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CSR

CSR統合報告書

フジクラグループCSR統合報告書2016
ステークホルダー・ダイアログ

第4回ステークホルダー・ダイアログ
[テーマ]フジクラグループCSRの中期課題を考える

~2020年までのCSR重点方策の策定に向けて~

第4回ステークホルダー・ダイアログ

〔写真前列左から〕滝沢 功・宮城 秋男・本木 啓生・和田 朗〔後列左から〕中山 幸洋・宮田 裕之

当社グループは、2020年度を最終年度とする5年間で取り組む「20中期CSR重点方策」を策定します。ところが、私たちが取り組む現在のCSRは、多様化し、国際化し、グローバル化し、スピードアップをしています。当社グループのCSR委員会は、CSRの優先課題をどう選び、どう進めるかのベース資料とするために、CSRの専門家の本木啓生イースクエア社長に幅広いご提言を頂きました。

【ステークホルダー】

【当社参加者】

*肩書きは開催当時のものです。本文中の敬称は省略。

サブテーマⅠ:中期的に見るCSRの動向

●宮田(ファシリテーター)

宮田 裕之

2020年度を最終年度とする「20中期」で取り組むCSR重点課題にどのようなテーマをとりあげるべきかについて、専門家のお立場からご提言を頂きたいと思います。

●本木

将来を見てみますと、多くの環境面での制約が生じます。地球温暖化に始まり、資源制約、化学物質リスクや生態系崩壊などが想定されます。同時に社会面での制約として、法規制やガイドラインの厳格化、さらに市民や海外NGOからの監視、それから投資家のESG重視などが挙げられます。今後の経営者は、これまで以上に厳しくなる環境制約・社会制約という壁にぶちあたらずに、自社の価値向上と環境・社会の価値向上を両立させる必要があります。企業経営のあり方をサステナブルな方向へ変えていくという上ではエキサイティングでありますが、難しい時代であると思います。特に、中長期的な企業価値を評価しようとする投資家の観点では、人材やスキル、モチベーションなど人的資本や、環境への取り組みなど非財務の領域が大切です。そこに技術や様々なビジネスモデルの要素を加える事で、今後の企業価値が生み出されます。一方、財務というのはそれらを土台としたピラミッドの頂点近くにある、過去1年間のパフォーマンスの結果です。特に、中長期的な企業価値を評価しようとする投資家の観点では、人材やスキル、モチベーションなど人的資本や、環境への取り組みなど非財務の領域が大切です。そこに技術や様々なビジネスモデルの要素を加える事で、今後の企業価値が生み出されます。一方、財務というのはそれらを土台としたピラミッドの頂点近くにある、過去1年間のパフォーマンスの結果です。長期運用を行う投資のプロフェッショナルは、土台となる非財務情報をしっかり見て、お金をその企業に投じています。従って、ESG情報は非常に重要であり、長期運用の投資機関が何を見て運用しているのかを見ていくことが大切だと思います。

●和田

投資家視点に立ったESGに取り組まないと、資金調達などの面で支障が出てくる可能性が考えられるということですね。

●本木

どういう株主に株を持ってもらいたいのかということになります。長期運用の株主、長期に企業価値を上げていくことに賛同する、良質な投資家に安定株主として持ってもらうことが重要です。この比率をどれくらいにもっていくのかということで、ESGをいかに投資家に向けてアピールしていくのかにつながっていくと思います。これからは、企業も受け身ではなく株主を主体的に選ぶ時代が来ると思います。こちらから働きかけてESGを重視している株主に保有してもらうこと、すなわち長期でしっかり保有してもらうことが重要です。

