光ファイバ
IoT(Internet of Things)の進化を支える情報通信インフラの実現には、既存の伝送容量限界を超える光通信網の確立が必要不可欠です。これらのなかで光ファイバは中心的な役割を果たします。NTTが提唱するIOWN構想においては、「低消費電力」、「大容量・高品質」、「低遅延」の3つについて目標性能を掲げ、さまざまな新技術の導入が検討されています。
IOWN構想の実現にむけた当社の取り組みとして、当社の独自技術である12心間欠固定型光ファイバリボンSpider Web Ribbon®を実装した世界最高密度の多心光ファイバケーブルをリリースしており、さらにこの技術を進化させ、標準的な被覆外径よりも細い200μmファイバを実装した超多心光ファイバケーブルの開発も進めています。
さらなる高密度化を実現するための研究開発として、1本の光ファイバクラッドに複数のコアを配置することで高密度化が可能となるマルチコア光ファイバの開発を進めています。マルチコアファイバの早期の実用化を見据え、現在使用されている標準の光ファイバと同じ細さ(125μm)に、既存のシングルモードファイバと光学的に互換な4つのコアを配置したマルチコア光ファイバを中心に研究開発を進めています。


光コネクタ
光コネクタは、光ファイバ同士を精密に軸合わせし、端面を近接または接触させて、低損失・高信頼の繰返し接続を実現する製品です。光コネクタは、単心ファイバ接続及び多心一括接続(図1)へ適用され、それぞれに複数の接続方式があります。フジクラは、各接続方式におけるコア技術を有し、お客様の用途に応じた多様なソリューションを提供しています。PC接続は光ファイバ端面同士を物理的に接触する方式であり、フジクラは高精度研磨技術や精密樹脂成型技術等により、光コネクタの低損失化・多心化を進展させてきました。PC接続に加え、屈折率整合材や融着機による接続を組み合わせた、現場組立型光コネクタ(図2)ソリューションも提供しています。また、近年ハイパースケールデータセンタ(HSDC)におけるデータトラフィック量の増大に伴う光コネクタや光配線ソリューションの高密度化が注目されています。フジクラはその解決策として小型高密度のキーコンポーネントであるMMCフェルール・コネクタ(図3)および配線ソリューションをこれらの新分野へ展開しています。加えて、現在80umクラッドファイバ対応製品を開発中でさらなる小型高密度化を実現していきます。また、さらなる高密度化を実現可能な、1本のファイバに複数の信号の経路であるコアを複数有するマルチコアファイバをアセンブルした多心光コネクタである、MCF-MPOコネクタ(図4)の開発にも取り組んでいます。

図1:単心ファイバ及び多心一括 光コネクタ

図2:現場組立コネクタの例(左:融着型MPOコネクタ、右:屈折率整合型単心コネクタ)

図3:MMC vs MPOコネクタ比較

図4:マルチコアファイバ(左)とMCF-MPOコネクタ(右)
光ファイバ融着接続機
光ファイバの被覆除去、切断、融着接続を行う装置の研究開発に取り組んでいます。光ファイバのコア位置を高精度に測定し、精密軸合わせ機構で2本の光ファイバをサブミクロンレベルで調心し、準コロナ放電あるいはCO2レーザで融着接続を行います。タングステン電極による準コロナ放電を利用した融着接続機は小型化が可能であり、主に通信用光ファイバの接続に使用されます。一方、CO2レーザを利用した光ファイバ融着接続機は、光ファイバへのタングステンの付着がなく、主に特殊光ファイバの加工に使用されます。 接続のみではなく、先端レンズ加工や光結合器製作においてCO2レーザの特性が生かされます。メカトロニクス技術を駆使した本装置は世界トップシェアの地位を築いています。




高密度光ケーブル
- ①既存の布設工法を用いながら既設管路への敷設心数の増加
- ②SWR®を用いたリボンの一括融着接続による接続時間の短縮化
- ③屋外から構内に至る一気通貫での敷設による接続点の減少


