フジクラ技報一覧

No.130 2017年6月
論文記事
ノンメタリック架空配線光ケーブル
エネルギー・情報通信カンパニー 光ケーブルシステム事業部 | : | 多 木 剛 鯰 江 彰 大 里 健 |
Fiber To The Home(FTTH)網を経済的かつ効率的に構築する一つの方法として,電力柱に光ケーブルを架空布設することが知られている.今回,電力ケーブルに近接・平行した架空布設が可能となるノンメタリック材料のみで構成された光ケーブルを用いた架空FTTHソリューションを提案する.今回,われわれは中間後分岐性に優れるノンメタリック高密度架空配線光ケーブルと,現場組立光コネクタ整合性のあるノンメタリックドロップ光ケーブルを開発した.また,ノンメタリック高密度架空配線光ケーブルは48心までの多心化を実現した.本稿では,これらのノンメタリック光ケーブルについて紹介する.
シリコン光導波路との結合に適した細径コア光ファイバ
先端技術総合研究所 | : | 平 川 圭 祐 小 田 拓 弥 市 井 健太郎 愛 川 和 彦 |
光通信用デバイスの小型化・高集積化に貢献する技術としてシリコンフォトニクスが注目されている.シリコン導波路のスポットサイズは光ファイバに比べて非常に小さく,スポットサイズの不整合による結合損失が課題である.我々は,シリコン導波路と汎用光ファイバの間に挿入するMFD 4μmの細径コアファイバの開発を行った.本ファイバを用いることにより,シリコン導波路との結合効率を改善しつつ,汎用光ファイバとの接続において0.2dBを下回る低損失な接続を実現した.
低駆動電圧シリコンDP-IQ光変調器
先端技術総合研究所 | : | 五 井 一 宏 石 倉 徳 洋 朱 海 柯 小 川 憲 介 |
国立研究開発法人 情報通信研究機構 | : | 吉 田 悠 来 |
光産業創成大学院大学 | : | 北 山 研 一 |
シンガポール マイクロエレクトロニクス研究所 | : | Tsung-Yang Liow Xiaoguang Tu Guo-Qiang Lo Dim-Lee Kwong |
シリコンを主材料として光デバイスを構成するシリコンフォトニクスは,様々な光通信デバイスに飛躍的な小型化・低コスト化をもたらす革新的技術として注目されている.当社ではこれまで,長距離通信網で普及の進むデジタルコヒーレント通信に対応するシリコンDP-IQ光変調器の開発を進めてきた.本稿では,一層高まる省電力化の要求に応じて駆動電圧を低減した低駆動電圧シリコンDP-IQ光変調器について報告する.新たに開発した位相変調部は,シリコン光導波路内部のpn接合を垂直方向に形成することで変調効率を高め,代表的な指標であるVπで2.5Vを達成した.また,偏波多重導波路はCバンド及びLバンドを含む広い波長帯域にわたり挿入損失0.5dB以下の良好な特性を備える.作製した光変調器パッケージを用いて,DP-16/32QAMフォーマットによる高速変調への対応を確認し,商用で用いられる128 Gb/s DP-QPSKフォーマットによる2000 kmのSMF伝送を実証した.
3kWシングルモードYbファイバレーザの特性と加工実証
先端技術総合研究所 | : | 生 駒 晋 也 NGUYEN Huy Khanh 内 山 圭 祐 柏 木 正 浩 島 研 介 |
高出力かつ優れたビーム品質をもつシングルモードファイバレーザにおいて,システムへ導入する際の設計自由度,すなわち十分なデリバリファイバ長と安定した出力光パワーが重要となる.今回,20mのデリバリファイバ長を有しながら,3kW出力時においても誘導ラマン散乱(SRS)が十分に抑制されたシングルモードファイバレーザを実現した.また,本シングルモードファイバレーザを用いて,高反射率で加工が困難である無酸素銅に対し加工を行い,SRSによるストークス光の発生を抑制することで出力光パワーが不安定にならず,高品質な加工ができることを確認した.
人工ピン入りイットリウム系超電導線材
先端技術総合研究所 | : | 吉 田 朋 武 藤 翔 吾 平 田 渉 足 立 泰 藤 田 真 司 五十嵐 光 則 柿 本 一 臣 飯 島 康 裕 直 江 邦 浩 |
国立大学法人東北大学 | : | 淡 路 智 |
イットリウム(Y)系超電導線材はヘリウムレスの超電導材料として知られており,MRIや加速器といった,磁場中で高い臨界電流を流すことが必要とされるさまざまな機器への応用が期待されている.今回,磁場中の臨界電流を改善することが知られている人工ピンを導入したY系超電導線材をホットウォールPLD方式を用いて作製したので,その概要について報告する.
