CSRトップページ
CSR統合報告書(HTML)
編集にあたって
トップメッセージ
特集
ステークホルダー・ダイアログ
組織統治
公正な事業慣行
環境
消費者課題
人権、労働慣行
コミュニティへの参画及びコミュニティの発展
第三者意見、ご意見を受けて
データ集・対照表

CSR

CSR統合報告書

フジクラグループCSR統合報告書2015
ステークホルダー・ダイアログ

第3回ステークホルダー・ダイアログ
グループ生物多様性長期ビジョン『ロードマップ2030』の進め方を考える

第3回ステークホルダー・ダイアログ

[写真前列左から] 宮田 裕之・赤澤 豊様・和田 朗 [後列左から] 前田 和則・望月 貫・矢口 尚之助・中澤 明

当社グループは、在来種植栽によるビオトープ「フジクラ 木場千年の森」の設置、グループで取り組む「生物多様性確保ガイドライン」の制定等、これまで生物多様性への取り組みを進めてきました。さらに、2013年にはグループ生物多様性長期ビジョン『ロードマップ2030』を作成し、当社グループとしての生物多様性の取り組みの検討を開始しました。この長期ビジョンを進めるため、専門家からのご意見・ご提言を頂き、具体的な活動に展開していきたいと考えています。

【ステークホルダー】

【当社参加者】

*肩書きは開催当時のものです。本文中の敬称は省略。

 

行政と一体となった街づくりへの参画について

●和田

和田 朗

当社グループは、生物多様性確保の長期ビジョン『ロードマップ2030』を2013年に制定しました。これは企業としては最先端の取り組みであると考えています。この長期ビジョンを、他社に先駆け、具体的な活動へとさらに進めていきたいと考えています。

●宮田[ファシリテーター]

生物多様性とは、一般的には「生き物たちの豊かな個性の繋がりのこと」だと言われています。ダイアログに先立ち、参加者全員の共通認識とするために、生物多様性とはどのようなものか、どのように定義されているかご説明いただきたいと思います。

●赤澤

地球規模の環境問題への関心が高まる中、1992年にブラジルのリオ・デ・ジャネイロでいわゆる地球サミットと呼ばれる国際会議が開催され、気候変動枠組条約とともに生物多様性条約が採択されました。これが生物多様性の国際的な取り組みのスタートになります。

地球上に生命が誕生してから数十億年、生物は、環境に適応して進化し、現在、地球上には様々な生物が存在しています。さらに、これらを取り巻く大気、水、土壌等の環境要素との相互作用により多様な生態系が形成されています。生物多様性とは、こうした様々な生態系が存在し(生態系の多様性)、生物の種間の差異(種の多様性)と種内の差異(遺伝子の多様性)が存在することを言います。

私たちの生命や暮らしは、生物多様性の恵みによって支えられています。生物多様性は、食糧や原材料、気候の調整や自然景観、固有の文化等をもたらしてくれました。しかし、生物多様性は、人間の活動により、種の絶滅、生息域の減少等の危機にさらされています。私たちは、この危機を少しでも阻止しなければなりません。

●宮田

宮田 裕之

私たちの生物多様性の取り組みもこれらの危機に関連し、依拠するのではないかと思います。そこで企業としての生物多様性への取り組みはどうあるべきか、どのように関わって行けばよいか、ご意見をうかがいたいと思います。

●赤澤

赤澤 豊

将来にわたり、私たちが生物多様性の恵みを受けていくために、社会を構成する私たち全員が規則を守りながら連携して生物多様性を保全し、その恵みを使い尽くすことのない持続可能な社会を作らなければなりません。そのために、企業や自治体、NGO、NPO等、様々な主体が生物多様性の取り組みに参加することが求められています。中でも企業には、消費者や様々な主体と連携して生物多様性に配慮した製品やサ―ビスを提供することを通じて、消費者のライフスタイルの転換を促す等、自然とともに生きていく社会、持続可能な社会の現実に向けて貢献していくことが期待されています。

 

