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CSR

CSR統合報告書

フジクラグループCSR統合報告書2014
〔ISO26000 中核主題〕 組織統治

研究開発

研究開発

研究開発

当社が開拓する環境・エネルギー技術

21世紀は環境とエネルギーの世紀といわれます。地球環境と人間社会が調和し持続可能な関係を維持、発展させていくには、環境、エネルギー分野における新技術開発がますます重要になっています。それは、われわれものづくり企業の使命ともいえます。当社では、これらの分野の研究開発に積極的に取り組んでいます。電線、ケーブル分野では、伝統技術に様々な技術革新を重ね、時代の要請に応えてきました。近年では鉛フリー、ハロゲンフリー、RoHS・REACH規制適合、難燃化、細径化、高速伝送化など様々な技術を開発しています。また、当社は色素増感太陽電池やダイレクトメタノール型燃料電池などの研究開発に取り組んできました。これらは従来の有線給電やバッテリーでは適用しにくかった場所への新たな独立電源として注目を集めています。当社では人と地球にやさしい技術開発にチャレンジを続けていきます。以下に、環境・エネルギー技術のトピックスを3つご紹介します。

田辺 信夫

環境・エネルギー研究所
所長
田辺 信夫

エコ難燃樹脂材料

当社では電線用被覆材で培ってきた難燃化技術を応用してエコ高難燃シート用コンパウンドを開発しています。現在、広く使われている塩ビ樹脂は燃焼時に人体に有害な塩素ガスが発生し、また激しく黒煙を発生させながら燃えるため火災時に問題となりますが、当社が新たに開発したエコ樹脂は塩素や臭素などのハロゲン元素を含まないにもかかわらず高い難燃性を発揮し、燃焼した場合でも黒煙はまったく発生せず、発煙量も非常に小さいという特徴をもちます。さらに本開発品は、低比重で、二酸化炭素排出原単位の低いポリオレフィンをベースとしているため、リサイクル性やCO2削減の観点でも環境に優しく、人体への安全性も高い樹脂となっています。

エコ高難燃コンパウンドを用いたシート

エコ高難燃コンパウンドを用いたシート

燃焼試験の様子

燃焼試験の様子
左:エコ難燃シート
右:塩ビシート

色素増感太陽電池

色素増感太陽電池は植物の光合成に似た電気化学反応を利用して発電する太陽電池です。有害物質を使わない、製造に大きなエネルギーを必要としないなど環境にやさしい技術で製造できます。この太陽電池は曇りや雨の日、あるいは直射日光が当たらない場所などで威力を発揮します。特に屋内光の下では従来のアモルファス・シリコン太陽電池に比較して2倍以上の発電能力をもちます。近年、エネルギー・ハーベスティング(環境発電)と呼ばれる技術が注目されていますが、この太陽電池はまさに光のエネルギー・ハーべスターとしてうってつけです。この太陽電池を利用すれば各種センサやセキュリティーデバイスなどの配線フリー、バッテリーフリー化が実現できるため各種の応用開発が始まっています。

色素増感太陽電池

色素増感太陽電池を応用した
センサノード
(温度、湿度、人感)

ダイレクトメタノール型燃料電池

ダイレクトメタノール型燃料電池(DMFC)は希釈したメタノールを燃料とする燃料電池で、いわゆる発電機として機能します。他の発電機と比較して低ノイズ、小型であることが特長です。また、燃料で比較した際には液体であり希釈していることから安全で取扱性が良く、また長期保管時で劣化しない、低温で凍結しない等の特長があります。当社はDMFCとして世界最高の1kWの出力を可搬可能なサイズで実現し、その結果、DMFCの適用範囲を広げることを可能としました。例えば、震災後など長期に渡る停電が余儀なくされる場合に備えた各種重要設備用非常用発電機や、フォークリフト等の特殊自動車の動力用電源、民間航空機等のサービス用電源などの用途への適用が期待されています。

ダイレクトメタノール型燃料電池

開発した1kWダイレクトメタノール型
燃料電池

研究開発製品紹介

◆太陽光発電設備用直流1500Vケーブル納入開始

コネクタ付DC1500V SOLAR-CQ
コネクタ付DC1500V SOLAR-CQ

従来、メガソーラーなどの太陽光発電施設では、600V低圧ケーブルが一般的に使用されてきました。しかし、近年の大容量化の要求に伴い、取扱者以外の者が立入りできない太陽光発電設備に限り、導体サイズ38mm2までの直流1500Vケーブルの適用が、電気設備技術基準解釈第46条第1項により認められました。

