株式会社フジクラ

R&D
FUJIKURA ODYSSEY
FUJIKURA ODYSSEY vol.05

超電導革命

世界に先駆ける“イットリウム系酸化物超電導線”開発物語

Phase.2 YBCO線の開発

フジクラによるイオンアシスト蒸着法(IBAD法)が、世界のスタンダードへ。

超電導線の多くは、リニアモーターや診断用MRI等の磁場を発生させるマグネットとして使われる。超電導電流は磁場中では小さくなるのが一般的であるが、YBCOは磁場中での臨界電流の低下が小さく、磁場特性がきわめて良好と言える。しかしながら実用化への大きな課題もあった。YBCOの結晶と結晶の界面で超電導電流が途切れてしまうため、大電流を流すためには結晶制御が必須だったのである。

まず、YBCO結晶は異方性が大きく結晶の向きを揃える一軸配向が必要であることが判明。このため多くの線材作製プロセスは気相法により基板の上に成膜する方法に世界中の研究が向いていった。その後、一軸だけの結晶制御では十分な電流が得られないことがわかり、単結晶でなければ不可能ではないかという観測も生まれた。すなわち1㎝角のものなら高性能が得られるが、超電導線のように長さが必要なものには解決手段がなかった。

当時、YBCO線材のイメージは可撓性のある金属テープの上に超電導の薄い膜を形成するもの。ただし直接金属テープの上に超電導を成膜すると金属テープの構成元素が拡散し、超電導特性を劣化させるので、間に緩衝層が必要とされた。これを中間層と呼ぶ。

1990年頃、フジクラもYBCO線を実現するための金属テープの上に形成する中間層材料をどのようなものにするのかというテーマで研究していた。まずは中間層材料としてジルコニウム酸化物(YSZ)を耐熱金属の上に成膜する研究の一環として、成膜時のイオン照射の影響を検証。その結果、イオンを照射しながら成膜すると結晶が並ぶ兆しがみられた。さらに系統的に調べていくと、特定の角度とイオンの強度の両者が満足したときに結晶が揃い、最も結晶配向する条件が、基板に使っていた耐熱金属テープから55°であることを突き止める。この結晶配向した中間層の上に成膜した超電導層の臨界電流密度(超電導状態で流れる単位断面積あたりの最大の電流)は50万A/㎠であった。結晶配向が一軸だけの、いわゆるc軸配向膜では数万A/㎠程度であったことから、その高特性ぶりが実証される。また、このことによって数Aレベルから数10Aレベルに超電導線の電流が増加することで実用的な超電導線の実現に大きく寄与した。この手法(イオンアシスト蒸着法:IBAD法(Ion Beam Assisted Deposition 法))はその後Y系超電導線の作成プロセスの主要なプロセスとして発展していく。

2軸固定による全軸配向中間層
2軸固定による全軸配向中間層
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