フジクラ技報一覧

No.101 2001年10月
当社は,通信市場の光化に対応して,光コネクタや光ファイバシート等の基幹部品および材料の開発,製品化に積極的に取り組んでいます.
写真は,光通信市場で標準的に使用されている代表的な多心光コネクタ(MPO及びLIGHTRAY MPX)です.
8心,12心,24心と様々な心数構成に対応しており,単心光コネクタ並の低損失な特性を有する製品を,当社がいち早く量産化し市場へ送りだしております.
また複雑化する光ファイバの配線を1枚の配線材料として構成した当社の光ファイバシートは,優れた可とう性と難燃性を有し,光機器内および装置内の配線材料として使用されつつあります.
これらの製品は,今後使用範囲がますます拡大し光通信市場を構成する重要部品の一つとして有効に活用されてゆくものと思われます.
論文記事
高消光比温度安定特性を有する偏波保持光部品
光電子技術研究所 | : | 松浦 隆明 中村 卓広 西脇 賢治 百津 仁博 浅野 健一郎 細谷 英行 |
フジクラ・テクノロジー・シンガポール株式会社 | : | タン ソクチェン ン フィリィー タン コクション |
近年の急速な通信容量の高速・大容量化に対応するため,偏波保持技術を応用した波長多重伝送方式の検討が進められている.このようなシステムに適用される光増幅器,光合分波器等の機器において使用される光部品は,信号光の偏波状態を保持する機能が重要となる.
今回当社は,高い偏波保持性が広範な温度範囲において安定して得られる,偏波保持WDMを開発したので以下に報告する.
ツリウム添加光ファイバを用いたEDFAの利得傾斜補償
光電子技術研究所 | : | 北林 和大 酒井 哲弥 |
高密度波長多重伝送システムでは,エルビウム添加光ファイバ増幅器(Erbium-doped Fiber Amplifier,以下EDFAと略す.)の利得平坦度が重要である.EDFAの利得は利得等化器を用いて平坦化されるが,EDFAの動作状態が変化するとEDFの利得傾斜により利得平坦度が劣化する.この利得平担度の劣化をツ リウム添加光ファイバを用いて補償した.このEDFAは信号波長帯域1,539nm~1,564nm,入力ダイナミックレンジ8dBにおいて利得平坦度0.5dB以下,雑音指数6.0dB以下である.
環境負荷低減型ユーザ系光ケーブル
通信ケーブル事業部 | : | 加藤 修 村田 暁 大橋 圭二 宮本 末広 |
ユーザ系光ケーブル被覆材料には,加工性に優れ,廉価であるポリ塩化ビニル(PVC)が一般的に使用されている.PVCは,焼却時にダイオキシンのような有害ガスを発生させる可能性と,埋立処分時に鉛化合物溶出などの環境への悪影響が懸念されている.近年,地球環境保護の観点より,有害物質を含まず,地球環境に配慮した材料の使用要求が高まっている.今回ユーザ系光ケーブルで被覆材のノンハロゲン難燃化の開発を行った.その内容について報告する.
ATMアクセスルータ
光システム事業部 | : | 梅津 彰人 杉山 茂樹 大西 洋也 坂口 征治 林 広幸 中村 眞二 荒井 克幸 |
従来,企業ネットワークのLAN間接続には,ディジタル専用回線が使われることが多かった.しかし,ATM(Asynchronous Transfer Mode)サービスの多様化,低価格化にともない,LAN間接続にATM回線を適用する需要が高まってきた.ATMサービスは,その特長から,価格面のみならず,性能面においてもLAN間接続に適しているサービスであると言える.当社は,安価にATM接続を実現するためのATMアクセスルータFNX0550を開発した.FNX0550は,大規模企業ネットワークの構築に対応する機能を搭載したうえで,低価格を実現した製品である.
光ファイバリング干渉計の基礎技術
光システム事業部 | : | 高嶋 徹 戸倉 武 二階堂 伸一 荒井 克幸 |
光ファイバを用いた干渉型センサは,様々な物理量を測定する手段として広く用いられている.当社はこれまでに光ファイバリング干渉計を用い,無切断通話装置1),光ケーブル対照器2)などを開発してきたが,さらにこの技術を応用した定量的な測定が可能な振動検知センサの検討を行っている3).しかし,定量測定が可能なセンサとして使用するためには,感度の安定性や直線性を改善する必要がある.そこで,光ファイバリング干渉計の原理と問題点を確認し,その解決方法についての検討・評価を行ったので,その内容を報告する.
500kV長距離CVケーブル線路−東京電力新豊洲線−
東京電力株式会社 | : | 米本 典裕 宗田 康弘 |
電力事業部 | : | 瀬尾 右文 熊田 佳範 山之内 宏 伊藤 雅彦 國村 智 |
材料技術研究所 | : | 中村 詳一郎 |
藤倉エネシス株式会社 | : | 藤井 善之 石井 友三 |
世界初の低減絶縁500kV 2,500mm2アルミ被CVケーブル地中送電線路である東京電力新豊洲線の建設がこのほど完成した.
