FUJIKURA ODYSSEY vol.01 マリアナ海溝ロマン 1万m級無人探査機 “かいこう” 用ケーブル開発物語 Phase.3 技術的ブレークスルー 次々と問題をクリア。画期的な製造方法を考案し、高耐水圧の光ファイバユニットを開発。しかしながら最終試験で問題発生。そして試練の日々を乗り越え、完成へ。 一次ケーブル極めて難易度の高い開発オーダーだったが、「ドルフィン-3K」の経験をベースに数々のブレークスルーを果たしていく。例えばケーブルのねじれや座屈の発生を防ぐ技術の確立、50トンの破断張力を持つケーブルの製造ノウハウの導入など、次々と問題点をクリア。また、ケーブル長が12,000mの1本物と長いことから、フジクラの中でも3つの工場にまたがっての製造で対応。経験とノウハウの総力を傾けて乗り切っていく。一次ケーブルの開発では、独創的な抗張力体加工技術を確立。加圧スチームの原理を活かし、超強度を保ちながら、ロッド系を小さくできる画期的な製造法を考案する。一方、二次ケーブルの開発では、水圧により光ファイバが潰されないよう、柔らかい樹脂を充填したスロット型均圧光ファイバユニットを完成する。 二次ケーブル1992年3月に無事納入を果たした後、綿密な性能試験を経て、1994年3月1日“かいこう”の最終試験が、報道関係者同乗のもと、マリアナ海溝で行われた。ところが、夕方のニュースでは、ケーブルが原因で大幅延期との報道がなされ、フジクラ社内でも大騒ぎとなる。二次ケーブルの光系ブラックアウトだった。急遽“かいこう”を船上に引き上げ、調査したが、全く異常はなく、原因を特定できず。二次ケーブルは、大深度の水圧に耐えるような構造としていた。その後の解体調査により、光ファイバが長手方向に圧縮され、局部的に座屈の一種であるマイクロベンディングを発生。光の損失が急増していたのである。原因究明のためには、高水圧実験水槽の中で1,500kgf/㎠という高水圧下条件をつくり、ケーブルサンプルに連続屈曲や捩れ、あるいはその組み合わせ挙動を与え、光ファイバの損失レベルを測定。約3ヶ月不眠不休での調査確認試験を敢行した。 対策としては、抗張力体が高水圧下でも動きが拘束されないよう抗張力体層にジェリーを充填するという方法を導入。この新設計のケーブルで再試験を実施したのは、問題発生から1年後だった。 1 2 3 4 5