フジクラ技報

フジクラ技報一覧

No.106 2004年4月

No.106 2004年4月

アジア諸国では通信インフラの急速な整備が行われており,基幹線路における光ファイバケーブルの接続には,極低損失が得られるコア直視型融着接接続機が主に使用されています.

このたびフジクラでは,小型軽量化/高速化/操作性向上を実現し,不慣れな作業者でも短時間で高品質の融着接続が行える新型コア直視型融着接続機FSM-50Sを開発しました.

本融着接続機は寸法150mm角,質量2.8kgと携行性に優れ,架空や狭い屋内での融着接続作業も可能です.スロットイン型内蔵バッテリによる電源供給も可能であり,1回の充電で光ファイバ200心の融着接続と熱収縮スリーブによる加熱補強が行えます.また,融着接続に要する時間はわずか9秒であり,加熱補強も35秒で終了します.不慣れな作業者でも高品質の接続ができる容易な操作性と失敗接続防止機能を有し,融着接続作業の効率化と接続の高品質化を実現することができます.

論文記事

次世代高速通信用分散補償ファイバグレーティング

光電子技術研究所 坂元 明
木村 直樹
奥出 聡

伝送速度が40Gbit/sを超える次世代光通信システムでは,伝送路での波長分散変化を動的に補償するための可変分散補償器が必須となる.これを実現するためにわれわれは分散補償ファイバグレーティングの開発を進めてきた.

今回,製造プロセスの改善により,従来問題となっていた群遅延時間リップルを±3ps以下に抑えることに成功し,40Gbit/s用に適用可能な光学特性を実現した.また,ひずみ分布を用いた独自の分散量可変機構により,分散量可変範囲±200〜1,500ps/nmを実現し,次世代システムに必要とされる可変範囲を確認したので報告する.

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低OH吸収ピークシングルモード光ファイバ

光電子技術研究所 山田 成敏
後藤 孝和
藤巻 宗久
原田 光一

水酸基(OH−)による吸収損失を極限まで低減した低OH吸収ピークシングルモード光ファイバを開発した.この光ファイバは,従来のシングルモード光ファイバで使用されるOバンド(1,310nmウィンドウ)またはCバンドおよびLバンド(1,530−1,625nm)に加えて,Eバンド(1,360−1,460nm)の波長帯での使用を可能にする.この光ファイバは急成長するメトロポリタンおよびアクセス系ネットワーク用に適している.

本稿では,当社で開発した低OH吸収ピークシングルモード光ファイバの特性について報告する.

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10Gb/s伝送用マルチモード光ファイバ

光電子技術研究所 官 寧
竹永 勝宏
松尾 昌一郎
姫野 邦治
光ファイバ事業部 中山 真一

0.85µm帯において10Gb/sの光信号を300m〜550m伝送可能なGI(Graded-Index)型マルチモードファイバFutureGuide®-MM10Gを開発した.本ファイバはIEEE802.3aeにおける10GBASE-Sをサポート可能である.本ファイバの帯域仕様は非常に厳しく,また帯域保証のためのDMD(Differential Mode Delay)測定が必要である.われわれは正確な理論モデルに基づいてファイバの設計を行い,新たにDMD測定装置も開発した.本報では,10Gb/s伝送用GIファイバの評価および設計手法を紹介し,製造したファイバの特性および伝送実験の結果について報告する.

