独自に開発したIBAD法は、いまや世界のスタンダードに。

特定の物質において、低温で電気抵抗がゼロになる現象が「超電導」。この技術を用いた電線を作れば、電気エネルギーをロスなく送ることができ、従来の電力機器の常識を覆すような画期的な製品が実現できます。この超電導技術において、フジクラは現在、世界のトップレベルに位置しています。

超電導開発をスタートしたのは1987年。私たちが注目したのは、それまで研究されていたビスマスという元素を用いた化合物ではなく、新たに発見されたイットリウムという元素を用いた化合物で超電導現象を起こすアプローチ。このイットリウム系の超電導体は、ビスマス系に比べて磁場が強い状態でも電流密度が大きいという特性があり、第2世代の高温超電導線材としてモーターや医療用MRIなど産業機器、医療応用への製品応用の可能性が一気に広がったのです。

しかしながら当時、イットリウム系の超電導線材は作製がきわめて困難でした。優れた特性を得るためには、超電導線材の結晶構造がそろっていることが重要であり、その実現に大きな壁があったのです。そこでフジクラは、イオンビームを照射することで結晶方位を制御するIBAD法(イオンビームアシスト蒸着法)を独自に開発。この技術は日米欧で基本特許を取得し、いまや世界のスタンダードになっています。

開発段階からいよいよ商用段階へ

独自のIBAD法を開発して以降、フジクラはイットリウム系超電導線材の開発競争において、常に世界でトップを走り続けています。線材の長尺化においては、2001年に世界で初めて10mの超電導線材を実現。その後も、2004年に100m、2005年に200m、2008年に500m、そして2011年には816mと、世界記録を次々と塗り替えてきました。性能においても、1cm幅の線材で1000アンペアを超える臨界電流を実現しており、さらに高品質な線材量産技術でも世界トップレベルを走っています。

一方、巻線技術や冷凍技術のノウハウを得るために超電導コイルの開発も行っており、世界初のソレノイドマグネット(液体窒素冷却型)や世界最大級のイットリウム系5 T(テスラ)高温超電導マグネットの開発にも成功しています。 また、送電損失が極めて少ない高温超電導ケーブルの開発も手掛け、66 kV、5 kAという大電流の超電導電力ケーブルの開発にも成功しています。 最近では、希少な天然資源である液体ヘリウムの価格高騰や調達面での懸念が生じており、液体ヘリウムを用いずに超電導を実現できるイットリウム系高温超電導応用製品への期待も益々増加しています。

今後も、イットリウム系高温超電導線材のビジネス拡大、世界シェア50%以上獲得に向けた超電導線材の量産体制拡大、今後進展が期待される産業機器、医療応用等を目指した実用的な高温超電導コイル開発、および関連ビジネスの拡大を図り、低炭素社会に貢献して行きたいと考えています。

1995年新卒入社。
情報通信関連の研究開発を手がけた後、
超電導の研究開発に取り組むことに。
フジクラは若いうちから大きなチャンスを
与えてくれる会社だと語る。

フジクラの超電導技術は、まさにこれからが本番。数十年前には未知の技術であった光ファイバが、いまでは当たり前のインフラとなったように、この超電導もきっと、近い未来に社会の常識となる。新技術の草創期にこうして参加することができるのは、まさに技術者冥利に尽きる思いです。

現在は、超電導線材の製品への応用を見据えて、主に超電導コイルの要素技術開発に取り組んでいます。成果を学会などで発表する機会も多く、先日アメリカで行われた国際学会では、私の上司が基調講演のスピーカーを務めました。世界の研究者たちからもフジクラは一目置かれる存在であり、こうして時代の最先端に関わっていると実感できるのは大きなやりがいを覚えます。超電導線材が実用化されれば、モーターや変圧器なども大幅に小型化できますし、また超電導の特性を活かして電力エネルギーを貯蔵する装置も可能になり、エコロジーに貢献する新たな社会システムの創造につながっていきます。まだまだ乗り越えるべきハードルも多いのですが、さらに研究開発を重ねて、ぜひその力になっていきたいですね。