株式会社フジクラ

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R&D
フジクラ技報

No.109 2005年10月

近年,携帯電話における小型化,多機能化はめざましいものがあります.一般に携帯電話をはじめとする無線機器には,アンテナで受けた電波を処理するための高周波集積回路が搭載されており,これには省スペース化や高性能化が求められています.当社ではこれらの要求を同時に満たすために,ウエハレベルパッケージ(WLP)技術による高性能オンチップインダクタを試作しました.

現在,高周波集積回路用インダクタとしては,シリコンCMOSプロセスによるオンチップインダクタが広く用いられています.しかしながらこれにはAl配線の抵抗による損失や,インダクタとシリコン基板との間の磁気的な結合による損失が存在し,回路の性能を制限する大きな要因となっています.当社では,銅メッキによる多層配線の採用によって配線抵抗を低減し,さらに,多層の厚膜樹脂の採用によって磁気的な結合を低減してインダクタの高性能化を実現しました.いずれも,高密度実装技術として実用化されているWLP技術をベースとしています.

図中の4つの写真は,いずれもWLP技術によるオンチップインダクタですが,その形状の違いから,上から順にスパイラル(角型),スパイラル(丸型),ソレノイド,メアンダと呼ばれます.配線長や磁界分布が異なるため,それぞれが異なった特徴を有します.それぞれのインダクタを挟むかたちで配置された共通のパターンは,測定のためのグランドパターンです.

当社ではすでにファウンドリサービスとしてWLPの量産を行っておりますが,今後はこのオンチップインダクタをWLPのラインナップの一つとして提供していくとともに,RFIDタグ用アンテナ等への応用を目指した開発を進めていきます.

論文記事

照明用白色LED

白色発光ダイオード(白色LED)は,将来,一般照明機器用途の白熱電球や蛍光灯に取って代わることが期待されている.照明用途においては,高発光効率や高演色性,さまざまな色合いなど,設置場所や用途に応じた要求がある.われわれは窒化物蛍光体を用いることで,それぞれの用途に対応する白色LEDを開発した.
本稿では実現した白色LEDの特性について報告する.

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外径0.5mm補強心線および単心型架空ケーブル

Fiber To The Home(FTTH)敷設工事の簡易化を目的として,UV硬化型樹脂被覆の0.5mm補強心線,およびそれを用いた単心型架空ケーブルを開発した.0.5mm補強心線は,従来使用されている0.25mm着色心線よりも,識別性,取り扱い性に優れている.また,市販のツールを使用して容易に0.25mm着色心線に口出しできるため,従来の接続工具が使用可能である.

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トリプル・プレイ対応ONT用トランシーバ

北米におけるトリプル・プレイは映像信号をアナログ信号のまま波長多重にて配信する方式が先行しており,PON ONT用トランシーバとして,従来のデジタルトランシーバと一体化された一心双方向タイプが標準となっている.これを受けて当社でも同様のタイプのトランシーバを開発し,北米ユーザへのサンプル納入も行っている.

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新型光ファイバ心線対照器

光ファイバネットワークを家庭にまで広げるFiber To The Home(FTTH)の敷設工事や保守作業では,光ファイバ心線対照器を用いた心線対照や光損失測定が必要である.光ファイバ心線対照器は,光ファイバ接続部を収納する架空クロージャなどの狭い空間で使用されることが多く,作業性や携行性の良さが要求されている.また,さまざまなネットワーク環境に対応するため,複数の光源を搭載した心線対照用光源も必要である.以上の市場要求にこたえるため,光ファイバ心線対照器と心線対照用光源を新たに開発した.

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Fiber To The Home(FTTH)用 ケーブル外被把持型現場組立光コネクタ

Fiber To The Home(FTTH)を経済的に実現する技術の一つとして,我々は現地での組立作業性に優れたケーブル外被把持型現場組立光コネクタを開発した.このコネクタは,ケーブル外被をコネクタに直接把持することでキャビネット等への収納作業を向上させ,専用工具なしでコネクタを組み立てることで作業性を向上させたことを特徴としている.接続損失をはじめとした光学特性評価,信頼性試験でも良好な結果が得られている.

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二段階分割型テープSZスロット光ケーブル

FTTH網の効率良い構築にはファイバの有効利用が必要である.日本においてはテープ心線を広く使用しており,単心での利用に際し,任意の部分で容易に単心に分岐できるテープ心線へのニーズが高まってきている.一方,既設ケーブルとの接続性を考慮し,すべて単心に分離することなく,テープ心線単位で扱うことへの要望もある。
そこで,一旦2心テープ心線や4心テープ心線に分割した後に,単心へ分離できる二段階分割型テープ心線を開発した.本テープ心線はSZスロット型ケーブルへの適用が可能である.二段階分割型テープ心線を使用した100心および640心SZスロット型ケーブルを試作・評価して良好な結果を得た.