当社では線路亘長約40km 2回線のうち,ケーブル約20km 1回線分と付属品を納入し,特に1,800mにおよぶケーブルの長尺化によって中間接続数の削減と工期の短縮に寄与した.また,本プロジェクトでは品質管理,布設工法および中間接続に多くの最新技術を適用して線路の信頼性の向上に努めてきた.以下に本プロジェクトの概要を示す.
500kV直流XLPEケーブルおよび同径接続部
電源開発株式会社 | : | 前川 雄一 浅野 光正 木村 武生 |
電力技術開発センタ | : | 吉田 学 今 博之 渡辺 和夫 |
電力事業部 | : | 平澤 隆行 石川 虎一 |
材料技術研究所 | : | 高橋 享 |
直流XLPEケーブルは,長距離大容量送電の担い手として将来期待されており,当社では500kV級直流ーブルの開発を進めている.この絶縁体としては,絶縁抵抗が高く,空間電荷の蓄積を抑制する効果がある無機充填材入りXLPEを用いている.
これまでに500kV級直流ケーブルおよび同径接続部について設計試作し,各種電気試験を行った結果,初期特性として十分な電気特性を有することを確認している.そして,開発の最終段階として長期課通電試験を実施したので,これらの結果について報告する.
NZ-DSFを適用した金属管ルース型OPGW
送電線事業部 | : | 太田 敬久 綾田 秀信 |
電力技術開発センタ | : | 久米田 俊昭 竹内 康雄 |
通信ケーブル事業部 | : | 子安 修 |
近年のデータ伝送容量の急激な増大にともない,OPGWにおいてもDWDM伝送方式が適用され始めている.実効コア断面積拡大型NZ-DSFとSMFを複合した金属管ルース型OPGWを試作し,敷設環境における張力変化・温度変化・振動などの各種条件を想定した一般性能試験を行った.その結果NZ-DSFはSMFと同等の良好な伝送特性を有しており,実用に供し得ることを確認した.
新型キャブタイヤケーブル
産業電線事業部 | : | 山本 憲 中澤 明 |
電力技術開発センタ | : | 高原 克二 |
材料技術研究所 | : | 江戸 崇司 |
建設工事現場における仮設電源用ケーブルにキャブタイヤケーブル(以下CTケーブルと略す)が多く使用されている.ころがし配線など乱暴に取扱われるために,その被覆材としては耐衝撃性,耐摩耗性等に優れるゴム系材料が主として使用されており,一部に廉価である塩化ビニル(以下PVCと略す)が使用されている.本報では,両者の利点を兼ね備えた新しい材料を開発し,ケーブルとして評価を行った結果について報告する.
小型振動モータ(その2)
電子材料事業部 | : | 松浦 克久 新堀 聡 薄田 岳史 小川 俊之 真清 実 |
株式会社青森フジクラ | : | 宇野 禎倫 |
当社では,携帯電話および腕時計用のページャとして搭載するための極小直流振動モータを開発してきた.省電力かつ高振動の要求に対し,以前開発した2コイル式振動モータよりも特性が優れたモータを開発することができた.これは,2コイル式振動モータを基本構造とした,3コイル式振動モータとして新たに開発したものである.現在市場にでているモータは,ペンシルタイプとコインタイプとがある.このモータは,従来品と同様にコインタイプのもので,外径がφ8mmとこのタイプとしては世界で最も小さくて軽量な振動モータである.
エコ多心ケーブル
電子材料事業部 | : | 中村 肇 沢田 広隆 |
材料技術研究所 | : | 馬淵 利明 石田 克義 渡邊 知久 鈴木 淳 吉野 明 |
電線・ケーブルの被覆材料としては電気特性,機械特性,加工性等の特性が優れ,またコストも廉価であるためポリ塩化ビニル(以下PVCと略す)が使用されることが多い.しかし,PVCは不適切な条件で燃焼した場合のダイオキシン発生や,埋め立て処分した場合の鉛化合物の溶出による環境汚染が懸念されている.このため,電線分野においても,より安全で環境に配慮した材料が求められ,様々な品種の電線において環境対策や材料の研究開発が進められている.本報では,家電・電子機器分野におけるエコ多心ケーブルについての開発状況および今後の課題について報告する.
体格検知着座センサ
アイシン精機株式会社 | : | 伊藤 浩二 田中 和也 |
プリント回路事業部 | : | 高橋 克彦 今井 隆之 落合 俊夫 |
材料技術研究所 | : | 中嶋 敏文 |
株式会社青森フジクラ | : | 和田 光正 安田 貴生 青山 秀幸 |
自動車のスマートエアバッグシステムでは,乗員の体格に応じたエアバッグの展開制御システムが求められている.われわれは,乗員の体格を検知する手段として,シート内に多接点の感圧式メンブレンセンサを配置し,各接点の圧力情報から乗員の体格を検知する体格検知式着座センサの開発を進めてきた.本報では,本センサの実用化に向けて大きな開発課題であったセンサシート面内の感度ばらつきの低減,ならびにセンサ感度の温度依存性の改善についての詳細を報告する.
