株式会社フジクラ

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R&D

研究開発方針

研究開発方針

研究開発ビジョン

研究開発により生み出されるフジクラならではのコア技術を基軸に、継続的な新事業の創生と既存事業の強化を行い、
豊かな人間生活を支える、持続可能な社会の基盤構築に貢献する

CTOメッセージ

25中期の方向性に沿った技術マネジメントに注力

2022年4月に、フジクラグループでは初となるCTO(最高技術責任者)という職位が設置され、私が就任することとなりました。CTOは、当社技術の優位性や課題を熟知した上で、技術戦略の策定・推進に責任を持つ立場だと認識しています。私は、フジクラグループのCTOとして技術の面からフジクラグループの経営を支えるために、「グループ全体の技術マネジメント」「事業部門・生産技術部門と連携した製品開発力の強化」「新技術・新規事業創出のための仕組みづくり」「研究開発のガバナンスと組織風土の改革」を4つの重要事項と捉え、注力しています。
就任後の1年余りは、2025年度を最終年度とする中期経営計画を立案する期間でもあり、前述した4つの重要事項を、25中期の方向性と一致させることに努めました。CEO、CFO、各事業部門と深く議論する中で、当社が誇る“つなぐ”テクノロジーの優位性と課題の整理も進みました。この議論の成果を活かし、また各事業部門の将来構想や、社会や市場の動向を踏まえて、フジクラグループが保有する【基盤技術】と【コア技術群】、取り組むべき【技術領域・製品群】を体系化した「テクノロジー・プラットフォーム」を構築し、2023年5月に発表しました。

テクノロジー・プラットフォームを活用し、新製品・新事業の創出力を高めていく

 このテクノロジー・プラットフォームは、各事業部門の開発部と、新事業創生・研究開発部門および生産技術部門の連携によって、新製品・新事業を創出する力を継続的にレベルアップするための枠組みでもあります。
 本プラットフォームの第一層は、私たちが暮らす社会の課題や市場の動向を踏まえて、フジクラグループが取り組むべき【技術領域】と展開する【製品群】を定めました。技術領域は、創業以来取り組んでいる「情報伝送」と「エネルギー伝送」に加えて、光と電気をそれぞれ、または相互につなぐ「接続」、各種電子機器の小型化を可能とし、また設計自由度を高める「高密度配線」の4領域を含みます。
 第二層は、私たちが研究開発活動を通じて磨きをかけていく【コア技術群】です。「設計技術」「加工・組立技術」「製造技術」の3つを掲げました。「設計技術」とは、光ファイバ屈折率分布の設計や、ミリ波のICやアンテナの回路設計技術などを指します。「加工・組立技術」とは、光ファイバのガラス繊維を細径化する技術や、多層フレキシブルプリント配線板(FPC)に回路を形成する技術などを要素技術として製品を具体化する技術です。そして「製造技術」は、高品質とコスト競争力を両立させて製品を作り上げていく技術です。
 第三層は、我々の培ってきた【基盤技術】です。下図に示した7つの基盤技術はフジクラグループに共通する基本的な技術であり、これらを効率的かつ有効に活用することでコア技術群を生み出し、進化させ、第一層に定めた4つの技術領域で、新たな製品・サービスを市場に投入していきます。

25中期の3カ年で注力するR&Dのテーマと進捗状況

 25中期期間の3カ年では、社会の要求とフジクラグループの事業領域との親和性の高さを考慮して、「次世代光通信」「次世代エネルギー」「ミリ波応用」の3つをR&Dの重点テーマに選定しました。

~次世代光通信~

 「次世代光通信」は、世界で流通しているデータ量の増大に伴う、通信インフラの高速・大容量化、低遅延への要求の高まりと、消費電力低減へのニーズに応える技術分野です。超高密度光配線や光電融合が、主なテーマとなります。現在、1本の光ファイバガラスの中に複数のコアを配置した「マルチコアファイバ」の開発を加速しています。長年にわたる光関連技術の蓄積を活かし、トップリーダーとしてのポジションを、更に盤石なものにしていきます。

