第三者意見 / ご意見を受けて
第三者意見
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フジクラグループでは、統合報告書を発行して今年2年目を迎えました。昨年、いくつか指摘をさせて頂いた事項については、今年の報告書にてすべて対応されていることを確認しました。特に、価値創造ストーリーでは、3つの競争優位性として、「長期的な信頼関係」「技術力(研究開発)」「社会変化への適応力」におけるフジクラグループのDNAとしての強みがなにか、”みらい”社会の実現に向けたどのような具体例があるのかを例示し、説得力のある内容となっています。 |
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1.マテリアリティ(重要性)
組織の短・中・長期の価値創造能力に実質的な影響を与える事象に関する情報の開示が重視されています。本報告書では、4つのマテリアリティとCSR重点方策、注力するSDGsの特定プロセスについての簡単な説明はあるのですが、マテリアリティそのものの特定に至ったプロセスとしてどのように課題を認識したか、リスクや機会の優先順位付けをしたか、また、特定における経営層の役割などについては言及されていません。統合報告書においてマテリアリティは経営の中核的な要素であり、詳述すべき中心テーマとなるものですので、丁寧な説明が望まれます。 -
2.リスクと機会
短・中・長期の価値創造能力に影響を及ぼす具体的なリスクと機会は何か、またそれらに対してどのような取り組みを行っているかの内容を盛り込むことが重視されます。本報告書では、環境については、TCFDに基づく気候変動関連リスクの特定として移行リスクと物理リスクの両方の観点から分析がされ、リスクマネジメント体制の仕組みについても説明がされています。一方、環境・社会全般に関する課題やメガトレンドを含む主要なリスクと機会の概要、主要なリスクと機会が現実のものとになる可能性についての評価、また、これらのリスクと機会が企業戦略・ビジネスモデル・KPIにどのような影響を与えるのかの説明をすることを推奨します。 -
3.戦略と資源配分
短・中・長期の戦略目標と、それを実現するための現在または今後の戦略と資源配分計画、そしてどのように短・中・長期の達成状況及びアウトカムを測定するかの説明が求められます。本報告書では、この点に関しては丁寧に説明されており、価値創造のための経営戦略として、2020年度達成目標を4つの経営指標(売上高、営業利益率、ROE、D/Eレシオ)により提示し、目標に向けてどのように事業領域を選定していくのかが示されています。一方、目標達成のためのモニタリング指標(EPSとROIC)も示されているため、前述の経営指標との関係についての説明があるとわかりやすくなるでしょう。 -
4.パフォーマンス(実績)
当該期間における戦略目標をどの程度達成したか、また、資本への影響に関するアウトカムは何かについての記述が求められています。本報告書では、パフォーマンスに関しては、各カンパニーの財務面に関する実績と計画が報告され、Webサイトでは、ESGデータに関して4カ年に亘るパフォーマンス・データの開示を行っています。今後、目標の達成度合い、現在のパフォーマンスと組織の短・中・長期の戦略目標との関連性、また、冊子の関連ページからのリファレンスがあると良いと考えます。 -
5.アウトルック(見通し)
戦略を遂行するにあたり、どのような課題及び不確実性に直面する可能性が高いのか、そして、結果として生じるビジネスモデル及び将来の実績への潜在的な影響はどのようなものかについての記述が求められていますが、本報告書では社長メッセージにおいてそのことが詳しく説明がされています。現在の厳しい経営環境および成長に向けての種まきについて、今後想定される4つの市場分野、価値創造の考え方、さらに技術貢献できる具体的な可能性などがよく分かります。今後、顕在化する可能性のある重要な課題や不確実性としてどのようなものがあり、それにどのように対応していくのかについての説明を加えることで、より明確に自社の「見通し」を伝えることができ、ステークホルダーの理解が深まります。
フジクラグループは、新たにRE100への加盟、TCFDへの賛同など、グローバルで重視されるイニシアティブへの参加を表明しました。また、ESG投資対応の努力も功を奏し、GPIFインデックスへの継続選定もされています。今後、国際社会は脱炭素化へ向けた動きなど事業環境においても急激な変化が起こることが予測されますが、他社に範を示す存在であり続けて欲しいと願っています。
ご意見を受けて
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フジクラグループを取り巻くESG(環境・社会・ガバナンス)に関する経営環境は、劇的に変化を続けており、機関投資家を含むステークホルダーからの企業のESG活動への注目も高くなっています。フジクラグループは気候変動対応に関する長期ビジョンとして、2016年にフジクラグループ環境長期ビジョン2050を制定し、2050年の未来を見据え、環境負荷の最少化に向けた4つのチャレンジに取り組んでいます。TCFDへの賛同表明やRE100加盟を通じて、気候変動リスクの緩和にも貢献してまいります。 |
さて、本木啓生様より専門家としてのお立場から広い視野に立った第三者意見をいただき、フジクラグループのDNAとしての強みがなにか、”みらい”社会の実現に向けた取り組みについてご評価いただきました。社外取締役からのメッセージは、フジクラグループにとって初めての試みでありました。価値創造モデルについては引き続き、社内で議論を継続し、自らの強みや競争優位性などを理解し、長期持続的な成長につなげていきたいと考えております。
また、本年度の課題として、「1.マテリアリティ(重要性)」、「2.リスクと機会」、「3.戦略と資源配分」、「4.パフォーマンス(実績)」、「5.アウトルック(見通し)」についてご提言をいただきました。これらのご提言につきましては、フジクラグループCSR委員会にて、ご提言の一つひとつをしっかりと受け止め、取り組みへの検討を進めてまいります。
フジクラグループは経営理念に掲げる“つなぐ”テクノロジーを通じてお客様の価値創造と社会への貢献を追求することを不変のミッションとし、持続可能な企業の発展と社会の実現のために、気候変動などESG課題に積極的に対応し、企業グループとしての社会的責任の一端を今後も果たしてまいります。