「人間社会における多様性」を意味するダイバーシティの基本的な概念は、企業という組織に置き換えますと、「社員個々人の違いを尊重し、その違いに価値を見付け出し、社員全員を組織内で平等に活躍させることで企業としての能力を最大限に発揮させること」です。私たちは、ダイバーシティに関するこのような概念をベースとして「女性の活躍推進」、「障がい者雇用」、「外国人社員の登用」などのテーマに積極的に取り組んでいます。
当社グループのダイバーシティに関する基本的な理念・方針としては、以下のものがあります。
- ダイバーシティの基本理念
- 「多様な人材がお互いの個性を積極的に認め合うことでそれぞれの強みを活かし、能力を最大限に発揮できるような組織風土を醸成する」
- ダイバーシティを尊重する経営方針
- 「一人ひとりが持てる能力を十分に発揮し、顧客ニーズに的確に応え、フジクラを優れた企業にすること、そのために、それぞれが互いを尊重し、激励し、協力し合う全体最適な風土を作りだす」
- 「フジクラグループCSR活動指針」の2指針
- 〔指針①〕
すべての社員が自主性と創造性を十分発揮できる、差別のない、明るい職場作りを目指します。
〔指針②〕
社員の機会均等及び仕事と私的生活との調和に努めます。
当社グループのダイバーシティに関する主な取り組みは、国籍・人種・性別・宗教・年齢などを問わず、多様な人材が活躍できる組織づくりをめざし、具体的には以下の取り組みを推進しています。
また、2016年12月に当社社長が「フジクラグループ ダイバーシティ推進宣言」を行いました。
-
1.女性社員の積極的な採用と就労環境の整備
-
2.外国人社員のための日本語力向上支援や就労環境の整備、外国語対応の推進
-
3.障がい者の積極的採用、特例子会社設立
すべての女性が、その生き方に自信と誇りを持ち、活躍のできる「女性が輝く社会」をつくることは、国連を中心とした国際社会並びにわが国の未来づくり施策の重要な課題のひとつです。国連グローバル・コンパクトの一員として当社並びにグループ会社は、女性社員が活躍できる企業環境づくりへ取り組みを進めています。
グローバルに事業を展開している当社グループの「女性の活躍推進」に向けた取り組みは、国連「ナイロビ将来戦略勧告」、国連「女性の経済的エンパワーメント原則」等に加えて、わが国の「男女共同参画社会基本法」や「男女共同参画基本計画」、その後の「第3次男女共同参画基本計画」等の内容を踏まえ、さらには、最近の欧州連合(EU)の動向等も考慮し推進しています。
具体的な活動として主に次のようなものがあります。
-
1.女子高生・女子大生の理工系分野への興味や関心、理解を促して次世代を担う女性の科学技術人材を育成するプロジェクト「理工チャレンジ(略称:リコチャレ)」に協賛し、リコチャレ応援企業として女子学生の受け入れを行っています。
-
2.国連が制定した「持続可能な開発目標(SDGs)」の「目標5・ジェンダー平等を達成し、すべての女性及び女子のエンパワーメントを行う」を優先課題として取り組みを進めています。
-
3.国連グローバル・コンパクトや国連UN Women等による「女性のエンパワメント原則(WEPs) 7原則」に向け、行動に起こすためのツールである「WEPsギャップ分析ツール」の検討会議に参加しています。
当社グループの女性の活躍推進に向けた取り組みは、国連を中心とした国際的な動向及びわが国の基本法・基本計画をベースに、当社グループのダイバーシティの基本理念やCSRの活動指針に基づく中長期ビジョンと目標を定めています。
-
1.総合職(地域限定含む)の女性比率を、2015年3月時点の1.4倍以上にする。
-
2.2021年度までに、女性管理職比率を、2015年3月時点の2倍以上にする。
多様な人材活用の専任組織として人事部ダイバーシティ推進チームによる「ダイバーシティ推進プロジェクト」で取り組みを進めています。
-
1.男女平等な採用・登用の継続
-
2.採用内定者へのフォローの強化
-
3.ライフイベントと仕事を両立しやすい環境づくり
-
4.女性社員および職場の上司・責任者のサポート
-
5.有給休暇取得率向上促進
■CSR重点課題に対する2015年度計画・実績、2016年度目標
2015年度 |
計画 |
活動結果 |
女性管理職比率目標値
1. カウンセルで離職減
2. 事務系採用で女性5割 |
・進級対象者に対してキャリア面談を実施
・2016年度新卒女性採用比率54.5% |
2015年度 |
|
女性(人) |
(前年比) |
女性比率(%) |
(前年比) |
男性(人) |
管理職数 |
14 |
(±0) |
1.5 |
(±0) |
890 |
うち部長職 |
2 |
(+2) |
1.4 |