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新型コア直視型融着接続機FSM-50S

光機器事業部 齊藤 茂
佐々木 一美
高橋 建次
大澤 孝治
大谷 拓
S.Chumpol

海外における中長距離光伝送路の光ファイバケーブルの接続は,極低接続損失が得られるコア直視型融着接続機を用いた融着接続が依然として主流である.コア直視型融着接続機に要求されるのは,接続損失の低減のみならず,作業現場を選ばない小型軽量化,短時間で大量の接続が行える高速接続性能,非熟練者でも高品質の接続が行える容易な操作性,失敗接続の防止機能である.これらの要求を満足した世界最速/最小/最軽量の新型コア直視型融着接続機FSM-50Sを開発した

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低損失24心MPOコネクタ

光機器事業部 藤原 邦彦
太田 達哉
加藤 誠司
林 幸生
古川 洋

Metro系を始めとする公衆回線網の高速大容量化にともない,伝送装置等の架内,機器内配線の高密度化が進められており,より高密度の実装を可能とする多心光コネクタの需要が高まりつつある.当社では既に単心光コネクタ並の接続損失を有する4〜12心のMPOコネクタを製品化している.今回,さらに高密度実装が可能な24心MTコネクタの低損失化を実現し,これを利用した低損失24心MPOコネクタ(最大接続損失0.5dB以下)を開発し量産化したので報告する.

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架空送電線用特殊防食剤

電力技術開発センタ 浅野 祐二
日田 貴紀
武井 祐史

送電線はさまざまな環境を通過しており,きわめて厳しい腐食環境におかれている線路もある.従来より電線の腐食対策の一つとして,電線の素線間隙間に防食グリースを充填した防食電線が用いられてきた.当社ではグリースの成分組成を見直し,防食性能を大きく向上させたグリースを開発した.ここでは,このグリースを充填した特殊防食電線の評価試験を行った結果,優れた耐食性が確認できたことを報告する.

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台中火力345kV CVケーブルおよび付属品の型式・PQ長期試験

株式会社ビスキャス 平澤 隆行
堀口 規昭
末次 將寛
池田 秀樹
電力事業部 足立 宇弘
岩下 昭二
國村 智
金子 智
藤倉エネシス株式会社 藤井 誠治
丹 正之
電力技術開発センタ 新延 洋
大野 光一
水野 健彦

われわれは台湾電力/台中火力発電所向け345kV CVケーブル3回線を受注し,製造・出荷・現地工事を進めている.われわれの納入する製品の性能検証のため,独立試験機関である電力中央研究所において型式試験とPQ(Pre-Qualification)長期試験を受検し,無事合格した.これらの試験の概要について報告する.

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楕円関数の電力ケーブル問題への応用(第一報)
−CVケーブル押出し半導電層抵抗率の新しい測定法への応用−

電力技術開発センタ 渡辺 和夫

これまで物理や工学の分野でいろいろ応用されてきたにもかかわらず,電力ケーブルの分野では敬遠されてきた楕円関数(広義には楕円積分も含む)の内,Legerdre-Jacobiの第一種完全楕円積分とJacobi楕円関数を用いた等角写像の手法とその位相幾何学的側面を活用し,CVケーブル押出し外部半導電層の抵抗率ρを求める新しい測定方法を見出した.これは,ケーブルコアの状態で非破壊で,かつコアの端部に触れるのみで測定できる簡便な方法である.

さらに,微分・位相幾何学の観点から考察を加え,この測定法を非回転対称体に拡張し,扇形CVケーブル半導電層の新しいρ測定法を提案した.なお,本文のρの導出過程は,二次元として扱えるいろいろな分野,たとえば,電流界,静電界,熱伝導,流体力学の計算に活用できる.特に,最近注目されてきた薄膜工学の分野への応用も期待されよう.

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CTを用いた活線下部分放電検出装置

電力技術開発センタ 室伏 辰也
浦辺 裕二
産業電線事業部 小川 達也
新元 孝

期待寿命を迎えた設備をさらに限界まで使うことが指向されている今日,ケーブルについても同様な要求があり,その支えとなる絶縁診断技術の高度化・普遍化が強く望まれている.そこで,最終的にはあらゆる劣化,欠陥,異常に直結する部分放電を検出する装置の開発に取り組んだ結果,高感度検出,価格,簡便性において当初の目標をほぼ達成する装置を開発することができた.特に5pC以下の高感度を有していることで実線路での使用のみならず,製品の出荷検査,研究開発等の用途にも活用できるものと期待される.