国内グループ会社の生物多様性を考える

●宮田

私たちの国内グループ会社は、全国に広く設立されていますが、どちらかというと緑地の少ない事業所が多いと思われます。気候も地域性も違った条件で、生物多様性の取り組みとしてどのようなことが考えられるのでしょうか。

●赤澤

小さなコンテナの水槽を利用した「田んぼ」
小さなコンテナの水槽を利用した「田んぼ」

生物多様性の取り組みは、里山公園を造ることに限らず、緑が少ないところでも状況に合わせていろいろなことができます。例えば、工場敷地内に小さなコンテナの水槽で「田んぼ」を作れば、トンボの幼虫のヤゴ等の水生生物の生息環境を創ることができます。これらも立派な生物多様性の取り組みといえます。また、グリーンカーテンを作り寄ってくる虫たちを子供に見せてあげることも生物多様性の教育になります。「昆虫採集をしても良いのですか」という質問を受けることがありますが、例えば「ぐんま昆虫の森」では、幼稚園児と小学生には、観察用に捕虫網と虫めがねを貸し出しています。こうした体験を通して生命の大切さに気づき、豊かな感性が育まれると考えています。皆さんも夏休みの昆虫採集イベント等、是非いろいろなことを考え、取り組んでいただきたいと思います。取り組みは、楽しく、ためになる(メリットがある)内容であることが重要です。これには学ぶこと・知ることの喜びなど精神的な満足を与えることも含みます。

●和田

楽しければ継続することができ、さらに他のグループと連携して活動の輪を広げていくこともできますね。

 

当社事業所の生物多様性、里山公園を考える

●宮田

『ロードマップ2030』は、各事業所にて里山をつくることを骨子としています。当社には4つの事業所がありますが、その中には敷地内に大きな緑地がある事業所と緑地が少ない事業所とがあります。当然その取り組みは変わってくるのではないかと思います。大きな緑地を有する事業所でできる生物多様性の活動や里山公園化等、具体的にどのようなことが考えられるのか、企業が作る里山で社員や家族も参加して楽しめる公園化とはどうすれば実現できるのか、ご意見をうかがいたいと思います。

●矢口

佐倉事業所は、敷地の約20%が緑地で、主に敷地周辺に分布しています。特に敷地南東地区には事業所設立以前の地形や樹林がそのまま残っています。ここには緑地管理のための通路があり、これを遊歩道にすることを考えています。

矢口 尚之助

佐倉事業所の樹林

佐倉事業所の樹林

●中澤

鈴鹿事業所は、里山を整地し建設しましたが、敷地東部の約30%は建設当時のままの緑地が残っています。ここには鳥たちが運んできた種子により樹木が自生し、数組のキジのツガイが縄張りをつくって住んでいるほか、タヌキ、キツネ等も見かけます。

鈴鹿事業所東地区の緑地

鈴鹿事業所東地区の緑地

中澤 明

●赤澤

佐倉事業所も鈴鹿事業所も建設当時のままのまとまった緑地が残っており、里山公園を作るための条件は十分そろっています。佐倉事業所については、南東地区の広い樹林地は起伏があり、里山らしい自然景観が楽しめる里山公園を作ることができます。また、北西地区のグランドに接する樹林帯には一般道がありますので、沿道に樹名板や案内板を設置し、鳥や植物が観察できる自然観察路を整備するのはいかがでしょうか。ここは住宅地と接しているので、日常的に人の往来があれば、市民も利用でき、話題性もあると思います。

鈴鹿事業所については、東地区の緑地には動物を呼び寄せるためにとても有利な水路・水源があり、里山公園を作るには好条件です。緑地の周辺は樹林帯が囲み、中側は草地になっています。草地は、そのまま利用しても良いでしょうし、利用度の低いエリアには森を作っても良いと思います。例えば、ドングリを植えるイベントを行い、雑木林を作るのはいかがでしょうか。社員やそのご家族に参加してもらい、さらに地域住民、小学校等にも声を掛けて一緒に行う等、経験の蓄積に合わせて取り組みの参加者の範囲を次第に広げて行くと良いと思います。