(+1.4) |
145 |
役員(執行役含む) |
0 |
(0) |
0.0 |
(0) |
29 |
うち執行役員 |
0 |
(0) |
0.0 |
(0) |
16 |
2016年度 |
計画 |
女性管理職比率向上
・女性社員の意識調査・面談の実施
・女性社員向け及びマネージャー向けの研修・社内セミナー実施 |
「女性が輝く社会」をつくることは、日本の未来に向けた重要な取り組みテーマのひとつです。 当社は、2016年3月、女性の活躍に必要な職場環境整備に関する「女性活躍推進行動計画」を策定しました。現在、当社は、「えるぼし」(女性の活躍の取り組みが優良な企業に使用が認められる認定マーク)取得に向けた取り組みを推進しています。
- 1. 計画期間: 2016年4月1日 ~ 2021年3月31日
-
- 2. 当社の課題
- ①女性社員比率の向上
当社は、採用社員数の半数以上を技術系が占めており、かつ女性の少ない専門技術分野からの採用を主としているため、採用者数に占める女性社員比率が低く、女性管理職の比率も低い。
②働きやすい環境づくり
長時間労働の改善、有給休暇取得率の増加等による生活と仕事が両立できる環境づくりを行っている。
- 3. 目標
- ①総合職(地域限定含む)の女性比率を、2015年3月時点の1.4倍以上にする。
②2021年度までに、女性管理職比率を、2015年3月時点の2倍以上にする。
- 4. 取り組み内容
- ①男女平等な採用・登用の継続
②総合職・技術系 採用内定者フォロー強化
③ライフイベントと仕事を両立しやすい環境づくり
④女性社員および職場上長のサポート
⑤有給休暇取得率向上促進
女性のエンパワーメント原則(WEPs)と当社の取り組み
当社グループは、国連「女性のエンパワーメント原則」(WEPs※)のジェンダー平等と女性のエンパワーメントをCSR課題として取り組むことで、社員の活力や企業の成長促進を目指しています。具体的なメリットとしては、社員満足度や生産性の向上、他社と比較することで自社の取り組みレベルの把握や好事例の共有に役立てられる等々が考えられています。
- ※WEPs(Women's Empowerment Principles)
- 2010年3月に国連グローバル・コンパクト(UNGC)と国連婦人開発基金(現 UN Women)が協働で作成した7つ原則。エンパワーメントとは、社会学用語で、人々に夢や希望を与え、勇気付け、人が本来持っているすばらしい生きる力を湧き出させること。
- 1)トップのリーダーシップによるジェンダー平等の促進
- 2)機会の均等、インクルージョン、差別の撤廃
- 3)健康、安全、暴力の撤廃
- 4)教育と研修
- 5)事業開発、サプライチェーン、マーケティング活動
- 6)地域におけるリーダーシップと参画
- 7)透明性、成果の測定、報告
現在、国連グローバル・コンパクトと国連UN Women等によって、企業が「WEPs7原則」に対し、行動に起こすためのツール「WEPsギャップ分析ツール」の検討が進められていますが、私たちもこのツールの検討会議に参加しています。当社グループのCSR委員会は、「WEPsギャップ分析ツール」が完成するまでの暫定の分析ツールとして国連UN Womenが公表しているチェック項目を活用して自己評価・分析を行っています。その結果は、以下の通りです。
▼国連UN Womenの分析ツールによる自己分析(フジクラ)
7原則 |
企業のためのチェックリスト |
当社の対応状況 |
目標1 |
1-1 ・ジェンダー平等の企業姿勢を自社のウェブサイトの社員募集や持続可能性報告書に明示していますか? |
○ CSR統合報告書、WebCSRサイト |
1-2 ・企業のジェンダー平等方針や計画を擁護する特定の役員を置いていますか? |
○ CSR委員会「社会(S)」担当役員 |
1-3 ・男性管理職研修を含め、女性の参加や共同参画の研修を行っていますか? |
○ 各種の研修・セミナーに参加 |
1-4 ・年次報告書や持続可能性報告書にジェンダー平等の目標達成のトップメッセージを掲載していますか? |
× 現在、検討中 |
目標2 |
2-1 ・社内役員と経営管理職に関するジェンダーの内訳がありますか? |
○ CSR統合報告書に掲載 |
2-2 ・会社は昇進をジェンダー、職種、役職別に記録・分析していますか? |
○ データベースで管理 |
2-3 ・給与の公平性について、定期的な見直しを行っていますか? |
○ データベースで管理 |
2-4 ・雇用時に、全体の30%以上の女性を募集し、面接していますか? |
○ 事務系採用で女性5割 |
2-5 ・面接官の中に適正な数の女性が含まれていますか? |
○ 人事採用の女性担当 |