当社は、「DC1500V SOLAR-CQ」として製品化し、昨年より納入を開始しました。本ケーブルは、従来の600V低圧ケーブルよりも細径・コンパクトで施工性が優れています。また、絶縁・シース共に架橋材料を用いているため、耐熱性、耐侯性などに優れ、太陽光発電設備に適した長期信頼性を有したケーブルとなっています。当社のDC1500V SOLAR-CQは、単心タイプだけでなく、単心撚り合せタイプ、2心タイプ、波付鋼管外装付きタイプなど、様々な要望にも対応可能であり、コネクタ付ケーブルでの納入にも対応しています。その優れた特性から、大型メガソーラー施設への本ケーブルの採用が決定し、2013年度上期までに約100km納入予定です。

【DC1500V SOLAR-CQの特長】

  • 600V低圧ケーブルと比べて、送電ロスを低減
  • 高圧ケーブルと比べて、遮へいがなくコンパクト

 

◆国内最大鹿児島七ツ島メガソーラー発電所用ケーブル納入

当社は、発電事業者として出資され建設工事及び運営保守を担う(株)九電工殿を経由し、2013年11月1日より売電を開始した国内最大*の鹿児島七ツ島メガソーラー発電所に多くのケーブルを納入しました。広大な敷地に約29万枚の太陽光パネルを設置するなど工事の省力化・効率化が求められたことから、納入ケーブルの多くは、直接埋設が可能であって白蟻対策にも有効な波付き鋼管がい装(コルゲート:-MAZV)構造を採用頂いています。

当社は電気設備技術基準解釈第46条第1項の改正にあわせ、いち早くDC1,500V SOLAR-CQ 60mm2の製品化に取り組むなど、太陽電池発電設備に適した特長ある製品を取り揃え、各種再生可能エネルギーの普及に貢献していきます。

*2013年11月4日現在稼働中の太陽光発電所において(京セラ殿調べ)

波付き鋼管(コルゲート)がい装ケーブル
波付き鋼管(コルゲート)
がい装ケーブル

【鹿児島七ツ島メガソーラー発電所の概要】

発電能力:太陽光発電システム70MW
所在地:鹿児島県鹿児島市七ツ島2丁目
土地面積:約127万m2
発電電力量:約78,800MWh(予測)、一般家庭の約22,000世帯分に相当、年間約25,000tのCO2 削減に貢献
総投資額:約270億円

【主要納入製品】

製品群 概算数量
高圧ケーブル 23km
低圧ケーブル 18km
光ファイバケーブル 22km
通信・計装ケーブル 25km

 

◆難燃性と低発煙性に優れたエコ電線・ケーブルを開発

エコ電線・ケーブル
エコ電線・ケーブル

当社は、高い難燃性と環境負荷特性を同時に達成したエコ電線・ケーブルを開発しました。電線・ケーブルは身の回りの様々な場所に使用されているため、防災面から難燃性が求められています。特に、ビルや地下街、また乗り物など閉ざされた空間で使用される電線・ケーブルには高い難燃性能が求められています。それと同時に、REACH、RoHS規制をはじめとする化学物質による環境や人体へのリスクを最小化する取り組みの広がりに伴い、高い環境安全性も求められています。

高い難燃性能を達成するために、電線・ケーブルの被覆材には難燃材を添加します。ハロゲン系の難燃材料は難燃性能が高いものの、環境特性や安全面では、燃焼時に有害な物質を発生する可能性や、黒煙を発生しやすいため災害時に視界を妨げる等の問題を生じる可能性があります。また、一般的にリン系の材料は、環境ホルモンのバランスを崩す可能性があるといわれています。

これらの課題の解決のために、金属水和物系難燃剤を添加したケーブルを開発してきましたが、高い難燃性能を得るためには、大量の難燃材を添加する必要がありました。大量の難燃材の添加は、電線・ケーブルの機械強度(耐外傷性、耐引裂性)を低下させることから、これまで、機械特性と難燃特性を同時に満たすことが課題になっていました。

当社は、この度、被覆材の燃焼時に出来る表面の殻を強化することで効果的に燃焼を停止させる技術を開発しました(基本特許取得済み)。この技術によって、難燃材の添加量を劇的に減少させることが可能になり、高い難燃性能と、機械特性を両立しました。また、殻によりガスの発生が抑制されるため、発煙量が格段に少なく、優れた低発煙性も有しています。さらに、被覆材の比重が小さいことから、製品重量の軽減にも貢献します。

