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CSR報告書

フジクラグループCSR報告書2013
特集

第1回ステークホルダー・ダイアログ「期待される環境経営に向けて」

私たちが、グローバルに事業を進める上でさまざまな環境課題への取り組みが求められています。これからの環境経営がどうあるべきかをステークホルダーの皆様の立場から幅広いご意見ご提言をいただき、今後の活動に役立てることを目的にフジクラグループとして最初となるステークホルダー・ダイアログを開催しました。

ダイアログを進める4つのサブテーマ

後列左から、前田、宮田、高橋
前列左から、櫻井様、村上様、末松様、加藤

【ご参加いただきましたメンバー】

【当社参加者】

 

地域コミュニティに必要とされる環境経営について

●村上[ ファシリテーター]

村上 智美

荒川流域の生態系を意識して作られた「フジクラ 木場千年の森」(以下、千年の森)は創設から2年とお聞きしましたが、思っていたより豊かな自然との印象でした。この「千年の森」にもかかわりますが、ダイアログの最初は、「地域コミュニティに必要とされるような環境経営とは」のテーマで皆様からご意見をお伺いしたいと思います。

●櫻井

NTTグループは、フジクラと同じ時期の1991年に「NTT地球環境憲章」を定めました。それから20年程たった2010年には基本方針の中に「生物多様性の保全」を加えた上で、2020年度に向けた新たなビジョン「THE GREEN VISION 2020」を制定しました。そのビジョンを通し、地域に密着し地域の皆様にご理解いただけるような環境活動が大切だと考えております。具体的な例としては、グループ会社のNTTファシリティーズが都市化によるヒートアイランド現象を避けるためにICT(情報通信技術)を使い建物の屋上や空きスペースにサツマイモを植えています。始めるに当たっては、20~30種類の植物の中から蒸散作用に優れかつ虫にも強いサツマイモを選び、水気耕栽培システム「グリーンポテト」と商品名をつけ、今ではNTTグループ全体で展開しています。サツマイモの他にもゴーヤやカボチャなども作っており、秋には収穫祭りを開き、テナントの皆様との地域コミュニティ醸成の場としております。

●村上

ICTという自社の技術を活用し、地域活性化に取り組まれているのはNTTグループならではですね。

●末松

末松 安晴

都心に自然を創られたのには驚きました。これからも維持してほしいと思います。ところで、フジクラという会社は、極めて高い、トップレベルの技術力を持っている会社です。光ファイバや光関連製品、電力ケーブルなどでは世界有数の企業であることを、近くにお住まいになっていても意外とご存じないのではないでしょうか。特に、40年程前の光ファイバの開拓時、フジクラは、当時の電電公社と一緒に世界最小の伝送ロスの光ファイバを作られたことなどを何らかの形で小学校を含め地域の方々にもご紹介していただきたいですね。今、日本では科学技術離れが進み、科学にあまり関心を持たない子供が増えている状況です。立派なショールームもありますから現物を見せながらご理解をいただくのが良いと思います。話は脱線するかも知れませんが、フジクラは設立時期から素晴らしい会社です。大正時代の1919年に藤倉学園をつくられて以来、大島と多摩で知的障がいの子供達への支援を続けて来られていますし、研究者に研究資金を助成するフジクラ財団を戦前よりつくられている。さらに1965年頃、フジクラ育英会を作り次の時代を担う若者達を育てるために学資の支援を行なってこられた。これらのことが都心にこれだけの自然を誇る「千年の森」を創ることにも結びついているのではないでしょうか。フジクラには、そういう企業文化が息づいているのですね。

●村上

「B to B」企業の製品ですから、地域の方やお子様にはフジクラという会社があるとはわかっていても、その技術力が世界を支えているということも含めて具体的に伝えていかないと、理解いただくのは難しいかもしれませんね。あわせて、フジクラの戦前から続くすばらしい企業文化の延長線上に「千年の森」があるとするなら、これらをフジクラの事業活動や企業文化の中でどのように位置付けるか明確にすることで地域の方や社員にもその意義が浸透しやすくなるのではないでしょうか。たとえば、社員の中にビオトープの専門家を育てられ、その方が四季を通じての勉強会などで直接地域の方々と触れ合い、フジクラ自身の言葉でフジクラがなぜ「千年の森」を創ったかなどが伝えられていくと「千年の森」は、その存在意義、またその価値も増すと思います。