2-6 ・女性従業員の男性従業員と比べた職場定着率は、職種、役職によって差がありませんか? |
○ 差はない |
2-7 ・会社は、女性と男性の特有なニーズを勘案した柔軟な仕事上の選択肢を準備していますか? |
○ 特殊な職種、職場を勘案 |
2-8 ・ジェンダー差別、セクハラ、暴力に関する苦情を報告する上で利用しやすい手段が用意されていますか? |
○ 相談窓口開設 |
目標3 |
3-1 ・安全、その他の装備は、女性と男性に適切なサイズを用意していますか? |
○ 作業服、安全靴等の対策 |
3-2 ・女性、男性別のトイレや更衣室はありますか? 会社の敷地には適切な照明がありますか? |
○ トイレ、更衣室、照明等設置 |
3-3 ・会社が提供する保健医療サービスに、女性の医療職が配置されていますか? |
○ 女性の医療職が配置 |
目標4 |
4-1 ・研修や能力開発の機会の男女比はどうなっていますか? |
○ 職種、研修テーマで差はない |
4-2 ・職種別、役職別に分析すると女性と男性それぞれが年間何時間研修を受けますか? |
○ 女性・男性で実績把握 |
4-3 ・研修や教育プログラムの予定作成時に従業員の家庭での役割は考慮されていますか? |
○ 配慮している |
目標5 |
5-1 ・女性所有の納入業者数を把握するために現存のサプライチェーンの分析を行っていますか? |
× 女性の区別はしていない |
5-2 ・あなたの企業の納入業者のうち何社がジェンダー平等の方針やプログラムを持っていますか? |
△ CSRアンケート実施先は把握 |
5-3 ・納入業者のうち、女性が所有する会社の割合は? |
× 女性の区別はしていない |
5-4 ・マーケティングや広報資料で女性や女児の記述へのクレームをどう記録し、どう処理していますか? |
× 女性の区別はしていない |
目標6 |
6-1 ・地域社会の男女平等推進で、取り組みを支持し、どの位、女性・女児・男性・男児にアクセスしますか? |
△ 地域の取り組みがあれば対応 |
6-2 ・フォーカスグループによる調査や書面のアンケート調査を行っていますか? |
× 実施していない |
6-3 ・地域社会への参加活動の基準や方針を成果やコミュニティからの意見に照らして見直していますか? |
○ 地域コミュニティとの連携推進 |
6-4 ・コミュニティへの女性の貢献度を評価し、公表していますか? |
△ 実施だが女性の区別はない |
目標7 |
7-1 ・女性の地位向上のための基準に沿った追跡調査は、企業が前進していることを証明していますか? |
○ CSR統合報告書実績報告 |
7-2 ・成果への評価、 分析、話し合いのために、どのような機会を設けていますか? |
△ 第三者評価実施、ダイアログ検討 |
[集約結果] |
|
|
○:実施している |
19個 |
(68%) |
△:明確ではないが実施、検討中 |
4個 |
(14%) |
×:未実施 |
5個 |
(18%) |
当社グループの女性管理職比率の2015年度実績は以下の通りです。
女性管理職比率(%) |
9.4 |
女性の部長職以上の比率(%) |
13.4 |
女性の役員数(人) |
29 |
女性管理職比率(%) |
1.5 |
女性の部長職以上の比率(%) |
0.9 |
女性の役員数(人) |
0 |
女性管理職比率(%) |
17.4 |
女性の部長職以上の比率(%) |
18.3 |
女性の役員数(人) |
29 |
|
アメリカ |
アジア |
EU・他 |
女性管理職比率(%) |
35.3 |
6.7 |
17.4 |
女性の部長職以上の比率(%) |
19.1 |
18.5 |
16.1 |
女性の役員数(人) |
3 |
23 |
3 |
集計条件 |
【調査時点】 |
2016年度3月末時点 |
【対象企業】 |
当社を含む主要グループ会社55社
(フジクラ、国内グループ会社24社、海外グループ会社30社) |
【カバー率】 |
99% |
当社は、社会的責任とノーマライゼーション(障がい者や高齢者と一緒に助け合うこと)実現の観点から、積極的に障がい者雇用と職場環境の整備に取り組んでいます。グループ全体で障がい者の働きやすい就業環境の改善を進め、社会的責任とノーマライゼ―ション※の実現 、法定雇用率2%の達成を目標としています。
- ※ノーマライゼ―ション
- 障がい者や高齢者がほかの人々と等しく生きる社会・福祉環境の整備や実現を目指すこと。1950年代にミケルセン(デンマーク)らの知的障がい者の施設改善運動から生まれた理念。障がいを持っていても地域社会で普通の暮らしを実現を目指して社会環境の変革に寄与。国連の国際障がい者年(1981年)に伴い広く知られるようになった。現代の社会福祉の基本理念ともなっている。
