高速光デバイスの超小型化・低電力化を実現する「切り札」。

いまや社会の新しいインフラとなりつつある光ファイバネットワーク。さらに進化させるためには、ネットワークの伝送容量をいっそう向上させることが重要であり、これは光通信技術において永遠の課題です。

しかしながら、伝送容量の拡大を図ろうとすると、光通信システムは非常に高度なものとなり、それを機能させるためのデバイスの構造も複雑になります。従来の技術では、デバイスに搭載するチップを大型化せざるを得ず、機器そのものも巨大になってしまう懸念がありました。こうしたデバイスに関する問題を解決する新たな切り札が、「シリコンフォトニクス」によるアプローチです。シリコンフォトニクスとは、半導体として広く使われるシリコンに微細な光導波路構造を作り込み、さまざまな機能を持つデバイスを1つの小型チップに集積する技術です。これにより、高速光デバイスの超小型化・低消費電力化が実現され、光通信システムに大きな革新がもたらされます。

長年、さまざまな光通信用デバイスの開発製造で実績を重ねてきたフジクラは、このシリコンフォトニクスの研究開発についても力を入れており、業界をリードしています。

海外の研究所とも共同研究。グローバルな連携で挑む。

このテーマに取り組む研究者たちは、日々、シリコンフォトニクスを用いたデバイスの最適な構造を追い求めて知恵を絞っています。新しい技術領域であるため、個人の斬新なアイデアが、デバイスに思いも寄らない特性をもたらすこともあり、それはこの研究開発の大きな醍醐味のひとつです。

また、実用化に向けてはシリコン上に微細な光導波路を高精度に作製することが要求されるため、製造技術に関しては社外の研究機関と連携しながら開発を進めています。具体的には、早くからシリコンフォトニクスに特化した開発を手がけている「シンガポール国立マイクロエレクトロニクス研究所」と共同研究を展開。研究者たちがシンガポールに飛ぶ機会も頻繁にあります。

まさにグローバルなスケールで、フジクラのシリコンフォトニクスの研究開発は繰り広げられているのです。

理学博士(物性物理学)。
2006年、シリコンフォトニクスの
研究開発ベンチャー企業からフジクラへ移籍。
現在この分野の第一人者として
業界でも認められる存在。

シリコンフォトニクスの研究開発は、物理的な現象としてまだ解明されていない原理を追求していく「発見」と、それを実用的なデバイスに結びつけていく「発明」が、とても密接に関わっています。つまり、自ら「発見」したことを、世の中に役立つ「発明」にまで一気につなげていくことができる。それがこのテーマに取り組む大きな魅力です。このデバイスはシリコンを使っているため、集積化が簡単で、光通信用モジュールをワンチップで提供することが可能になります。我々は、光ファイバ通信に使用されるトランシーバ(送受信機)のモジュールなどにシリコンフォトニクスを応用し、そのサイズを10分の1にまでダウンすることを狙っています。

また、シリコンフォトニクスは通信用デバイス以外にもさまざまな用途が考えられ、アイデア次第でいろんな世界が拓けます。今後の社会でさらに重要となるエコロジーやライフサイエンスの領域などでも、この技術を活かしていければと考えています。フジクラは一部上場の大手ですが、ボトムアップの文化があり、意思決定はきわめて早い。研究者にとってはチャレンジしがいのある環境だと思いますね。