~次世代エネルギー~

 「次世代エネルギー」の分野では、世界トップレベルの特性を有する高温超電導の技術を、核融合発電や航空機の電動化などの分野に応用することを計画しています。核融合発電は二酸化炭素を放出しない発電技術として注目されています。中でも、高温超電導線材を用いた核融合発電技術の開発が近年活発に行われています。実用化にはまだ時間がかかるとみられていますが、その研究開発段階から膨大な量の高温超電導線材が必要です。高温超電導は、地球規模の環境問題に対し、フジクラグループが貢献できる重要な技術と捉え、線材の高性能化や生産性を飛躍的に高める製造技術の確立に取り組んでいきます。それにより、核融合発電の実用化を加速します。このほか、EVの超高速充電を可能にする液冷式のケーブルやコネクタなどを製品化し、環境およびエネルギー問題の解決に貢献していきます。

~ミリ波応用~

 「ミリ波応用」では、光通信網の無線基地局向けに、ミリ波帯の周波数帯を使用する通信デバイスの開発・製品化を進めています。ミリ波を使用すると送信側・受信側両方のアンテナを小型化でき、また従来よりも高速・大容量の通信が可能になります。ミリ波は直進性が高く、このためビームフォーミングと呼ばれる特定の方向に信号を制御する高度な設計が必要となりますが、この特徴は、全方向に信号を放射する従来のマイクロ波を使用した通信と比較して、必要な方向にピンポイントで信号を送ることができる高効率な省エネルギーの通信ともいえます。
 既にビームフォーミングを含むミリ波通信デバイスなどに必要な基礎技術開発は完了しており、現在は通信キャリアのお客様へサンプル製品を出荷し、また、次世代交通インフラのお客様との共同での検証実験を行うなど、実用化に向けた取り組みを複数実施しています。
 近年研究開発に力を入れてきたCMOSイメージセンサなどの医療用製品は、昨年までに新規事業として一定のめどが得られたことから、2023年度は事業部門への移管を行い、今後ビジネスとして成長させていく考えです。

コア技術群を全社で共有し、相互に利用できる仕組みの構築に着手

 フジクラグループの事業領域は広く、多様な製品群の一つひとつにコア技術が存在します。しかしこれらの技術は、特定の事業部門でしか活かせていないケースが多いことが課題でした。そこで、グループ内に点在するコア技術群を全社横断で共有し、各事業部門で相互に活用できる仕組みの構築に着手しました。
 社外のスタートアップや研究機関とのコラボレーションも、新技術・新規事業の創出には欠かせない枠組みだと考えています。その一例は、2019年に先端基礎研究を目的に設立した研究所「アドバンスト・リサーチ・コア」での取り組みです。アドバンスト・リサーチ・コアでは、米国の大学をはじめ、世界のトップアカデミアと共同で、将来の社会的な価値につながる“種”を育てています。
 また新技術・新規事業の創出を担う技術系人材の育成と、事業化に向けたガバナンスを重視しています。そのための仕組みとして、一人ひとりの自由な発想を尊重しつつも、経営戦略との整合性を図り、研究開発の不確実性を低減する「イノベーション・マネジメントシステム」の導入を進めています。
 当社内では、「技術のフジクラ」という言葉が長く語り継がれてきました。私たちが培ってきた技術力の源泉は、“勝ち残るための危機感”だと思っています。なぜなら、フジクラのライバル企業はいずれも強大であり、的を絞った技術開発によって差別化できる製品を作ることでしか、勝ち残る術はなかったからです。社会の新たなニーズを見極めて新製品開発に挑戦し、不断の新陳代謝を継続してきたことが、今日のフジクラグループを形作っているといえます。岡田CEOは2022年に「技術のフジクラ」ブランドの再構築を掲げました。私はCTOの立場から、この重大なミッションを果たしていく所存です。

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