本報では,検出原理を中心に開発装置の概要を紹介する.

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ベーパチャンバ設計用数値シミュレーションコード

熊本大学 小糸 康志
井村 英昭
鳥居 修一
サーマルテック事業部 望月 正孝
フジクラタイランド 斎藤 祐士

パソコンやワークステーション,サーバ等に搭載されているMPU(microprocessor unit)の高効率冷却を目的に,新型熱拡散板として開発された“ベーパチャンバ(平板型ヒートパイプ)”について,その内部で生じている熱流動現象を解析し,現象解析に基づいた設計資料を提出するため,数値シミュレーションコードを開発した.本コードを用いることにより,任意の設計条件におけるベーパチャンバ内の熱流動特性を明らかにすることができた.また,実験結果との比較によって,本コードによるシミュレーション結果の妥当性を確認した.

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高速伝送用溶接型コネクタ

電子電装開発センタ 橘 ゆう子
芦田 茂
松浦 克久
桑原 浩一
小笠原 孝
河野 泰嗣
電子材料事業部 安部 知明
材料技術研究所 山田 剛志
フジクラタイランド社 篠原 知幸
中村 肇
第一電子工業株式会社 山田 昭男

IBTA(InfiniBand Trade Association)が策定した,次世代のインタフェース規格であるInfiniBandに準拠し,高速でデータを送受信することが可能な溶接型コネクタと接続技術を開発した.伝送速度2.5Gbps(1.25GHz)のもとでインピーダンスの整合性,近端漏話特性が非常に優れている.将来的には伝送速度10Gbpsにも対応可能なコネクタとして期待できる.

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アディティブ法ビルドアップ配線板

電子電装開発センタ 竹中 尚一
伊藤 彰二
橋場 浩樹
電子デバイス研究所 本戸 孝治
中尾 知

ファイン回路パターンを有するビルドアッププリント配線板の開発をアディティブ法で行った.アディティブ法はサブトラクティブ法よりもファインパターンの形成には有効な手法であった.このような技術は,今後ますます加速する電子機器の高機能化,高密度化に対応した実装回路を提供する多層プリント配線板への応用が期待できる.

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透明導電ガラス

材料技術研究所 後藤 謙次
川島 卓也
田辺 信夫

透明導電膜のITO(スズドープ酸化インジウム)は室温では高い透明性や導電性を有するが,耐熱特性に劣るため300℃を超える温度での使用は不可能であった.色素増感型太陽電池(DSC)は,その製造工程において透明電極に400℃以上の熱処理を施すため,導電性の高いITO膜を窓側透明電極として採用することができなかった.われわれはITOを耐熱性,耐薬品性に優れたFTO(フッ素ドープ酸化スズ)と複合化することにより,耐熱性と導電性を両立するFTO/ITO膜を,スプレー熱分解法を用いて開発した.FTO/ITO膜は優れた耐熱特性を有しており,これを窓用電極材として組み込んだDSCは変換効率を大きく向上できることが判明した.本報告では開発した複合膜の基本特性と,DSCに組み込んだときの変換効率への効果について記す.

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フラットハーネス用圧接防水コネクタ

電子電装開発センタ 井出 剛久
﨑山 興治
自動車電装事業部 小杉 秀之
長谷川 健
土肥 昭彦
望月 淳
真子 大介
石川 幸毅

自動車業界では部品類を統合するモジュール生産方式の導入が増加しており,われわれはモジュールに対応する新しい配線システムを開発した.本ワイヤハーネスに使用されるコネクタは,ホットメルトを利用した圧接防水タイプである.今回,極性の低いゼロハロゲン電線被覆材料と極性の高いハウジング材料の両方によく接着するホットメルト材料を開発し,エンジンルームの使用環境に耐えうる信頼性の高い圧接防水コネクタを開発したので報告する.

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