サブテーマⅡ:経営的側面(ガバナンス)から2020年のテーマ・課題を考える

●宮田

次に二つ目のサブテーマである「経営側面」についてはいかがでしょうか。

●本木

本木 啓生

様々取り組んだCSR活動について、CSR報告書や統合報告書に掲載・発信をし、フィードバックをもらって、それをまた社内に取り込んで、各部署で展開していきますが、報告だけを頑張っても、それ以上先にいけなくなりますし、内部の取り組みだけを頑張っても、きちっと報告していかないと対外的な評価につながりません。まさに両輪でやっていく必要があります。これがCSRコミュニケーションであり、情報発信に関しては、どのステークホルダーを対象とするのかにより、いろいろな情報の出し方があると思います。統合報告書では、財務報告とサステナビリティ報告から本当に重要な将来を見通すエッセンスをひっぱりだしてきて、経営レベルで自分たちにとって何が重要なのかということを考える。ある分野とか部門の枠にとらわれないで、ボードレベルの観点で会社を見て、何が重要なのかということをインテグレートして報告することがもとめられており、それを報告書にあらわしていきます。海外に目を転じると、2014年にEU指令で、環境、社会・従業員関連、人権、腐敗・贈収賄、取締役会の多様性に関する方針・ガバナンス・リスク・実績などの非財務の情報を開示することが義務付けられました。他に重要な動きとしては、2015年9月に国連で、「持続可能な開発目標」、通称SDGsが採択される予定です(2015年9月に国連サミットで採択)。これは国家間の決め事ですが、事業を通して自社がどのように貢献できるのかを見ておくことは大切です。

●宮城

ステークホルダーの目線あるいはルールがどんどん厳しくなると、活動を数値化出来ない企業は投資家の尺度にのってこないという事になると思います。いろんなESGの活動を見える化していくことが重要だと思います。

●本木

活動を見える化することは重要です。基本的には、環境、サプライチェーンあるいは人権など、様々なテーマはありますが、ステークホルダーが見たいのは、まず「方針の有無」、すなわち企業としての考え方がしっかりしているかということです。これが文書化されているかが重要です。

●滝沢

滝沢 功

いろいろな事例をお聞きしていると、理念、ビジョンそのもののようですね。そのような理念、ビジョンをどうやって作り上げたのかというところは非常に興味があります。これはトップの考え方に委ねられていることが大きいような気がしますが、いかがでしょうか。

●本木

評価の高い先進企業ではトップが相当高い信念をもってやっています。ユニリーバのポール・ポールマンは、事業を成長させるとともに環境への取り組みをしっかりやらないと、自分たちのビジネスは足をすくわれることをよく理解しています。財務目標の達成だけではだめであり、環境だけでもだめ、両方が必要であるということです。お尋ねのようにESG活動は、トップの信念によるところが大きいと言えます。

サブテーマⅢ:社会的側面から2020年のテーマ・課題を考える

●宮田

次に「社会的側面」についてはいかがでしょうか。

●本木

人権とダイバーシティを取り上げます。人権は英語で、Human Rightsと複数形です。突き詰めてみると、全部人間が人間らしく生きるための権利なんです。自分たちのプライバシー保護の権利、文化的な生活をする権利、選挙の権利、余暇の権利、いろんな権利がありますが、権利の集合体が人権だということで、非常にシリアスな問題です。
今求められている人権というのは、非常に幅が広くて、バリューチェーンの上流工程から下流工程まで、このなかでの人権が問われているのです。グローバル社会では、実際日本は非常に人権が危うい国と見られています。例えば、米国務省の評価ですと、先進国の評価はほとんどが第一階層である一方、日本に対する評価は「人権に危うい一部の途上国と同じレベル」と、かなり低い評価となっています。国連レベルでもいろいろな活動があり、方針やガイドラインが出ていて、世界的にも相当取り組みが進んでいる状況にあります。ダイバーシティについては、しっかりと進めていくことが、いろんな形で企業のメリットになります。優秀な人材の確保にもつながり、最終的には企業イメージの向上につながっていきます。いろんな人たちを会社として受け入れていくことが求められています。

●中山

中山 幸洋

私たちはメーカーなので、当社の構成としてエンジニアが8割くらいで電気機械のエンジニアが多く、女性が非常に少ない状況です。女性の働きやすい環境を作れば、当然外国人も含め働きやすい職場環境になると考えています。

●本木

業種特性から考えると、おそらく女性比率を50%にする必要はなく、どれくらいが適正規模なのか、何のためにやるのかが重要です。ただ、女性・男性に限らず、年齢、国籍、人種、宗教、価値観など、多様な人材が入ることにより、いろんな視点で議論ができるため、クリエイティブな思考が得られるという利点があります。日本社会で活躍する人材は、他国と比べると極端に男性比率が高く、ダボス会議のジェンダーギャップ指数の今年のランキング結果を見ても、世界で104位です。この順位は、女性には教育をつけなくても良いとされている一部の国と同レベルです。日本の女性の大学進学率の高さから見ても、もっと活躍できる場を作っていくことが重要だと思います。