- ①障がい者雇用率2%の達成
- ②環境の整備
- ③特例子会社の検討
2015年度 |
計画 |
活動結果 |
1.特例子会社を設立で国内
グループ全体で雇用率向上 |
・特例子会社「フジクラキューブ」を設立
・2015年度 雇用率2.0%で目標達成 |
2011年度末 |
2012年度末 |
2013年度末 |
2014年度末 |
2015年度末 |
1.85% |
1.9% |
1.85% |
1.97% |
2.0% |
2016年度 |
計画 |
1.特例子会社「フジクラキューブ」の安定運用と事業拡大
2.法定雇用率遵守 |
|
支援の制度 |
制度の内容 |
支援制度 |
・特別通院休暇制度
・設備面の充実
・スポーツ競技社員支援制度 |
障がい者の定期的通院サポート(年6日)
障がい者用トイレ・駐車場・補聴機用電話・休憩室設置
障がい者スポーツ競技を行う社員を支援 |
私たちは、企業の社会的責任(CSR)活動の一つとして、また「多様な人材がお互いの個性を積極的に認め合うことでそれぞれの強みを活かし、能力を最大限に発揮できるような組織風土を醸成する」とする『ダイバーシティの基本理念』の下、障がい者を積極的に雇用しています。また、誰もが活躍できる企業を目指す当社の100%出資の子会社として、当社佐倉事業所内に、2015年11月2日、「株式会社フジクラキューブ」を設立しました。
2016年4月1日、フジクラキューブは、障がい者5名を含む10名の従業員体制で「特例子会社」の認定取得に向けて事業をスタートし、当社佐倉事業所構内の緑化、社宅・寮の清掃、社内報発送などを担っています。
2016年6月1日、木場公共職業安定所(東京都江東区)にて、親会社である当社と共に「株式会社フジクラキューブ」は「特例子会社」の認定書を受用しました。
フジクラキューブ社は、5年後の2020年には30名程に従業員を増し、業務も拡大し、グループ全体の業務効率化、地域の障がい者雇用促進に貢献したいと考えています。
社名 |
株式会社フジクラキューブ |
所在地 |
千葉県佐倉市六崎1440 |
設立 |
2015年11月2日 |
代表者 |
代表取締役社長 水野博之 |
資本金 |
1000万円 |
株主 |
株式会社フジクラ100% |
認定日 |
2016年6月1日 |
従業員 |
10名(内 障がい者5名) |
業務 |
グループ会社の業務の請負いで緑化、清掃、事務代行など |
※特例子会社とは、障がい者の雇用の促進等に関する法律の規定に基づき、障がい者雇用で一定の要件を満たした上で厚生労働大臣の許可を得た株式会社のことです。特例子会社は、障がい者雇用率算定において、その子会社の障がい者数を親会社及び企業グループの雇用分として合算することが認められています。
積極的に障がい者雇用に取り組んでいる当社には、車いす陸上のアスリートも入社しています。職場環境を整備する一方、パラリンピック出場を目指す車いすアスリート社員へのスポーツ支援も積極的に行っています。
グローバル経営の推進にあたり、国境を越えた人財マネジメントの重要性が高まるなか、日本国内においても50名を超える外国人社員が活躍しています。現在、外国人社員の採用を推進し、世界各国から、毎年数名が入社しています。
2015年度 |
計画 |
活動結果 |
1.採用広報の強化 |
・学生向け大企業研究セミナーの開催
・海外における採用活動推進(北米、インド、アジア)
・キャリア採用の強化 |
2.人材データベース活用によるタレントマネージメント推進 |
・人事考課、目標管理とスキルのデータベース化開始 |
3.キャリア採用力強化 |
・社員向けのキャリアカウンセリング開始 |
4.グローバルトレーニング |
・海外子会社幹部候補生向け研修
・海外研修(海外トレーニー)施行 |
2015年度 |
|
外国人社員(人) |
(前年比) |
管理職数 |
5 |
(+1) |
うち部長職 |
0 |
(0) |
役員(執行役含む) |
1 |
(±0) |
うち執行役員 |
1 |
(±0) |
2016年度 |
計画 |
1. グループ共通の人事プラットフォーム構築 |
2. 人財育成
①高度専門家やエンジニア、リーダー人財のモチベーションとリテンションの向上
②グループ全体で育成・登用の機会の増出
③人財の適正配置
④流動化を加速するための、共通プラットフォームの構築 |
3. ダイバシティ推進
①多様な人財の価値観を受けれる風土醸成
②労働生産性を高める就労環境づくりの構築 |
4. 人材データベース活用によるタレントマネージメント推進とグループ展開 |
5. 海外子会社の幹部候補者向け研修の本格的開始 |