プレスリリース
MITと共著で「三次元ナノ加工技術」に関する論文を発表
~ポリマー母材へのナノ彫刻技術による光アプリケーション~
株式会社フジクラ(代表取締役社長CEO:岡田直樹)は、米国マサチューセッツ工科大学(以下:MIT)のMechanical Engineering、Biological Engineering、および、McGovern Instituteに所属する研究者と「三次元ナノ加工技術」に関する共同研究を進めており、この度、共著で論文を発表し、科学誌NatureシリーズのNature Photonicsに掲載されました。
フジクラでは、2019年に新設したAdvanced Research Core(以下ARC)が先端基礎研究を行っており、複数のMITの研究室と連携しながらナノサイエンスおよびナノエンジニアリング分野における最先端の研究を推進しています。
【「三次元ナノ加工技術」における研究成果のポイント】
1nmは1㎜の100万分の1の単位で、「三次元ナノ加工技術」とは、非常に小さなナノメートルサイズの構造・形状を、三次元に自由度高く形成する技術のことです。ナノメートルサイズの加工技術としては、半導体や集積回路などの作成に用いられるリソグラフィーなどの手法が代表的ですが、平面的な構造を形成することに特化しており、複雑な三次元的構造に対しての造形自由度は高くありません。
今回発表した「ImpCarv※1」は、光を移動照射しながら複雑な三次元の構造を造形する光造形法で、従来、光造形法の課題とされてきた「光の回折限界」を大きく上回る分解能を実現しています。
【光造形法の可能性と次世代技術への応用】
光を移動照射しながら造形する光造形法は、1㎜四方程度の小さなプラスチックの母材の中にも自由に複数の構造物を造形できる特長を持ちます。
このため、一つの母材の中に多くの機能性素子を造形した、複雑な機能性デバイスを形成することが可能です。
各素子は一度に造形できるため、各素子間の位置を精密に制御しながら設置する必要がなく、生産効率が向上します。そのうえ、この手法で造形されるナノサイズの微細構造は、ナノサイズで起こる様々な物理現象を精密に制御することに優れており、多くの分野で応用できると考えられます。
特に、光分野においては、光の形状・強度・位相を精密かつ自在に制御できることから、光通信をはじめとする多くのフィールドで、革新的な光デバイスや光コンポーネントへの応用を可能にします。
本論文では、「ImpCarv」の特長を活かして造形した光ニューラルネットワーク※2のデモンストレーションも行い、「1,5,6,7」の4つの数字を用いた原理確認※3において、光ニューラルネットワークが人工知能(AI)のように数字を分類できることを実証しました。
この光ニューラルネットワークは光通信だけでなく、電子の代わりに光を使って高速で計算を行える光コンピューティングや、次世代ロボティクスなどへの応用も期待されます。
フジクラは、今後もナノイノベーションに関する研究を推進し、技術的な価値の創造と社会課題の解決に貢献していきます。
【論文情報】
論文名:Isotropic shrinkage of photopatterned vacancies enables nanoprecise 3D
metastructures for visible-light optical computing
執筆者名: Quansan Yang1,2,3†, Gaojie Yang1†, Takahiro Nambara1,4, Hiroyuki Kusaka2,4, Yuichiro Kunai1,4, Alex C. Matlock2, Corban Swain1, Brett Pryor1, Yannick Salamin5,6, Daniel Oran1, Hasindu Kariyawasam7, Ramith Hettiarachchi7, Dushan Wadduwage7,8,9,10, Marin Soljačić5,6, Peter T.C. So2,11*, Edward S. Boyden1,11,12,13,14,15,16*
著者所属:1 McGovern Institute for Brain Research, Massachusetts Institute of Technology (MIT), Cambridge, MA 02139, USA.
2 Department of Mechanical Engineering, MIT, Cambridge, MA 02139, USA.
3 Department of Materials Science and Engineering, University of Washington, Seattle, WA 98195, USA.
4 Fujikura Ltd., Tokyo, 135-8512, Japan.
5 Department of Physics, MIT, Cambridge, MA 02139, USA.
6 Research Laboratory of Electronics, MIT, Cambridge, Massachusetts 02139, USA.
7 Center for Advanced Imaging, Harvard University, Cambridge, MA 02138, USA.
8 Department of Computer Science, Old Dominion University, Norfolk, VA 23529, USA.
9 School of Data Science, Old Dominion University, Norfolk, VA 23529, USA.
10 Department of Physics, Old Dominion University, Norfolk, VA 23529, USA.
11 Department of Biological Engineering, MIT, Cambridge, MA 02139, USA.
12 Department of Brain and Cognitive Sciences, MIT, Cambridge, MA 02139, USA.
13 Howard Hughes Medical Institute, MIT, Cambridge, MA 02139, USA.
14 K. Lisa Yang Center for Bionics, MIT, Cambridge, MA 02139, USA.
15 Center for Neurobiological Engineering, MIT, Cambridge, MA 02139, USA.
16 Koch Institute for Integrative Cancer Research, MIT, Cambridge, MA 02139, USA.
†These authors contributed equally to this work.
責任著者* Email: edboyden@mit.edu (E.S.B.) and ptso@mit.edu (P.T.C.S.).
掲載誌:Nature Photonics
掲載日(現地時間):2026年5月12日
掲載URL:https://www.nature.com/articles/s41566-026-01896-1
光ニューラルネットワークのデモンストレーションのイメージ図(左)と原子間力顕微鏡による測定結果(右)
※1 ImpCarv
Implosion Carvingの略で、収縮と彫刻を意味する単語を合わせた造語。小さく絞った光の点で3Dスキャンしながらポリマーを削り取り、造形する手法のこと。膨潤状態にしたポリマーに光造形を行い、その後、構造を収縮させて最終造形物とすることで解像度が高まり、光の回折限界を超えた小さな構造物の作成を実現する。
※2 光ニューラルネットワーク
演算用に調整した光回路に光を通すだけで、演算処理を実現する技術のことで、高速計算と消費電力の低減を可能にする。
※3 原理確認
技術やアイデアの実現可能性を確認するための工程のことで、原理が正しいか検証する手法のこと。
