フジクラ技報一覧

No.115 2008年12月
論文記事
1つの放射エレメントで構成した携帯電話用マルチバンドアンテナ
千葉大学 | : | 伊藤 公一 |
光電子技術研究所 | : | 官 寧 古屋 洋高 ドゥローン ダビッド 姫野 邦治 |
携帯電話においてコンパクトかつ多周波で動作するアンテナが求められている.それに加えて柔軟性,軽量,単純な構造,低コストといった側面も実際の設計では重要な要素になる.本稿では,GSM帯(880-960 MHz),DCS帯(1710-1880 MHz),PCS帯(1850-1990 MHz),UMTS帯(1920-2170 MHz)の4つのバンドをカバーする新しいタイプのアンテナについて報告する.本アンテナは単純な構造を有し,ワイヤ,板金,薄いフィルムなどで作製することが可能である.試作アンテナを評価したところ,GSM/DCS/PCS/UMTS帯をカバーすることができ,各々の周波数でほぼ無指向な放射指向性が得られた.
Yb添加ファイバにおけるフォトダークニング現象
光電子技術研究所 | : |
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イッテルビウム(Yb)添加ファイバにおけるフォトダークニング現象は,Yb添加ファイバレーザにおける実用上の問題となっているにも関わらず,その発現メカニズムの詳細に関して未だ明らかになっていない.そこで,Yb添加ファイバと母材サンプルを用いて各種測定を行い,フォトダークニングによる損失増加の原因について検討した.その結果,ファイバへの励起光入射によるOxygen Hole Center(Al-OHC)の生成が損失増加の要因となっていることを明らかにした.
XFP型10 Gbit/s光トランシーバ
光電子回路開発センター | : | 堀尾 丈夫 高橋 智和 横山 修司 梅沢 正彰 伊藤 徹 |
長距離伝送用DWDM XFP型光トランシーバを開発した.業界標準であるXFP MSAに準拠し,9.95~11.1 Gbit/sで80 kmの伝送が可能である.10 Gbit/sを80 km伝送するトランシーバとして,最も小型であり,伝送装置の小型化へのキーデバイスとなることが期待されている.当社が開発したXFP型トランシーバの設計,機能および特性について紹介する.
光トランシーバの実装設計技術
光電子回路開発センター | : | 仙田 実 岡部 進 |
光トランシーバの高性能化,小型化の要求にともない,実装設計も複雑化してきている.設計効率向上のためにはCAD, CAEの役割が重要である.われわれの部門(光モジュール開発部共通技術開発グループ)において,3次元CAD,2次元CAD,PCB CAD,熱/応力シミュレーションのデータを互換化することにより統合的な設計環境を構築した.これにより,設計効率の向上,製品の品質向上を実現した.
CAD:Computer Aided Design CAE:Computer Aided Engineering PCB:Printed Circuit Board
光インタコネクション用超高密度光コネクタ
光ケーブルシステム開発センター | : | 佐場野 多賀彦 太田 達哉 西村 顕人 田中 利行 |
近年,伝送データの大容量化への必要性の高まりを受け,ブロードバンドルータ・サーバ等の伝送システムへの光インタコネクション技術が普及し始めている.システム内には電子素子・電気コネクタが高密度実装されているため,光インタコネクションにおける光コネクタの実装密度は特に重要なパラメータとなる.今回,従来の多心光コネクタに準拠した寸法で,超高密度な光コネクタを開発したので報告する.
耐放射線性ケーブル
ケーブル・機器開発センター | : | 右近 誠一 石田 克義 高野 一彦 |
メタルケーブル事業部 | : | 古郡 永喜 |
日本原子力研究開発機構 | : | 草野 譲一 |
大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構(KEK)と独立行政法人日本原子力研究開発機構(JAEA)は,茨城県東海村に大強度陽子加速器施設(J-PARC)の建設を共同で進めている.一般的に原子力関連施設の放射線環境で使用されるケーブルは,放射線によるケーブル被覆材料の劣化が起こり,被覆材料の欠落による絶縁効果をはじめとするケーブル保護機能の低下や,難燃性の低下による火災時の延焼等の恐れがある.そのため,放射線環境に晒されるケーブルは,定期的に交換して機能を維持・管理する必要がある.著者ら開発グループは,日本原子力研究開発機構と共同研究契約を締結して原子力関連施設で用いるケーブルの長寿命化の検討を行った.その結果,光安定剤と紫外線吸収剤を組み合わせて照射後の機械特性および難燃性を改善した耐放射線性に優れた材料を開発した.現用のノンハロゲン難燃シースは積算吸収線量0.5 MGyの照射により著しい機械特性の低下が生じた.これに対して,開発した耐放射線性シースではその5倍以上の2.5 MGy照射後においても自己径曲げに相当する破断伸び50%以上を維持した.さらにこのシースを被覆したケーブルは,2.5 MGy照射後の4倍径曲げ試験およびJIS C 3521垂直トレイ燃焼試験に合格してすべての開発目標を達成した.本ケーブルは,J-PARCに採用された.
