知的財産の基本的な考え方
フジクラは、長い歴史の中で、進取の精神をもってその時代ごとに世に必要とされる多くのイノベーティブな製品を送り出し、"技術のフジクラ"との自負の下、研究開発の活動を強く推し進めてきました。
一方で近年、事業を成功させるためには、単に新しい技術を提供するということだけでは足らず、社会が真に必要とする課題を見つけること、およびその課題解決のためのトータルソリューションをイノベーティブなものとして提供することが求められています。そのような事業活動を進めるために知的財産が有効に活用される機会も増えており、今後もその利用が大いに期待されています。
そのような背景をふまえ、フジクラの知的財産部では、"知財戦略と事業・開発戦略とを融合/整合させて、知財の力で事業の競争優位性を築く"ことをミッションとして活動を進めています。将来の事業展開の際に競争優位性を確保する手段としての知的財産は引き続き重要な役割を果たすものと確信しています。開発および事業化の活動に寄り添いながら事業推進の戦略の中に知的財産戦略が自然な形で有効に組み込まれる仕組みづくりを行い、また、将来必要となるアクションを想定してそれを確実に実行できるような準備を進め、その結果、事業の成功に大きく貢献できることを目指し日々の活動を進めています。
このような考えからフジクラでは、知的財産活動として以下の4つの視点を重視し、活動の基本方針としています。
知的財産に関する活動の基本方針
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01最適な形態での知財保護/
強い権利の獲得開発した技術について、その性質や機能をふまえて、権利化あるいは秘匿化等の適正な保護形態を決定します。特に開発のアーリーステージから将来の事業を支えるキーになる差別化技術を意識し、将来の活用場面を考えながら保護形態を決定して、必要とされる強い権利の確保にも努めます。自社の事業を有利に進めるためには、適切に保護された知的財産或いはその権利が戦略上必須であり、その準備となる議論は、開発の初期段階から行われるべきと考えて活動を進めています。 -
02適正なリスク評価の下での
知財権の戦略的活用取得した知的財産の権利は、他者の権利のリスク評価も十分行いながら、事業活動の方針に沿ってその活用を考えます。先進国、新興国を問わず、技術模倣品に対しては適正な法的対応を行い、また、オープンイノベーションを含めて、フジクラの事業の発展に向けたライセンスあるいは協創としての共同開発等の契約も積極的に進めます。他者の権利のリスク評価は、事業活動を滞りなく進めるために重要であり、社外の専門家も巻き込みながら、可能な限り早期にかつ厳格に行います。 -
03戦略の有効性を担保する
情報分析知的財産の保護、権利化あるいはその活用を戦略的に進めるには、知的財産が有効に利用できることの確証を得るための事前の調査分析が大切になります。事業を成功に導くため、従来からのクリアランスや特許の有効性判断の調査に加えて、当該事業の市場動向や競争環境、あるいは各プレーヤの特許ポジション等の正確な情報を入手し、その分析を行うことが必要です。IPランドスケープ活動を推進し、多面的に情報を収集してその分析結果を共有し、利益を生む戦略の策定につなげます。 -
04知財戦略の啓発及び
ガバナンス体制の確立戦略検討の議論には、様々な立場の人が関わります。それぞれの人が戦略立案の基礎となる知見を十分に持つことで、多様な戦略のアイデアも生まれ、またリスク低減にもつながることが期待されます。そこで、社内啓発活動では、法制度に関する教育に加えて知財戦略の教育にも力を入れ、知的財産が有効に利用される手法が議論される風土ができることを目指します。また、知財戦略については、フジクラグループとして一貫した考え方が必要です。知財リスクの総合的なマネジメントのため、国内外のグループ会社の知財ガバナンス体制を整えます。
知的財産戦略と事業・開発戦略の融合
事業・開発戦略と知財戦略とを融合させるには、情報が適時に共有されるような風通しの良い組織の仕組みを持つことが極めて重要であると考えています。
フジクラでは、主要事業ごとに、事業部門および知的財産部門のメンバーからなる合同の会議を定期的に開催し、当該事業に関係する知的財産の取り扱いについて議論を行っています。その会議の場では、事業戦略および知財戦略に関する情報を共有し、事業戦略を実行する上での知的財産活動の課題を明確にし、さらに、事業戦略に沿った知財戦略活動の計画やその進捗確認を行っています。
また、将来の事業化を目指す研究開発の各部門についても同様に、知的財産部門のメンバーとの合同の会議を定期的に開催しています。開発のアーリーステージから研究開発部門と知的財産部門とが一体となって知財戦略を議論することで、将来の事業に大きく貢献できる基礎的な知的財産の確認やその権利化を行います。また、他社権利に関するリスク回避対策も早期に実施することができ、実効性が期待できる活動になっています。
知財戦略活動の推進
知的財産を活用して事業の競争優位性を確保するには、当初立案した知財戦略に沿った活動を強く推し進めつつも、事業化に向けた開発戦略が一旦変更された場合には、知的財産戦略についても機動的に修正または変更することが必要になります。フジクラでは、その可能性を考慮しつつ知財戦略の実効性を確保するために、独自のマネジメント手法による知財戦略活動を行っています。
フジクラの研究開発部門では、組織として効率的にイノベーションを興すことを目指して新たにISO56002:イノベーション・マネジメントシステム(以下「IMS」) の管理手法を導入しており、知財戦略活動もそれに沿って行われるべきと考えています。そこでフジクラでは、上記のIMSの規格をふまえて制定されている、ISO56005:知的財産管理のためのツール及び方法の規格の考え方も取り入れながら、システム的に知的財産戦略活動を運用しています。具体的には、研究開発の各ステージで行われるべき知財活動を定めており、IMSに連動させることで、研究開発の活動と同調した知財戦略活動を行います。この手法により機動的な知財戦略活動が可能となり、将来事業化された際に事業競争優位性を発揮する知的財産あるいはその権利のポートフォリオを事業化前に確実に創出できるようにしています。
特許保有件数・出願件数
国内特許保有件数

海外特許保有件数

国内特許出願件数及びグローバル出願率
