までに放送が開始される予定になっています.
近年の映像システムのデジタル化に伴い, 放送用の映像信号もデジタル化が急務となっています.
当社では, 需要が増えているHDTV-SDI( High Definition Television Serial Digital Interface )信号を伝送する製品として, 小型で長距離伝送可能な ARIB BTA S-004B に準拠したHDTV-SDI光リンクを開発致しました.
HDTV-SDI信号はもとより, SDTV-SDI( Standard Definition Television Serial Digital Interface )信号にも対応しています.
HDTVは, 放送以外にも広い分野で利用されており, 今後, ますます拡大するSDI信号の光伝送化に向けて, このHDTV-SDI光リンクが貢献していくものと思われます.
論文記事
スラント型ファイバグレーティングを用いた利得等化器
光電子技術研究所 | : | 丹羽 敦彦 二本柳 明展 奥出 聡 田中 大一郎 |
光ファイバ事業部 | : | 須藤 正明 |
スラント型ファイバグレーティング(SFBG)を用いることで,広帯域かつ等化偏差の小さい利得等化器を実現した.作製した広帯域SFBG利得等化器では,39nmの帯域幅で利得平坦性が0.19dBp-pという優れた特性を得た.さらにTelcordia GR-1209 coreおよびGR-1221 core準拠試験を行い,その高信頼性を確認した.
超低分散スロープ型ノンゼロ分散シフトファイバFutureGuideTM-USS
光電子技術研究所 | : | 松尾 昌一郎 姫野 邦治 原田 光一 |
光デバイス事業推進室 | : | 竹島 由将 |
SバンドからLバンドにわたる高密度波長多重伝送(Dense Wavelength Division Multiplexing, DWDM)に対応したノンゼロ分散シフトファイバを開発した.本ファイバの分散スロープは,従来のノンゼロ分散シフトファイバの半分以下であり,広い波長範囲にわたり波長分散が小さい.このため,メトロコアネットワ-クにおいて分散補償器なしで1波あたり10Gbit/sのDWDM伝送が可能になる.さらに,通常シングルモード光ファイバ用の分散補償ファイバを用いた分散補償が可能であり,将来の40Gbit/s伝送への拡張に対応したファイバである
アクセスルータにおける冗長化機能
光システム開発部 | : | 杉山 茂樹 小林 和久 梅津 彰人 相馬 拓 須賀野 裕美 荒井 克幸 |
近年,企業ネットワークのLAN間接続において,回線障害,装置障害などに備え,単一の回線,装置だけではなく,複数の回線,装置による冗長構成を希望するユーザが増加してきた.当社では,このような要請にこたえるべく,当社の製品であるアクセスルータFNX0532,FNX0550に,VRRP(Virtual RouterRedundancy Protocol)機能を搭載し,OSPF(Open Shortest Path First)プロトコルと組み合わせることにより,アクセス系ネットワークの冗長構成を実現したので報告する.
一心双方向PCM光ビデオリンク
光システム事業部 | : | 山田 祐司 前沢 紀行 矢島 史夫 矢野 健次郎 荒井 克幸 高岡 俊英 田中 朝和 |
光ファイバを用いた映像監視システムにおいて,従来のアナログ光伝送方式を採用したシステムでは,伝送距離により性能が劣化するため,高品質の映像・音声信号を長距離伝送することは困難であった.
また,監視カメラのズーム・フォーカス等の制御信号を伝送する場合には,専用の光リンクと光ファイバを用意する必要があった.
本報では,高品質な映像・音声信号の長距離伝送を可能とするとともに,1心の光ファイバによる音声・制御信号の双方向伝送も可能とした装置を紹介する.
光ファイバリング干渉型振動センサによる振動位置の同定
光システム事業部 | : | 戸倉 武 高嶋 徹 荒井 克幸 |
精密機器開発部 | : | 二階堂 伸一 |
当社はこれまで光ファイバリング干渉計を利用した装置として,光ファイバ無切断通話機1),光ケーブル対照器2)などを開発・検討してきた.また,落石検知や侵入者検知などへの応用を目的として,光ファイバリング干渉型振動センサの検討を行ってきている3).しかしながら,これまでの振動センサはこれらの応用のために重要な技術である振動位置を同定することが困難であった.今回,光ファイバリング干渉型振動センサにおける振動位置の同定方法について検討した結果,それを実現したので報告する.
※恐れ入りますが、現在PDFの掲載を停止しております。
直流120kV同軸CV海底ケーブルおよび工場ジョイント
電源開発株式会社 | : | 山中 鉄也 木村 武生 |
電力技術開発センタ | : | 重年 生雄 渡辺 和夫 |
ネットワークソリューション事業部 | : | 吉田 学 |
株式会社ビスキャス | : | 平澤 隆行 |
この論文は直流同軸CVケーブルと工場ジョイントの開発について述べている.同軸ケーブルは主導体と主絶縁体,帰路導体と帰路絶縁体で構成されており,同軸ケーブルの採用は,「帰路回路のためのケーブルまたは電極を省略できる」「地磁気偏差(コンパスエラー)を軽減できる」など環境的,経済的に大きな利点がある.
このため,長距離海底ケーブルへの適用を目指して直流同軸CVケーブルと工場ジョイントが開発された.