この新しいエコ電線・ケーブルを、ビルや住宅、トンネルや地下街などの構内や、自動車や電車、航空機、船舶などに適用することにより、防災や環境負荷の低減に貢献していきます。

【特長】

  • 環境負荷物質を含まない
  • 垂直燃焼試験合格レベルの高い難燃性
  • 燃焼時に有害ガスを発生しない
  • 低発煙性
  • 高い機械特性(耐外傷性能と耐引裂性能)

 

◆光ファイバ融着接続機70R、19R、19Sの発売開始

光ファイバ融着接続機 70R
光ファイバ融着接続機 70R

当社は、光ファイバ施工に求められる工具の本質を追究し「使いやすく、丈夫で、高い信頼性」を実現した新型光ファイバ融着接続機70R、19R及び19Sを7月に販売開始しました。

4月に発売開始した単心コア調心融着接続機70Sに引き続き、70シリーズ融着機以下3機種を発売しました。

【70R、19R及び19Sの主な特長】

 

◆高出力屋内用色素増感型太陽電池モジュールを開発

色素増感太陽電池は、屋内のような拡散光や弱い光の下でも効率よく発電することができる太陽電池です。

当社はこのほど、従来のアモルファス型太陽電池と比べ、屋内光(100~200lux)の下で約2倍の出力が得られる色素増感太陽電池モジュールを開発しました。

この色素増感太陽電池モジュールは、蛍光灯やLEDのような室内照明に適した光吸収特性を持ち、倉庫のような100lux以下の環境から、ショールームのような1000lux以上の環境まで、様々な場所で効率よく電力を得られます。そのため、配線や電池交換なしでセンサなどの小型デバイスを動作させるエネルギーハーベスティング(環境発電)の分野に最適な太陽電池として注目されています。このモジュールは室内光下で温湿度、人感、CO2 濃度センサなどを動作させることが出来ます。現在、当社では評価用サンプルモジュール2種の提供を行っています。

色素増感太陽電池は印刷法で製作するために自由にデザインできるほか、色素や電解液を変更することで、入射光量や光源の種類など、使用環境に合わせて最適な光電変換が出来るモジュールを作ることができます。

当社ではお客様の使用環境に合わせた最適なモジュールを提案し、色素増感太陽電池の利用可能性を広げていきます。

名刺サイズ4直列タイプ

名刺サイズ4直列タイプ

L版写真サイズ8直列タイプ

L版写真サイズ8直列タイプ

 

◆イットリウム系高温超電導 66kV 世界最大級大電流・低損失超電導電力ケーブルの開発

66kV Y系高温超電導ケーブル
66kV Y系高温超電導ケーブル

Y系に代表される高温超電導線は、安価な液体窒素(沸点:77K(-196℃))中でもゼロ抵抗を実現できます。この性質を利用することで送電損失が極めて少ない高温超電導ケーブルの実用化が期待されています。高温超電導ケーブルは、低温超電導に比べ冷却に必要な設備が軽減され、冷却にかかるコストを低減することが可能となります。

2012年度に公益財団法人国際超電導産業技術研究センターと共に独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「イットリウム系超電導電力機器技術開発」(プロジェクトリーダー:塩原融 公益財団法人国際超電導産業技術研究センター理事、超電導工学研究所所長)において66kV大電流・低損失超電導電力ケーブルの開発に成功しています。本ケーブルにはY系超電導線材が用いられ、世界最大級の5kAの通電が可能で、冷却効率を考慮した送電損失は現用の電力ケーブルと比較して1/4以下を実証しています。

これまでY系超電導線材は、性能の高い線材の量産が技術的に困難であるために、これまで5kAも
の大電流を流すことのできる超電導ケーブルの検証試験は実施されていませんでした。

世界最大級の臨界電流(500A/cm以上)を有するY系超電導線材を用いて66kV級の超電導ケーブルによる全長約20mの試験線路を構築し、この試験線路に電力ケーブルとしては最大級である5kAの通電を行い、実環境に近い状態で交流損失を評価し、5kA通電時に1相あたり1W/m以下となることを検証いたしました。5kA通電時の1相あたり1W/m以下という交流損失は、現用の電力ケーブル(代表的な154kV 600MVA級)と比較して冷却効率を考慮した上での送電損失を1/4以下にできるものです。これは超電導電力ケーブルが、電力系統の高効率化の推進に極めて有効であることを実証したものです。

