長期的な信頼関係
社会変化への適応
環境
コミュニティ
「技術のフジクラ」と「進取の精神」をDNAとして
2023年度のフジクラグループの業績は、売上高と営業利益は過去最高を記録した昨年度と同じ水準に達し、経常利益は2期連続、当期純利益は3期連続で過去最高を更新しました。当社グループは、持続的な成長を目指し、企業価値の一層の向上を実現するため、2023年度を初年度とする3カ年の中期経営計画「2025年中期経営計画(25中期)」を策定しましたが、その初年度となった2023年度は、売上高、各段階利益においていずれも計画を達成しました。
昨年、この25中期を発表したとき、私は冒頭で「技術のフジクラ」ということを強調しました。140年近くの歴史を積み重ねてきた当社グループのDNAが、まさに「技術のフジクラ」なのです。
しかし、今でこそ「技術のフジクラ」という表現はずいぶん知られるようになりましたが、入社したころの私は、なぜそう言われるようになったのか、よく知りませんでした。そこで先輩社員に聞くと、次のように教えられました。個人企業として創業した当社は、競合に比べれば小さなプライベートカンパニーで、人的なリソースも財務的なリソースもはるかに貧弱だった。そういう当社が競合に勝つには、
技術で勝つしかない。だから徹底的に技術を磨いてきた結果が「技術のフジクラ」として実を結んだのだ、ということでした。
もうひとつ、私は25中期の説明会で「進取の精神」についても強調しました。フジクラグループはその時代の世の中やお客様が求めるものを、生み出し事業にすることで長い間存続してきました。常に新陳代謝を重ね、事業ポートフォリオマネジメントをしていくために、新規事業を創出することは不可欠であり、そのためにフジクラのDNA「進取の精神」は重要なものです。
この2つは当社グループの歴史の中でも、まったく変わっていません。
製品は、お客様の価値創造と社会貢献につながることが大前提
「技術のフジクラ」としての強みは、大きく分けて2つあります。1つ目は、新製品の開発力です。当社グループには、業界初や業界トップレベルというような世界的に見ても強みを持つ製品がいくつかあります。それは、フジクラが、差別化ということを強く意識して新製品の創出に挑んできた成果です。
しかしながら、フジクラのユニークな技術を入れ込むだけでは、往々にして自己満足の差別化に陥ってしまうと考えています。フジクラの技術が入っているからいい製品のはず、お客様も喜ぶはず、売れるはず、儲かるはず、と思いがちですが、お客様の価値につながる差別化でなければ意味がありません。フジクラの製品は、最終的にはお客様の価値創造と社会貢献につながる差別化が重要です。
2つ目の強みは、製造技術力、すなわちものづくり力の強さです。当社グループで競争力のある製品の多くは、その製品をつくる製造装置自体も自社開発しています。さらに高品質の部品などをつくるのに不可欠な金型も自社で設計・製造しています。それに必要な超微細加工技術、精緻な分析技術、さらに流体力学などを取り入れた高度なシミュレーション技術など、多くの要素技術、基盤技術も有しています。高度な品質検査を行うためにAIもいち早く導入してきました。そして、そうした多様な技術を組み合わせて、非常に優位性のある製造技術力を築き上げているのです。
私は常に、新製品と新製造技術をセットで開発するように言っています。最新の製品も、分解し、分析すれば、他社にも類似したものをつくれるかもしれません。しかしながら、その製造技術まで知ることは難しく、いわばブラックボックスとなっています。優れた製品を安定的に効率よくつくるためには優れた製造技術が不可欠であり、それが「技術のフジクラ」の基盤を支えているのです。
地球規模の課題であるカーボンニュートラルがもたらすビジネスチャンス
25中期以降を見据えた取り組みとして、カーボンニュートラルを好機ととらえた新たなビジネス創出への種まきも進めていきます。カーボンニュートラルは地球規模の課題であり、サステナブルな社会の実現という意味で極めて重要なテーマです。私たちが排出するCO₂を削減するのは当然のことですが、当社グループの事業や製品で、私たち以外の企業や団体が排出するCO₂の削減に貢献することもできるのではないかと考えています。
現在、このような新規事業の取り組みを「Beyond2025」として掲げ、超電導線材、ファイバレーザ、EVという3テーマで、新たな事業の創出に挑戦しています。特に超電導線材の分野では、当社はレアアース系高温超電導線材で世界でもトップレベルの性能と量産技術を持っています。超電導線材は、環境問題とエネルギー問題の解決に期待されている核融合発電技術の重要部材であり、当社はこの線材を軸に核融合発電の実現に貢献していく考えです。