シリコーンモジュール形差込式耐塩端末
ケーブル・機器開発センター | : | 杉 谷 佑 斗 富 田 一 成 高 原 克 二 |
エネルギー・情報通信カンパニー | : | 郭 宇 高 橋 明 多 田 博 幸 |
一般に汚損地区では碍子形耐塩端末が使用されているが,これに代わる端末として,シリコーンモジュール形差込式耐塩端末を開発した.モジュール形は,端末外被傘部が複数パーツに分かれており,使用電圧・使用環境によって傘枚数を任意に変更できること特長としている.また傘下面にヒダ形状を設けることで超重汚損地区までの対応を実現した.開発端末は評価試験を通して十分な特性を持っていることを確認した.
素粒子実験向け微細電極フォイル
プリント回路事業部開発部 | : | 荒 井 大 輔 岩 村 昌 浩 |
近年のスマートフォンに代表されるように各種電子機器の小型化,高機能化が進んでいる.これに伴い,その配線材であるフレキシブルプリント配線板(FPC)においても,回路の微細化や高密度化など技術的な進歩を遂げてきた.我々はこれまで培われてきたFPC製造技術を応用し,新たな製品の開発にも取り組んでいる.本稿では,その一例として素粒子実験用測定器に使用される微細電極フォイルの開発を紹介する.
2チップスタックWABEパッケージ
新規事業推進センター | : | 佐 藤 隼 介 宗 像 浩 次 佐 藤 正 和 板 橋 敦 稲 葉 正 俊 |
ウェアラブルデバイスや医療機器の分野では,小型・高機能な電子デバイスが常に求められている.その要求にこたえるため,われわれは小型の半導体パッケージであるWABE Package®を開発してきた.これは,薄厚の多層積層FPCに小型・薄厚のWLPを1つ内蔵した部品内蔵基板である.さらに今回,われわれはWLPを基板厚さ方向に2チップを重ねて内蔵するという技術を世界で初めて実用化することで,小型かつさらに高機能な「2チップスタックWABEパッケージ」を作製することに成功した.
携帯型電子機器用超薄型高性能ヒートパイプ冷却モジュール
サーマルテック事業部 | : | Mohammad Shahed Ahamed 齋 藤 祐 士 益 子 耕 一 |
近年,ヒートパイプは,スマートフォン,タブレットPC,デジタルカメラ等の携帯電子機器に広く使用されている.技術の進歩に伴い,これらの機器は,操作性の良い様々な機能やアプリケーションを備えているが,快適に動作ささせるには超高速クロックスピードのプロセッサーが必要となる.一般的に,クロックスピードが速いと大量の熱が発生し,プロセッサー表面のホットスポットを冷却するため,熱を移動させ,拡散する必要がある.しかし,上述のような電子機器を十分に冷却する事は,密閉空間に熱源が集中しているため至難の業である.この課題に対し,我々は,超薄型ヒートパイプを開発した.このヒートパイプは,「センターファイバーウィック」と呼ばれる特殊ファイバーウィック構造体を持ち,この両側に十分な蒸気が流れるスペースを持つ.これにより厚さ1mm以下でも作動する.我々は,スマートフォンの熱問題を解決するため,この超薄型ヒートパイプと金属板から成る冷却モジュールを開発した.開発した冷却モジュールの熱特性を把握するために,本研究では,超薄型ヒートパイプの幅,厚さ,および有効長を変えた実験を行った.さらに,冷却モジュール内に使用するヒートパイプの本数の違いによる熱特性への影響を調べた.
磁気冷凍サイクル高速化における線状MCMの影響
先端技術総合研究所 | : | 近 藤 正 裕 上 野 晃 太 竹 内 勝 彦 野 村 隆次郎 木 嵜 剛 志 |
環境に優しい次世代ヒートポンプとして,磁気冷凍技術に着目し開発を進めている.従来の磁気ヒートポンプの冷凍出力向上の課題に対し,磁気冷凍サイクルを高速にすることで高出力化を目指している.当社のコア技術の一つである伸線技術により製作した世界最小径の細線状の磁気作業物質(MCM)を使用し,サイクル周波数10Hzで動作させた結果,低磁場としては世界トップレベルの出力密度を達成した.今回,この概要を報告する.