サウジアラビアにおける380kV長距離CVケーブル線路工事
株式会社ビスキャス | : | 中村 良晴 池田 秀樹 光山 安一 熊田 佳範 |
藤倉エネシス株式会社 | : | 山田 典夫 元田 昌宏 小林 毅 |
電力事業部 | : | 石川 虎一 足立 宇弘 |
送電線事業部 | : | 山田 憲司 |
電力技術開発センタ | : | 新延 洋 |
光デバイス事業推進室 | : | 藤井 善之 |
サウジアラビアのジェッダ地区に380kV 2,500mm2 架橋ポリエチレン絶縁(CV)ケーブルを採用した長距離地中送電線路が2001年5月に完成した.この線路は既設の架空送電線から新たに建設されるアルジャミア変電所までの,亘長約5km,2回線を地中ケーブルで結ぶプロジェクトで,サウジアラビアの電力会社Saudi Electricity Company(WR)より当社がターンキーで受注した.以下に本プロジェクトについて報告する.
分別リサイクルを考慮したエコ電線・ケーブル(第3報)
—多筒液体サイクロン方式プラスチック分別システム—
産業電線事業部 | : | 村山 元久 新元 孝 二ノ宮 信夫 |
材料技術研究所 | : | 馬淵 利明 石田 克義 |
生産技術統括部 | : | 片岡 吉男 鳥井 和彦 |
近年,産業廃棄物処分場の深刻な不足問題,ダイオキシンに代表される焼却処分時の有害ガスによる大気汚染問題がクローズアップされてきており,廃棄物削減が重要な課題となっている.
当社は,環境にやさしくリサイクル性の高い「低比重エコ電線」を開発・販売しているが,そのリサイクル性の高さを名実ともに実証するために,このたび,世界で初めて多筒液体サイクロン方式プラスチック分別システムを鈴鹿事業所に設置し,稼動開始した.
このシステムは,回収電線を粉砕して銅を回収した残りの混合被覆材料(エコ材料,ビニルおよびポリエチレン等)を装置に投入し,各被覆材料をいちどにそれぞれ99%以上の高純度で分別回収できるものである.多筒式とは,エコ材回収サイクロン,ビニル回収サイクロンおよびポリエチレン回収サイクロンが連続して設備されているもので,装置メーカである日立製作所と当社が共同開発した新しいリサイクルシステムである.分別処理量は,時間当り200kgで,連続運転が可能である.
高速伝送ケーブル(その2)
電子部品開発センタ | : | 安部 知明 芦田 茂 森田 浩康 桑原 浩一 中村 肇 橘 ゆう子 小笠原 孝 |
材料技術研究所 | : | 渡辺 知久 |
フジクラタイランド社 | : | Thepdanai Numkanisorn |
第一電子工業株式会社 | : | 山田 昭男 |
PC,サーバ等の情報端末機器のインタフェースに対応する最近の高速伝送ケーブルには多くの種類がある.適用されるインタフェース規格によって物理層で規定されるケーブル,コネクタの仕様も異なる.現在最も代表的ないくつかについて適用箇所,特徴をまとめた.
HDD用FPCへのフリップチップ実装
電子部品開発センタ | : | 稲葉 匡俊 関 善仁 中尾 光宏 貫名 正人 大湊 忠則 |
プリント回路事業部 | : | 渡辺 秀栄 |
PCTT Ltd. | : | Tewarak Pholyomma |
HDDの用途は多様化しており,性能の向上も著しい.HDDに使用されているFPCに実装されるプリアンプICの実装方法として,最近では信号伝送の高速化への要求から,フリップチップ実装が取り入れられてきている.
これらの需要にこたえるために,当社でもはんだバンプによるフリップチップを含んだ実装プロセスを導入した.プロセス構築にあたり,諸条件や使用材料を検討し,信頼性を十分確認した上で量産化を行った.
メンブレンスイッチモジュール
電子部品開発センタ | : | 今井 隆之 石井 崇裕 羽賀 荘一 唐沢 範之 大森 喜和子 |
プリント回路事業部 | : | 川上 裕之 佐々木 信行 |
LTEC Ltd. | : | 腰原 優智 |
当社では,抵抗,コンデンサチップやICを実装したメンブレンスイッチ,透明タッチパネルと接続,複合化したメンブレンスイッチを製造,販売している.さらに,近年になって,スイッチ,ボリューム,筐体などの機構部品とメンブレンスイッチを複合化する要求が強まってきた.このようにモジュール化を進めることは,最終セットメーカの組立工数を削減できること,当社製品の付加価値が向上することのみならず,配線板レベルの設計をベースに機器設計を最適化することができるので,最終機器のコストダウン,小型化に貢献が大きい.
このような流れに対応すべく,各種要素技術を開発し,メンブレンスイッチと機構部品を複合化したメンブレンスイッチモジュールの製品化に成功した.
一括積層ポリイミドIVH多層配線板
電子デバイス研究所 | : | 中尾 知 渡辺 太郎 岡本 誠裕 黒坂 昭人 |
電子部品開発センタ | : | 伊藤 彰二 |
ポリイミド系樹脂フィルムを用いた多層配線板は,高密度実装への適合性に加え,良好な高周波・高速伝送特性が注目されている.当社は,独自の製法を採用してきわめて安価に製造できる可能性を持った,次世代電子機器や半導体パッケージ用IVH多層配線板を開発した.この配線板はポリイミド系接着材を用いて回路形成したフィルム基材を一括積層することを特徴とする.ビアを直列に配置したデイジーチェーンを有する2層および3層の配線板を作製し,回路の抵抗値およびそのリフロー耐熱性などを評価した.