サブテーマⅣ:環境的側面から2020年のテーマ・課題を考える

●宮田

最後のサブテーマである、「環境側面」についてはいかがでしょうか。

●本木

(CO2排出の)国の目標設定については、日本は2030年までに2013年比で26%削減するとしています。米国も長期目標から、先進国は2050年には80%以上削減するというロードマップを作っており、これに向けた2020年目標、2025年目標を米国は掲げております。企業の視点で見ると、気候変動に先進的に取り組んでいる企業のほうが、パフォーマンスが高いというデータがあります。CDPのスコアが高い企業上位25%は、スコアの低い企業下位25%に比べて、ROEが18%高く、回答がなかった企業と比べると67%も高いといった結果があります。他にも、上位25%は、下位25%に比べて、税引き前利益の変動率が50%低いとか、株主の配当が多いとかいった結果が出ています。水につきましては、2015年のダボス会議で出されたグローバルリスクにおいて、潜在的な影響が最も大きなリスクの1位に水リスクが浮上しました。国際的には、水リスクへの関心が非常に高まっていて、グローバルでの企業とNGOによるコンソーシアムなども様々立ち上がっています。CDPでも、水についての取り組みを強化しており、今年は評価やスコアリングを始めています。この動きは一過性のものではないため、CO2や水の情報が取れるような全社的な仕組みを早く取り入れたほうが良いということです。また、自社だけではなくてサプライヤーに対しても教えていかなければいけません。カーボンに関しては、国連から生まれたPRI(責任投資原則)のモントリオール会議で、投資家の視点で、自分たちが投資している企業がどれくらいCO2を出しているのか試算するという試みが始まっています。投資家も責任を負うことになるので、自分たちの投資先のポートフォリオの企業CO2排出量を知る必要があります。情報開示というのはますます重要視されるようになると思います。

●和田

和田 朗

CDPの評価が良い企業がやはり収益性も良い。ダイバーシティに気を使っている企業がやはり収益性も高い。ESGも同じで、そういったところに配慮できる企業は、利益追求の部分でもキチンとした経営戦略を持っていると考えるべきなのですね。

●本木

その通りです。一方、こういう課題があることを経営陣が理解しないと、対応は進みません。中長期的な視点で、いかに先手を打って企業として取り組んでいくかだと思います。

ダイアログを終えて

本日は長時間にわたりありがとうございました。私自身も、様々な興味あるお話を直接お伺いできました。あらためてCSRに対する認識を深めたというのが事実でございます。

本日、様々なご提言を頂きました。それらの一つひとつを社会の声として、ステークホルダーの期待として、実現していくことが大事だと考え真摯に受け止めて取り組みを進めたいと思います。本木様より頂きましたご提言には、時間のかかるものもあります。私たちは、一つひとつ優先順位を決めて取り組みを進めてまいります。

宮城 秋男

取締役常務執行役員
宮城 秋男


20中期経営計画の「CSR目標」と「CSR重点方策」決定
~具体的内容と策定のプロセス~

フジクラグループCSR委員会は、2020年度を最終年度に5年間で取り組む重点課題である「20中期CSR重点方策」を策定するために上記のステークホルダー・ダイアログを開催し、CSRの専門家・本木イースクエア社長より2020年を見据えた幅広いご提言を頂きました。これらのご提言をベースに私たちはさまざまな角度からの検討・討議を重ね、下記に示す「20中期CSR目標」及び「20中期CSR重点方策」を定めました。CSR委員会は、この検討を2015年4月より開始し、1年間の検討期間を経て、2016年5月に組織決定を行いました。

1. 20中期CSR目標

「投資家を含め国際社会が高く評価するフジクラグループの実現」

2. 20中期CSR重点方策

20中期CSR重点方策

3. CSR重点方策 策定のプロセス

CSR重点方策 策定のプロセス

CSR委員会での検討会議

CSR委員会での検討会議

CSR重点方策の機能

CSR重点方策の機能