●加藤

私もそのように思います。「千年の森」を創ると自然一辺倒になりがちです。村上様のお話のように「千年の森」をうまく活用したいと思います。末松様からは、フジクラの企業としての歴史と結びつけて地域の方に科学技術と併せてご理解いただくと私たちをもっと身近に感じていただけるのではないかとの素晴らしいご提言をいただき感じ入っております。

 

グローバル化で世界が期待する環境への取り組みについて

●櫻井

櫻井 義人

NTTグループは、先頃「新たな中期経営戦略」を発表し、グローバル・クラウドサービスを事業の基軸としてグローバル化がより重要なものとなっております。このような海外展開の中でもNTTコミュニケーションズやNTTドコモが海外での事業展開で植樹など環境への取り組みを進めております。最新技術をお持ちのフジクラは、それぞれの国や地域の特徴や規制を踏まえつつ、環境配慮型の製品やテクノロジーでリードされていくと良いと思います。話がそれるかもしれませんが、グループ会社のNTTファシリティーズのBCP(事業継続計画)の事例をご紹介しますと、“私たちは100年間BCPをやってきました、私たちは災害に対しても頑張れるんです”のメッセージを伝えるのに「100年BCP」のネーミングやブランド、ロゴデザインを作りました。フジクラもすばらしい「千年の森」を見た方や聞いた方が、“あれはフジクラだったんだ”となるブランドのネーミングをされてPRをされてはいかがでしょう。

●末松

フジクラが世界に85以上の拠点をお持ちだということは、その高い技術力が認められて世界が必要としていることの現れだと思います。フジクラは、NTTとの連携で、世界で初めて光ファイバ通信を実証しました。それまで太い銅のケーブルだったものが細さ1/3ミリ程、髪の毛ほどの線で済むということは、環境負荷の少ない材料が使えるということであり、このことが世界に与えた影響は抜群のものがありました。大量の情報伝送が可能になり、テレビ会議や携帯電話などで人が移動しなくても済むようになった。現在行っている超電導などの最先端の研究開発も、環境配慮型社会の実現を進めるものとなる。その施工性、保守性で世界をリードする光ファイバ融着接続機※も絶え間ない研究の賜物です。こうしたことを中学生にもわかるようなわかり易い言葉で伝えていただきたいですね。(※光ファイバ融着接続機:直径10ミクロンの光ファイバ十数本を簡易かつ低い伝送損失で接続できる技術)

●加藤

加藤 隆昌

その通りだと思います。最近の事例で申し上げますと、自動車用電線の工場を南米のパラグアイに作りました。パラグアイでは外資系で工業用生産品を作る企業は初めてです。“私たちは、社会の環境をより良くしたり、通信で人の移動を減らすことにも貢献する製品群を持った会社なんですよ”と伝えることでパラグアイの人たちがより身近に感じていただけると思います。情報発信をすべき地域はたくさんあるのだと思いました。

●村上

フジクラは光ファイバなどの製品や技術で、通信や電力インフラのなかった国や地域の発展の重要な部分を担っておられます。それだけでもCSR的には重要な責任・役割を果たされていると思います。今後、たとえば製品それぞれの環境効率(環境性能)がどれだけ向上しましたというだけでなく、フジクラ製品が社会にどれだけ利用され、社会全体でどれだけの環境負荷低減に貢献しているかを具体的な数字で表現できるようになれば、投資家やお客様をはじめとするステークホルダーに意味のある重要な訴求になりますし、フジクラの本業での強みがより理解しやすくなると思います。「お客様に感謝され、社会からは高く評価される企業グループ」になるためにも情報発信は重要ですね。

 

社員・家族が参画できる環境活動について

●高橋

高橋 浩一

佐倉事業所(千葉県)は、国内の事業所では一番大きく、47万7千m2あります。工業団地にありますので20%は緑地で残さなければなりません。そのスペースに木を植えて緑地にするか、社員の健康対策に使うかなどいろいろな使い方ができると考えています。現在、社員研修の一環として、事業所内にある自然を"みんなはどう使いたいか"などの意見を集めています。将来的には社員と地域の方とがコミュニケーションを図り、連携へとつなげていければと思います。それもお金をかけずにやりたいと考えています。