今後も、さらなる高性能線材の開発を推進し、今後進展が期待される産業機器、医療応用等を目指した実用的な高温超電導コイル、マグネット開発、送電効率の向上に加え、電力流通設備の建設においても大幅なコストダウンを実現すると期待されているケーブル基礎技術開発を進め、低炭素社会に貢献していきます。

 

◆世界初、光反射に強い4キロワットファイバレーザを販売開始

4キロワットファイバレーザ
4キロワットファイバレーザ

当社はこのたび、世界で初めて、光反射に強い4キロワットマルチモードファイバレーザの販売を開始しました。

ファイバレーザは光ファイバを発光源とするレーザです。従来のレーザと比較してビーム品質をはじめ、多くの点で優れており、様々な加工分野への普及が急速に進んでいます。なかでも、高出力ファイバレーザは、CO2(炭酸ガス)レーザが不得意な材料に対する加工性も向上し、自動車市場、工作機市場等への採用が始まっています。

しかし、加工対象物から戻ってくる反射光により、ファイバレーザが停止・故障してしまうという問題がありました。本製品は、この問題点を解決すべく耐光反射特性を向上したものです。これは当社の光ファイバ・光部品・高出力半導体レーザ・冷却技術等を集大成した独自の技術成果です。加工安定性や高信頼性をご提供でき、既に多くのお客様からご好評をいただいています。

【特長】

  • 独自の光ファイバ・光部品技術を適用し、耐光反射特性を向上
  • オプトエナジー社の高出力半導体レーザを採用し、最大4kW出力を実現
  • 主要部品内製により、高品質・高信頼性を確保

 

◆EV急速充電器用リードケーブル付きコネクタCEバージョン

コネクタ CEバージョンの外観
コネクタ CEバージョンの外観

高速道路のサービスエリア、ガソリンスタンド等に設置されている短時間で充電が完了する急速充電は、CHAdeMO協議会*1(会長 日産自動車株式会社 志賀俊之氏)が、デファクトスタンダード化を目指して、充電・通信方法やコネクタ性能を規格化し、各国での普及を進めています。当社も、既に発売済みの国内向けモデルに、IEC62196-1規格をパスしたCE認証モデルを追加し、CHAdeMO仕様のデファクト化に貢献していきます。

本製品は、急速充電器用リードケーブル付きコネクタ(CHAdeMO仕様)CE認証モデルです。

*1:CHAdeMO(チャデモ)協議会:電気自動車用急速充電器に関して規格の標準化などに取り組む団体。トヨタ自動車株式会社、日産自動車株式会社、三菱自動車工業株式会社、富士重工業株式会社、東京電力株式会社の5社が幹事会社で、当社も正会員として活動しています。

【特長】

  • コネクタ挿抜とレバー操作の同方向化による誤操作防止
  • コネクタ取扱性を考慮した最適なグリップ角度
  • センターレバー方式による軽いレバー操作力
  • 従来品に比べ、レバー部の耐荷重性、落下衝撃性の機械的強度を向上

 

◆超細径漏洩同軸ケーブル(ZLCX-2.5D)の開発

近距離無線通信を主な用途とした世界で最も細径・軽量である超細径漏洩同軸ケーブルZLCX-2.5Dを開発しました*1

ZLCX-2.5Dは外径約4mm、質量21g/mと細径・軽量であるため、可とう性が良好で、小さな隙間においても簡単に配線、設置することが可能です。また、これまでのLCXでは難しかった垂直方向への放射を新技術により実現したことで、端末部の不感地帯が解消出来ます。このZLCX-2.5Dを設置することによって、セキュリティの要する会議室の机の上だけに無線LAN環境を構築することや、ICT機器内の狭い空間に存在するスイッチやセンサ類の有線配線を無くし、無線化することが可能となります。

*1:2014年2月現在 当社調べ

【ZLCX-2.5Dの構造】

ZLCX-2.5Dの構造

研究所

光電子技術研究所(千葉/佐倉)

光電子技術研究所
(千葉/佐倉)

環境・エネルギー研究所(千葉/佐倉)

環境・エネルギー研究所
(千葉/佐倉)

光ケーブルシステム開発センター(千葉/佐倉)

光ケーブルシステム開発センター
(千葉/佐倉)

エレクトロニクス・自動車電装開発センター(千葉/佐倉)

エレクトロニクス・自動車電装開発センター
(千葉/佐倉)

ケーブル・機器開発センター(三重/鈴鹿)

ケーブル・機器開発センター
(三重/鈴鹿)