多層転位セグメント型超電導ケーブル
中部電力株式会社 | : | 鹿島 直二 長屋 重夫 |
材料技術研究所 | : | 後藤 謙次 鈴木 知史 味村 彰治 斎藤 隆 河野 宰 |
電力技術開発センタ | : | 大野 光一 |
産業電線事業部 | : | 英 久仁夫 |
鈴鹿事業所 | : | 加藤 一 |
われわれは15m長の2.6kA級新型超電導ケーブル導体を開発した.本導体は中心フォーマであるフレキシブルSUS管の周囲に複数本の転位セグメントを巻き付けた構造を有している.転位セグメントは5本撚り構造であり,絶縁処理を施した強化銀シーステープ線を採用して,線材の強度を確保するとともに低交流損失化をはかった.導体は3層構造を有しており,各層のインピーダンスが等しくなるよう巻き付けピッチが層ごとに調整されている.通電試験の結果,同一セグメント内のテープ線に流れ込む電流は,±5%以内に均流化されていることを確認した.また,3層の各層に流入する電流を通電電流200~2,800Aの範囲で±6% 以下に均流化させることができた.これらの電流均流化を達成することにより,1,000Aの交流電流通電時において0.1W/mの交流損失であるという低交流損失型高温超電導ケーブルの開発に成功した.
加圧分解法による複合材料中の微量元素分析
材料技術研究所 | : | 近藤 奈穂子 田中 勝麿 宮田 裕之 |
近年,複雑化しているエコ材料や電子材料の成分分析に迅速に対応するため,加圧分解容器を用いた試料の前処理法を確立した.この手法は,迅速・低コンタミネーションであるため,微量元素分析の前処理に非常に適している.本報では,加圧分解容器を用いた試料の分解および実際の微量分析への応用について紹介する.
ワイヤハーネス3D−2D変換CADシステム
機器電材事業部 | : | 五十畑 悦男 高橋 憲一郎 |
システム部 | : | 猪野 人志 |
自動車用ワイヤハーネス(以下WH)の仕様図は,従来フリースケールの2次元(以下2D)図面で提供されていたが,自動車業界のデジタルプロセス化により,製品・部品仕様は3次元(以下3D)CADデータでの一元管理となり,WHの仕様も実寸スケールの3DCADデータで提供されることが必定となっている.
しかしWHは製作段階において平面図板上で組み立てられるため,従来と同じ2Dの製作図面が必要である.
今回,顧客の3DCADデータを2D展開して社内のWH専用CADへの変換データを作成するシステムを,3DCADベースに開発した.
自動車用42V電源システム対応コネクタ
機器電材事業部 | : | 﨑山 興治 井出 剛久 明石 一弥 |
自動車の電気負荷は年々増加しており,より効率を高めるため,車両電圧を14Vから42Vへ昇圧する動きがある.42Vシステムにおいて,ワイヤハーネスは重要な部品となるが,多くの技術的課題がある.特に通電中にコネクタを外したときに発生するアーク放電は深刻な問題で,実験では端子が5mm程度溶け,端子の温度が1,000℃以上に達することがわかった.
この問題を解決するため,42Vシステムに対応した新タイプのコネクタを開発した.このコネクタは,端子間で発生するアークエネルギーを本質的に低減することができる.
タッチモード容量型圧力センサ
電子デバイス研究所 | : | 山本 敏 鈴木 孝直 中尾 知 西村 仁 |
機器電材事業部 | : | 佐藤 昌啓 |
タッチモードと称される新しい方式の静電容量型圧力センサは,様々な分野で応用される可能性を秘めている.高度な微細加工が必要なこのタイプのセンサには,先進のMicro Electro-Mechanical System(MEMS)技術が適用されている.タッチモード構造の場合,センサに外部圧力が印加されると,そのダイアフラムは対向電極側の基板に接触して保護される.このことから,タッチモード方式のセンサは従来方式に比較して,その出力特性の直線性に優れ,定格測定範囲を大きく超える印加圧力にも耐えられ,さらには過酷な環境下の工業用途にも使用可能な頑健な構造を有している,という特徴がある.当社は工業的規模での生産が可能で,かつタッチモード構造を有する静電容量型圧力センサの開発に成功した.
低電圧駆動ワンチップ集積化圧力センサ
機器電材事業部 | : | 蓬田 拓 伊藤 達也 |
株式会社東北フジクラ | : | 伊藤 清成 |
当社はチップ上で信号調整された,高出力で,温度特性補償,調整機能を持った低電圧駆動集積化圧力センサを開発した.このセンサチップはピエゾ抵抗ゲージを持つダイヤフラムとバイポーラリニアIC,レーザトリマされた薄膜抵抗で構成され,同一のシリコンチップ上にすべて集積化されて搭載されている.この圧力センサは直流3Vの定電圧で駆動可能であり,バッテリ駆動携帯製品に適している.