●櫻井

NTTグループは、社員数が20万人以上ととても多い企業です。社員と共にその家族やOB、地域の方も一緒に参加できる「Green with Team NTT」があり、地域の環境保護や地域貢献活動を広く実施しています。その活動をご紹介しますと、「環境クリーン作戦」では11万人以上が参加し、ゴミ拾いやペットボトルのキャップを3千200万個集めたり、子供たちの環境教育を含めた植樹や森林整備を行っていて、これまでに全国約50ヶ所に総面積約200ヘクタールで行ってきました。その他にも富士山や地域の河川の清掃活動等を行っています。フジクラも時間をかけて進めていかれたらいかがでしょう。このような社員とその家族が一緒に活動することには2つの意味があると思います。ひとつは、家族の調和です。子供は親の姿を見て育つものです。自分の親がどんな仕事をしているかを知ることで家族の信頼や理解が深まると思います。もうひとつは、多くの家族が地域の拠点に集まることで、そこを中心に広がりが出来あがることです。「千年の森」などで社員とその家族が子どもの頃から参加して環境への意識や活動が根付くことは重要ではないでしょうか。

●末松

「千年の森」の見学の途中の公道で、研究仲間に著名なフジクラのOBにお会いしました。OBを含めてフジクラを好きな職員がたくさんおられるのだなと感じています。そこで思うのですが、社員もOBも一緒に集まれるような場所があると良いですよね。「千年の森」もそうですが、佐倉事業所の中に広い場所があるのであれば、みんなで集まり公園や農園を作り、そこで年に1~2回、家族や子供も含めてみんなで集まり、植樹や農作物を作って食べるとかそんな楽しい場所があると良いですね。しかもお金をかけないで自分たちでやれるのが良いのではないでしょうか。最近は大学でも創立記念日などに卒業生に来ていただく「ホームカミングデー」があります。同様に事業所を使って家族ぐるみで集まれるのであれば、それはすごいことです。その時に工場も見てもらい、子供たちに自分の親は何をやっているのかを理解していただくのは良いと思います。

●村上

貴社が「社会から高く評価され、みんなに愛される企業グループを目指す」という意味では、先程からお話の出ている家族を含めた取り組みも必要ですね。「千年の森」をフラッグシップ(中心)に各事業所などで、社員だけでなく家族や地域に企業や事業の説明などのコミュニケーション機会をいろいろとつくっていかれると「社会」の声に耳を傾けるという企業の姿勢が出来ていく素地にもなると思います。「千年の森」はそのきっかけとなるような気がします。

 

社会やお客様が求める当社グループの環境経営について

●櫻井

お話に出た情報発信やコミュニケーションといったキーワードですが、NTTグループでも重要だと考えております。NTTグループは、CSRコミュニケーション活動の一環として、12年間に亘りその年の重要なCSRテーマで、有識者をお招きしてパネルディスカッションなど最新情報を満載したシンポジウムを開催しております。この2012年度は「グリーン調達への取り組みと情報開示」のテーマで開催しました。このシンポジウムを通じてNTTグループのCSRの取り組みの充実と情報発信、また情報の共有化も行なっています。ご参考にされてはいかがでしょう。

●末松

フジクラは、大きな企業グループです。普通の人にフジクラと言えば光ファイバではなくゴルフのドライバーを思い浮かべます。グループにはゴルフのドライバーもある、光ファイバもある、社会貢献もある、最先端の研究開発もある、そして「千年の森」と、それらを全部含んだ総体的な情報発信が必要ではないかと思います。それによって社会の人は、フジクラはすばらしいことをやっている会社だと理解ができ、社会に必要な企業なんだと思ってもらえるようになるのではないでしょうか。

●村上

環境対応を含めたフジクラ事業の総体をフジクラの経営としての文脈の中できちん整理して社会に伝えていくことで、フジクラのような「B to B」企業も理解され易くなるのではないか、私はそう感じました。これにより、フジクラの社会における存在意義がより見えてくるように思いますし、フジクラに対する評価は変ってくるのではないでしょうか。貴社は今回初めて、ステークホルダー・ダイアログを開催されました。このこと自体が新たなステップへ進んでおられることの現われです。今後もこのように様々なステークホルダーとコミュニケーションされていかれれば、きっと社会の評価も付いてくると思います。本日の意見や提言が今後の活動のご参考となれば、私たちもうれしく存じます。

ダイアログを終えて