最高水準の性能を実現したフェーズド・アレイ・アンテナ・モジュールで 5Gミリ波インフラ市場に参入 2020年10月23日 株式会社フジクラ 株式会社フジクラ(取締役社長:伊藤雅彦)は、3GPP*¹が規定する5Gミリ波帯域であるn257(28GHz帯)、n258(26GHz帯)、n261(27GHz帯)に対応した最先端の統合化フェーズド・アレイ・アンテナ・モジュール(Phased Array Antenna Module、以下PAAM)の製品化を発表しました。フジクラのPAAM製品は、ミリ波を利用した5G固定無線アクセス(FWA)*²、5Gモバイル無線アクセス(MWA)*³、5G無線バックホール*⁴、その他の新しい用途に対応した、屋内および屋外向けに利用できる最高水準の性能を誇るPAAMです。 5Gミリ波市場の状況 現在、5Gの展開は世界中で加速しており、その中でミリ波帯の利用は5Gネットワーク機能の強化に重要な役割を果たすことが見込まれています。グローバル・モバイル・サプライヤー・アソシエーション(GSA)*⁵によると、2020年8月末の時点ですでに129の国と地域の397の事業者が5Gへの投資を発表しています。ミリ波を用いた5Gサービスは、主に米国のFWAとMWAの用途を中心に展開が進んでいますが、今は市場展開の初期段階にあり、市場からは屋外と屋内の両方の用途でミリ波を用いた5Gサービス活用シーンの大幅な拡大に対して、高い期待が寄せられています。 フジクラがこの市場の期待に応えるべくこのたび開発したPAAM製品は、米国IBM社から導入したミリ波IC技術とアンテナ・イン・パッケージ技術[1],[2]に、フジクラが持つアンテナ設計技術、基板設計技術、および通信業界に価値ある製品を提供し続けてきた長い歴史と専門知識を高度に融合させることで、その製品化を実現したものです。フジクラは、今後世界各地の5Gインフラ構築を推進されるお客様に向けてこのPAAM製品をご提供していくことで、5Gミリ波ネットワークおよび5Gサービスの成長と拡大に貢献してまいります。 フジクラPAAM製品の主な特長 フジクラPAAM製品は、垂直、水平両偏波を同時に送受信可能なアンテナとRF-IC*⁶を統合した高性能なフェーズド・アレイ・アンテナ・モジュールであり、5G基地局に必要不可欠とされる様々な機能(下記)を装備しています。(図1) • 最先端のSiGe BiCMOSプロセスを使用した自社開発のRF-ICを搭載しており、優れた雑音指数(NF)特性が実現する十分なリンクマージンによって、広い通信エリアがカバー可能 • 独自構成のTrue-time-delay方式の移相器を採用しており、広い周波数範囲で位相と振幅を独立して制御することが可能 • 本移相器は、高精度かつ高分解能なビーム方向制御を実現するだけでなく、PAAMを実装する際の煩雑なキャリブレーションが不要 • 本移相器により広帯域に渡って群遅延とビーム方向が一定に保たれるため、送受信信号の歪が抑圧され、高い伝送品質を実現 • 本PAAM製品はトレードオフ関係にあるNFと大信号入力時の線形性を柔軟に設定することができ、PAAMが実装される基地局のカバレッジに応じて最適な設定を選択することが可能 図1 フジクラPAAMのブロックダイヤグラム 製品導入スケジュール フジクラでは、本PAAM製品のサンプル提供を2020年度第4四半期中に順次開始し、2021年度下半期中の量産開始を計画しています。 本製品についてさらに詳しい情報がご入用の際には、私たちのウェブサイトからお問い合わせください。(https://mmwavetech.fujikura.jp/ja/#area-28ghz-module ) 用語の解説 *1 3GPP:5G等の移動通信システムの仕様の検討・作成を行う標準化プロジェクト *2 FWA:固定端末(加入者宅等)向け無線アクセス *3 MWA:モバイル端末(スマートフォン等)向け無線アクセス *4 バックホール:通信事業者の基幹ネットワークと基地局を結ぶ中継回線 *5 GSA:モバイルに係るインフラ、機器・デバイス、アプリケーション、サポートサービス等の提供に携わる企業を代表する移動通信関連の業界団体 *6 RF-IC:高周波集積回路 ご参考 [1] https://www.ibm.com/blogs/research/2018/02/isscc-lewis-winner-award/ [2] https://www.ibm.com/blogs/research/2017/06/using-air-cavity-boost-performance-5g-antenna-module/