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FPCにおけるインピーダンス制御の一考察

従来,電子回路の分野においては,プリント配線板は接続すべき配線が正しくプリント基板上で配線されており,配線パターンに流れる電流に対して十分な電流容量を持っていれば,プリント基板の動作に問題は発生しなかった.数MHz以下程度の低速信号しか使用されない装置では,特性インピーダンスを考慮する必要があるのは装置間を接続する通信ケーブルのみであった.
電子回路の動作速度が速くなると,上記要求条件のみでは充分ではなくなり,プリント基板でも特性インピーダンスの制御が必要となる.
近年,装置内部で周波数が数100MHz~数GHzの電気信号が使用されることが珍しくない.このような高速信号を伝送させる場合,たとえ伝送線路が装置内部のみの短いものであっても,この伝送線路を分布定数回路とみなす必要があり,それゆえプリント配線板上での特性インピーダンスの制御が必要となる.
本稿ではこのような背景から要求が出てきているFPCにおける特性インピーダンスの制御について,当社での取り組みと現状の成果を報告する.

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FPC材料の要求特性と今後の動向

デジタル家電の小型化,薄型化,高機能化にともない,FPC(Flexible Printed Circuit)の採用が拡大し,軽,薄,短,小に「柔」の要求も加えられ,さらに高密度化が進むと考えられている.また,環境問題への対応も必須になりつつある.ファイン回路,多層,高屈曲,柔軟,高耐熱,低誘電率,環境問題に対応したFPC材料の開発が進められている.

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高ストロークメタルドーム

自動車の押しボタンスイッチは,省スペース化,好フィーリング化が求められる.このため従来から高ストロークの特性を示すラバードームが採用されてきたが,これをメタルドームに置き換えることでさらなる薄型化が可能である.そこで当社では,小型で高ストローク化を実現した高ストロークメタルドームを開発した.開発品の設計は有限要素法を用い,試作では独自に作製した試作金型を使用した.また,試作品の荷重特性,耐久特性の評価を行い良好であることを確認した.

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高導電銀ペーストの応用商品

メンブレン配線板は,導電銀ペーストをポリエステル(PET)フィルム上にスクリーン印刷して形成される.通常のサブトラクト法によるフレキシブルプリント配線板(FPC)に比べ,製造プロセスがシンプルで低コストであることが特徴である.われわれは,新たに回路抵抗値を大幅に低減する高導電銀ペーストを開発し,それを適用した高導電メンブレン配線板を開発した.本報では,応用商品とその特性を紹介するとともに,新たな高導電銀ペーストの用途についても紹介する.

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機器用電線における環境対応技術

電線・ケーブルの被覆材料には電気特性,機械特性,加工性等の特性が優れ,また廉価であるためポリ塩化ビニル(以下PVCと略す)が使用されることが多い.しかし,不適切な燃焼条件によるPVCからのダ イオキシンの発生,環境ホルモンや鉛化合物の溶出等による環境汚染に対する規制は増加する傾向にある.
家電・電子機器分野においては,すでに筐体,基板およびはんだ等の環境対策が進められており,使用される電線についても同様に要求されている.本報では電子機器用エコ絶縁電線について,アウトガス測定をはじめとする環境対応技術について報告する.

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難燃ポリエチレンの誘電特性

われわれは各種難燃剤の誘電特性を調査し,高周波領域(GHz)での誘電特性を悪化させない難燃剤を見出した.さらに高周波での誘電特性に優れたポリエチレンを開発し,両者を用いた難燃絶縁体を作製することにより,高周波領域(GHz)での誘電特性が良好なInfiniBandTMケーブルを開発した.

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超音波抽出による樹脂中の六価クロム定量分析

2006年7月に欧州で施行されるRoHS指令の規制対象物質として六価クロムがあげられている.電気・電子機器に用いられる電線被覆材などの樹脂部品も対象となるが,樹脂中の六価クロム定量分析については分析手法が確立されていない.そこで当社では,各種抽出液ならびに抽出方法の検討を行い,現在の公定法と比べて迅速かつ抽出効率の高い新手法を開発した.新手法では,DIN53314「皮革中の六価クロム測定方法」で20%程度であった抽出効率を80%まで向上できた.
また,分析法としてイオンクロマトグラフ(ICS-2000)の検討を行い,グラジェント機能と電解型脱塩装置により,公定法で採用されているジフェニルカルバジド吸光光度法よりも高感度で測定できることを確認した.

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シリコン貫通配線基板の高周波特性

電子部品パッケージのさらなる小型化,高性能化にともない,3次元実装技術の実用化が期待されている.
当社では,光学デバイスや高周波デバイスなどのウェハレベルパッケージを目的として,貫通配線基板の開発を進めている.この貫通配線の高周波特性を評価した結果,貫通配線外周のシリコン酸化膜の厚さとシリコン基板の比抵抗が高周波特性に大きく影響することが判明した.また,基板の比抵抗を大きくし,貫通配線とシリコン基板間の浮遊容量を低下させることで,貫通配線の伝送特性が大幅に向上することが明らかとなった.

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RF-ID用オンチップアンテナ

次世代パッケージ技術として量産を開始したウェハレベルパッケージ技術を用いて,無線認証システム(Radio Frequency IDentification systems,以下RF-IDと記す)用ICチップ上に作製可能なオンチップアンテナを形成し,2.4GHz付近における特性評価を行った.作製したアンテナのVSWRは電磁界シミュレーションの結果と良い一致を示し,出力300mWの送信波を受けた際に400mm以上の通信距離を確保可能な性能を示した.この結果,WLP技術によりRF-IDタグの小型化が可能であることを確認した.

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