ところで、社員のご家族等が参加する里山公園や自然観察路等の取り組みを行う場合には、安全・安心を最優先に考えなければなりません。防犯の面では、目の届きやすい場所を選び、防災の面では、緊急時の連絡体制等を定め、事故等の対応を考えておかなければいけません。

●宮田

ありがとうございます。次に、沼津事業所、石岡事業所のように緑地の少ない事業所もあります。少ない緑地でもできる取り組みについてご意見をうかがいたいと思います。

●望月

沼津事業所は、市街地に立地し、緑地は全体の約7%です。エントランスとソフトボールのグランドに緑地がある他、建屋周囲は数mの幅のスペースがあり、そこに芝と低木を植えています。

望月 貫

沼津事業所建屋脇のスペース

沼津事業所建屋脇のスペース

●矢口

石岡事業所は、工業団地内に立地しています。正面玄関付近のフェンスは道路から5mほどセットバックしており、ここに樹木を植えています。また、構内は所々に芝生や植え込みがあり、駐車場にも芝生を残す等、緑化に努めています。

石岡事業所 事業所内緑地

石岡事業所 事業所内緑地

矢口 尚之助

●赤澤

沼津事業所は、中央部に広場があり、昼休みは社員の憩いの場所となっています。こうした場所の一角に在来種の草花を植栽し、名札をつけ、自然に対する関心を高めることも立派な生物多様性の取り組みです。また、建屋周辺の芝地等の小さなスペースでも同様の取り組みが可能です。

石岡事業所は、建屋と構内道路との間には芝地があり、敷地の周囲は樹木が植えられています。こうした場所も在来種の草花や樹木で緑化することができます。また、池を造成したり、小さなコンテナの水槽を設置し、水生植物や水生動物の生息空間を創ることもできます。

自然、特に生物を相手にした取り組みは、長く続けるための工夫が必要です。例えば、敷地内で観察できる草花や樹木の名前と解説を入れた地図を配布したり、敷地内に昆虫や野鳥、植物をテーマにした「生きものエリア」を作って、身近な自然を感じてもらうなど、社員の皆さんの関心を高める工夫も取り組みの1つと位置づけましょう。こうした取り組みを継続して行なえば、理解者、支持者が増え、次第に参加者の範囲も広がっていきます。

 

海外20数ヶ国のグループ会社の生物多様性を考える

●宮田

海外のグループ会社は、20数ヶ国にわたり国も地域も違っています。このような状況で、生物多様性への取り組みは、どのようなことに配慮し、どのようなことを行えばよろしいでしょうか。

●赤澤

取り組みにあたっての注意事項としては、先ずは国や州等の政策方針に沿った内容であることが基本です。例えば、緑化は、地域に固有な生態系との関連を踏まえて行いましょう。外来植物は、在来の生態系に破壊的な影響を与える可能性があるので、在来の植物を植栽するのが良いでしょう。具体的な取り組みとしては、絶滅に瀕している種の生息空間(ビオトープ)を創造すれば、生物多様性の保全という観点から高い評価を得られると思います。現在、世界的に両性類の減少が問題になっていますので、カエルが生息できる水辺環境を作るのも大変意義ある取り組みになるでしょう。

●宮田

4つのサブテーマごとにご説明、ご意見、ご提言をいただきました。特に、当社の4事業所の取り組みについては、それぞれについて詳細なご提言をいただき、取り組みの方向性についてイメージができてきました。当社グループは、本日のご提言を社会の声として、長期ビジョン『ロードマップ2030』を具体化し、事業拠点ごとの地域性を考慮した独自の取り組みを進めていきたいと考えています。本日はありがとうございました。

 

ダイアログを終えて

本日は、長時間にわたり、当社グループの生物多様性の長期ビジョン『ロードマップ2030』につきまして、専門家のお立場からご意見・ご提言いただきありがとうございました。とても有意義なダイアログでございました。また、出席者一同、生物多様性の認識をより一層深めることができました。

現在、長期ビジョンの取り組みについて検討を行っておりますが、中にはまだ体制の見直しを必要とするテーマもございます。本日いただきましたご提言を真摯に受け止め、具体的な活動として進めることで、「環境分野の先進企業の一つ」、また、「地球環境を守る代表的な企業」と社会に高く評価されるような企業グループとなり、企業としての社会的責任の一端を果たしてまいりたいと考えております。