超細径高密度型WTC®

空気圧送型WTC®(AB-WTC™)
極細同軸
極細同軸ケーブルアセンブリ
近年、極細同軸ケーブルは、モバイル機器やウェアラブル機器、ドローンなど様々な用途で用いられ、非常に限られたスペース内で高屈曲・捻回特性を有した接続やさらに細径でノイズに強く高速な信号を伝送するニーズがあります。
ケーブル内部構造の改良などにより、これらのニーズを満足する機器内配線用極細同軸ケーブル及びアセンブリの開発を進めています。
右写真は、高屈曲極細同軸ケーブルの例です。中心導体の材質・構成を変更することで従来型と比較して10倍以上の屈曲性能を得ることが出来ました。目的の屈曲性能に合わせたケーブル構造の設計・製造が可能です。


センサ
圧力センサ
圧力センサは、その名の通り気体の圧力を計測するためのセンサです。圧力センサは圧力スイッチ等の産業機器や、血圧計等の医療機器、民生品などの幅広い分野で使われています。
現在は、ピエゾ抵抗型圧力センサと、信号処理ICを組み合わせた高精度な圧力センサの開定技術を生かし、精度向上と高い出力安定性を実現しております。
圧力レンジは、微圧領域の2kPaから高圧領域である1MPaまで、また出力はアナログ出力、デジタル出力(I2CTM、SPI)および、様々なパッケージ形状を取り揃えております。
顧客の電子機器の小型化、薄型化に寄与できるよう、2024年には4×4mmの小型圧力センサ(AT7)をリリースしております。
今後、さらに多様化する市場のニーズに応えるため、製品ラインナップの強化を行ってまいります。
酸素センサ
酸素センサは、酸素濃度を計測するためのセンサです。酸素センサは酸素濃縮器やインキュベーター等の医療機器、窒素発生装置等の産業機器など、幅広い分野で使われています。
酸素センサは、高温で酸素イオン伝導性を持つジルコニア固体電解質を用いた限界電流方式です。当社が持つセラミック成型技術、パッケージング技術、組み立て・測定技術を生かし、高精度な酸素センサを製造しております。



ミリ波
動画配信やVR/ARを活用した各種アプリケーションを高品質に提供するため、第5世代移動通信システム(5G )の導入が進んでいます。5Gはモバイルネットワークを一層高速・大容量化するほか、高信頼・超低遅延通信や多数同時接続を可能にします。これらの特徴により、日常生活における利便性の向上はもちろんのこと、産業や社会の効率化など、新たな付加価値を創出するインフラとなっています。
高速・大容量化や低遅延通信を実現する技術として、5Gでは新たにミリ波(概ね30 GHz以上の電波)が導入されました。ミリ波は極めて広い帯域幅を有し、画期的な高速通信等を実現できますが、従来一般に用いられているマイクロ波(数GHz以下)に比較して、様々な要因によって減衰、劣化しやすいため、通信機器に使用する各種デバイスの材料や設計・製造には、これまでとは全く異なる発想と、高度な技術が必要です。当社は、ミリ波帯通信デバイスの高性能化、低コスト化に向けた研究開発を進めています。60 GHz帯でフェーズド・アレイ・アンテナと信号処理部を統合した60 GHzミリ波無線通信モジュールを開発し、世界トップクラスの通信スピード(>1Gbps)と長距離伝送(>500m)を同時に実現(当社実験環境における実力値の例であり、周囲の環境により異なります)しました。さらに、28 GHz帯においても高周波IC(RF-IC)や、RF-IC/フェーズド・アレイ・アンテナ/電源回路を含む周辺機能を統合した28 GHzミリ波アンテナボードなどの、FutureAccess™ Type-Cシリーズを開発し、5G基地局への適用を目指しています。またバンドパスフィルタなど、ミリ波帯の低損失・高機能デバイスの開発も進めており、新世代のミリ波通信デバイスをトータルにサポートします。

60 GHzミリ波無線通信モジュール

28 GHzミリ波アンテナボード