株式会社フジクラ

R&D
FUJIKURA ODYSSEY
FUJIKURA ODYSSEY vol.05

超電導革命

世界に先駆ける“イットリウム系酸化物超電導線”開発物語

Phase.4 さらなる技術進化へ。

100mの長尺化で米国を出し抜き、臨界電流と長さの積であるIcL値で世界一の座へ。

100m線材
100m線材
2004年、フジクラは世界初となる100A以上の臨界電流をもつ100m長線材を作製すべく準備を進めていた。この年は隔年で開催される超電導の国際会議(Applied Superconductivity Conference)の開催年でもあった。この会議には超電導研究者の多くが集まることから、この会議に100m長線材の成果を発表することを計画し、7月から準備を開始。超電導線を作るためには中間層 超電導層 安定化層を成膜し、さらに熱処理を行う必要がある。当時の成膜装置は現在と比べれば小規模・小出力であったため一連の工程を行うためには2ヶ月以上かかっていた。

折しも中間層を完成させ超電導層を成膜しようとしたところ、頼みのエキシマレーザーの中の重要部品が故障してしまった。同型部品をメーカー代理店や他の研究機関に問い合わせたが、どこにもなかった。万事休すと思われたときに、基礎実験用に使用していたエキシマレーザーを使えば何とか100mの線材ができるのではと、ひらめく。しかしながら、その方法ではレーザーの位置を動かすだけではなく、レーザー用原料ガスの配管や冷却水配管もつけ直さなければならない。学会での発表日から逆算すると工事にかけられるのは、わずか数10時間。即座にフジクラの施設部隊がその場で寸法とりを行い、翌朝から工事が始まる。学会発表の論文には最後に特性数値のみ入れればよいように作成しておき、結局学会発表の2日前までに超電導線の特性を得、無事に学会発表にこぎ着けた。

当時米国では4年後に100mの超電導線を開発することを目標にプロジェクトが始まったばかり。そんな折、日本から目標達成の報告を聞き、米国の研究者たちは耳を疑ったという。まさにアンビリーバブル!相当なやっかみと恨みを買ったのは想像に難くない。

200m線材
200m線材
100A、100mの超電導線の開発から半年後、フジクラは200A、200m長の線材開発に取り組んだ。幾多の困難に直面したが、その困難をことごとく打破。2006年度に200m長の線材を実現する。NEDOプロジェクトでは2007年度末までに300A、500mの線材を開発することになっていた。そこでフジクラでは、超電導層の長尺化を課題として、試行錯誤。2007年夏に第1回目の線材作製に取り組み、その結果、長尺での基本作製技術を確立する。連続長では368mにわたり、300Aを超えており、その中で最低の臨界電流は305Aであった。ちなみにこのときの臨界電流と長さの積であるIcL値は112,000Am。わずか4ヶ月であったが世界一の座を維持する。その後も超電導特性を改善すべく超電導層の作製プロセスに磨きをかけ、中間層の成膜を経て、遂には500mの超電導線を完成させる。全長の臨界電流として350Aを504mに渡って実現。このときのIcL値は176,000Amで再度、世界一の座についた。

  • 500m線材
    500m線材

  • 500m線材の特性
    500m線材の特性

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