和田 朗

取締役常務執行役員
環境部門担当
和田 朗


「人にやさしい、地球にやさしい企業グループ」を目指して
フジクラグループ生物多様性 取り組みの概要

『フジクラグループ地球環境憲章』に生物多様性を追加

1992年に『フジクラグループ地球環境憲章』を制定しました。その後、2013年4月に、当社グループは、事業活動と地球環境保護の両立が必要との認識のもとに、「生物多様性の保全」を重要な環境テーマとして追加し改定しました。

『フジクラグループ生物多様性確保ガイドライン』の制定

2012年に『フジクラグループ生物多様性確保ガイドライン』を制定し、その運用をスタートしました。「生物多様性」によってもたらされる多くの恵みによって私たちの命も暮らしも支えられています。私たちは、このことをグループ社員一人ひとりがしっかり認識するとともに私たちの事業活動の中で『フジクラグループ生物多様性確保ガイドライン』の実践を進めてきます。

フジクラグループ生物多様性確保ガイドライン

生物多様性長期ビジョン『ロードマップ2030』の作成

『フジクラグループ生物多様性確保ガイドライン』に則り、2030年を見据えた生物多様性ロードマップを2013年に作成しました。骨子は、当社事業所内に所有する豊富な緑を活用し、それらの保護と地域貢献を目指した「里山公園構想」です。国内事業所での生物調査、社員・ご家族の憩いの場としての提供、地域の皆様との共創による里山公園化、海外への展開等々と、一歩ずつ活動を積み上げて、「人と地球環境に優しいフジクラグループ」の実現を目指します。

生物多様性ロードマップ

生物多様性の保全に関する主な活動

「フジクラ 木場千年の森」

2010年11月、ビオトープ「フジクラ 木場千年の森」を創設しました。広さ2200m2、二つの池や小川、浮島、遊歩道などがあり、在来種植栽を行い、数百年前の武蔵野台地の森や林を再現しています。また、「フジクラ 木場千年の森」は、ビオトープとガーデンの両方の機能を持つ地域コミュニティのための自然空間で、地域の皆様の憩いや子供たちの自然学習に役立っています。

フジクラ 木場千年の森

フジクラ 木場千年の森

フジクラ 木場千年の森

生きもの調査

ビオトープ「フジクラ 木場千年の森」のオープンと同時に園内の生きもの調査を開始しました。四季の花、草、木、飛来した鳥、昆虫等の情報を年度毎の確認と生態調査をデータ化しています。2013年度から当社各事業所でも生きもの調査を開始しました。

東京都主催「在来種植栽プロジェクト」に参加

東京都が主催する生物多様性の回復に向けた取り組みの一つである「江戸のみどり復活事業(官民連携)」に参加しました。なお、2015年1月に「生物多様性に向けた在来種植栽フォーラム」が開催され、取り組みの成果報告が行なわれました。

在来種植栽プロジェクト

生物多様性ちば企業ネットワークに参加

当社佐倉事業所は、「生物多様性ちば企業ネットワーク」に参加しています。これは、千葉県が企業による生物多様性の保全及び持続可能な取り組み活動を支援するために設立し、2020年を目標として生物多様性条約の愛知目標達成に貢献しようとするものです。

生物多様性サテライト

千葉県生物多様性センターのご支援の下、2015年3月に当社佐倉事業所内に「生物多様性サテライト」を開設しました。この場所は、社員だけでなく、打合せ等で来場される皆様も利用されており、多くの皆様へ生物多様性についての情報を提供していきたいと考えています。

生物多様性サテライト

子供向けサイト「いきものワンダーランド」

子供向けの「いきものワンダーランド」は、当社の社外向けホームページ内のギャザリア・ビオガーデン「フジクラ 木場千年の森」のサイトにあります。小学校1~3年生を対象に“自然の中でいきる生きものたちの素晴らしさや不思議さ”をより多く伝えていきたいと考えています。

いきものワンダーランド