メンブレンへの新実装技術
電子電装開発センター | : | 佐川 智春 久米 篤 今井 隆之 |
プリント回路事業部 | : | 尾野 靖 |
材料技術研究所 | : | 中司 徹 |
デジタル家電製品の小型化により,主に操作スイッチ用の回路基板などに使用されるメンブレンも小さくなってきており,それにともない,部品実装エリアの省スペース化が求められている.従来,メンブレンの部品実装では,部品の接着強度を上げるために樹脂によって部品を封止してきたが,この封止樹脂が実装エリアの省スペース化を阻害していた.そのため,封止用樹脂を使用しない実装工法を開発し,量産への適用を開始した.
微細回路形成技術
電子電装開発センター | : | 池田 真挙 中谷 祐介 関 善仁 岩崎 庄治 |
フレキシブルプリント配線板(FPC)は,電子機器の薄型・軽量・小型・高機能化にともない,パターンの微細化が進んでいる.FPCの回路形成方法は,銅箔をエッチングして回路を形成するサブトラクティブ法と,電解銅めっきで回路を形成するセミアディティブ法がある.本稿では従来の回路形成技術であるサブトラクティブ法と新規のセミアディティブ法における,微細回路形成技術の技術動向と今後の方向性について述べる.
基板ジョイントボックス
電子電装開発センター | : | 廣永 亮平 竹村 安男 瀬尾 右文 |
自動車電装事業部 | : | 井出 剛久 |
珠海藤倉電装有限公司 | : | 長谷川 健 |
自動車に搭載する電子装備の増加により,ワイヤハーネスの回路数は増加の一途を辿っている.その結果,各装置への電源分配・回路保護の機能を有するジョイントボックスは,大型化や重量増となる傾向にある.われわれは,ジョイントボックスの小型軽量化を目的として,より多くの回路を内蔵でき回路密度の向上がはかれるリジッドプリント配線板を使用したジョイントボックスの開発を行った.
RE123薄膜超電導線材
材料技術研究所 | : | 五十嵐 光則 田下 千晴 林田 知朗 花田 康 羽生 智 富士 広 朽網 寛 柿本 一臣 飯島 康裕 齊藤 隆 |
RE123超電導体は,液体窒素温度(77 K)でも超電導状態が発現し,磁場中でも優れた通電特性を示す物質である.このため様々な電力機器への応用が期待され,それらに向けた線材開発が世界中で活発に進められている.当社では高度に結晶が配向した薄膜の線材開発を行っている.装置の大型化と各工程での様々な工夫により,2008年2月には全工程で5 m/h以上の製造速度で500 m長において300 A以上通電可能な長尺線材の開発に成功した.特性は世界最高であり,実用レベルに達した.
間接電気伝導度検出-分配クロマトグラフィーによるアルコール類の定量分析
材料技術研究所 | : | 市川 進矢 宮田 裕之 |
アルコール類の定量分析は,電気化学検出-分配クロマトグラフィーによる分析が知られている.しかし,高速液体クロマトグラフ(HPLC)やイオンクロマトグラフ(IC)の標準的な検出器は,紫外可視検出器(UV-Vis),示差屈折率検出器(RI)および電気伝導度検出器(COND)であり,新たに検出器を増設する必要がある.そこで本研究では,電気伝導度を持つ溶離液に対し,分析対象のアルコール類が電気伝導度をほとんど持たないことから,イオンクロマトグラフの標準的な検出器である電気伝導度検出器において負のピークとなって出現することを利用した,間接電気伝導度検出-分配クロマトグラフィーによるアルコール類の定量分析の検討を行った.本分析における検量線は,0.5mg/L~100 %の範囲で相関係数(r)0.9967~0.9999 の直線となり,非常に広範囲にわたる定量分析が可能であった.また本手法では,アルコール類と同時に,有機酸や糖類,さらに水の簡易定量分析が可能であることが確認された.
磁気インピーダンス効果を応用した高感度磁気センサ
秋田県産業技術総合研究センター高度技術研究所(AIT) | : | 丹 健二 |
電子デバイス研究所 | : | 大森 賢一 糸井 和久 長洲 勝文 上道 雄介 相沢 卓也 |
磁気インピーダンス効果(Magneto-Impedance Effect)素子は,小型化,高感度化が可能な磁気センサとして注目されている.しかしながら,正負の磁界に対して対称な特性を示すため,ゼロ磁界付近に動作点を有する磁界センサとして利用するためには,バイアス磁界が必要となる.われわれは,バイアス磁界を印加するための薄膜永久磁石を集積化した薄膜型磁気インピーダンス効果素子を試作・評価し,ゼロ磁界付近で感度を有するセンサが実現可能であることを確認した.また,得られるバイアス磁界の大きさは,薄膜永久磁石の着磁方向に依存することを明らかにし,従来,永久磁石を用いた素子では困難であった素子作製後のバイアス磁界の調整が着磁方向をコントロールすることにより可能であることを実証した.